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気づかれにくい文法的類義表現の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00637
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02070:日本語学関連
研究機関四天王寺大学

研究代表者

高橋 美奈子  四天王寺大学, 人文社会学部, 准教授 (20319768)

研究分担者 前田 直子  学習院大学, 文学部, 教授 (30251490)
高梨 信乃  関西大学, 外国語学部, 教授 (80263185)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
研究課題ステータス 交付 (2020年度)
配分額 *注記
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
キーワード文法的類義表現 / 気づかれにくい / 文法カテゴリ / 命題 / モダリティ / 複文 / 非母語話者 / 日本語文法
研究開始時の研究の概要

文法現象を担う文法形式に存在する「文法的類義表現」については、同じ文法カテゴリーに属する形式同士の研究はかなり進んでいる。一方で、異なる文法カテゴリーに属する形式や、品詞を異とする形式が、使用条件によっては類義となる現象については、今まで看過されがちであった。このような現象を、本研究は「気づかれにくい文法的類義表現」と捉えて、文法研究文献の精査、文法現象の観察、非母語話者のデータの分析を通じて、その具体形式を抽出し、体系的に整理し、重要形式については十全に記述する計画である。それにより、文法的類義表現の研究、日本語文法の研究に資することを目指し、さらには日本語教育分野への応用をも視野に入れる。

研究実績の概要

本研究の目的は以下のとおりである。文法現象を担う文法形式における類義表現(文法的類義表現)のうち、まだそれほど知られていない表現、あるいは類義であることが気づかれていない表現を抽出し、整理すること、また重要な類義表現に関しては精緻な記述を行い、日本語文法研究に新たな知見を加えることを目指す。また、その成果を日本語教育に応用することも視野に入れる。
2020年度については、同年初頭からの新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、当初計画を見直し次のことを計画していた。①これまでに抽出した文法的類義表現の重要なものについて記述を行う ②既存コーパスを活用して非母語話者の産出物を分析し、そこから「気づかれにくい文法的類義表現」を抽出する ③新たな非母語話者の産出データを得る(ただし来日留学生の減少により難しいことも予想される)④研究成果の一部を発表する(2020年度開催予定であった国際学会が延期されたため、それに代わる発表の場を模索し、また論文の形での発表も視野に入れる)。
実際の研究実績としては次のことが挙げられる。③の実現には至らなかったが、①②を実践し想定以上の成果を得た。2020年5月から2021年3月にかけて計10回の研究会を開催し、メンバー各人の研究成果を報告し共有するとともに、研究上の課題についても話し合った。具体的には次の「気づかれにくい文法的類義表現」を取り上げ、記述すべき内容を検討した。限定のとりたて表現「だけ」と“「しか」+否定”、開始の時点の表現形式、事態の時および掛かる時間を表す形式、自動詞と「他動詞+受身」、「てもいい」と可能表現、祈願を表す「ますように」と「てほしい」、前件事態の直後に後件事態が生起することを表す接続表現、継起・添加・因果関係などを表す「~たうえで」とその類義表現、授受補助動詞と可能形。また、④については論文の形で成果発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年度については次のことを計画していた。①これまでに抽出した文法的類義表現の重要なものについて記述を行うこと ②既存コーパスを活用して非母語話者の産出物を分析し、そこから「気づかれにくい文法的類義表現」を抽出すること ③新たな非母語話者の産出データを得ること ④研究成果の一部を発表すること。
③についてはコロナ禍の影響もあり実現できなかったが、②の既存コーパスの活用、また研究従事者の指導経験を通して、多様な「気づかれにくい文法的類義表現」を抽出することができた。そうして各人が抽出した文法的類義表現とそれらについての記述を、研究会の場で共有し検討した。研究会は2020年5月10日、6月14日、7月24日、9月2日、10月10日、11月22日、12月27日、2021年1月30日、2月8日、3月28日の計10回開催したが、これは目標の「年6回以上」を上回った。検討された「気づかれにくい文法的類義表現」は次の通りである。〔命題領域〕限定のとりたて表現「だけ」と“「しか」+否定”、開始の時点の表現形式、事態の時を表す格助詞、掛かる時間を表す格助詞、自動詞と「他動詞+受身」、「てもいい」と可能表現 〔モダリティ領域〕「てほしい」の用法、祈願を表す「ますように」と「てほしい」 〔複文領域および授受表現〕前件事態の直後に後件事態が生起することを表す接続表現、「~たうえで」(継起、添加、因果関係などを表す形式)とその類義表現、授受補助動詞と可能形。このように多くの表現を取り上げることができたのは、前年度に「気づかれにくい文法的類義表現」の認定について見直し、視野を広げたことが反映している。②および①については想定以上の成果が得られたと言える。④の成果発表については、コロナ禍による国際学会の延期等の事情もあり、学会での発表を実現することができなかったが、成果の一部を論文として発表した。

今後の研究の推進方策

引き続き、①これまでに抽出した類義表現についてより精緻な記述を行うこと ②非母語話者の産出データを分析して「気づかれにくい文法的類義表現」の抽出を行うこと に取り組む。また、前年度に実現できなかった③新たな非母語話者の産出データを得ること に取り組む計画である。これまで②のために活用してきた、既存のコーパスに収められた非母語話者のデータが有用であることは言を俟たないが、これらはいずれも「日本語を使うタスク」として設定され課されたタスクに応えた産出物であるという特徴を持つ。私たちはこれらと異なるタイプの産出物を収集して、コーパスとして活用することを考えている。「日本語を使うタスク」の産物ではない、非母語話者(日本語学習者)が実際に学修や生活の中で作成するようなもの(例:日本の高等教育機関で学修している非母語話者のアカデミックライティングの産物、日本の高等教育機関への入学を目指す非母語話者が作成する志望理由書や問い合わせのメールなど)のデータを対象に想定している。これらは、「日本語を使うタスク」がいわばフィクション的な性格を持つのに対し、非母語話者にとってより必要性・必然性の高い産出であるという特徴を持つ。このようなデータを得ようと考える理由は、(1) 非母語話者(日本語学習者)にとって必要性が高くより切実な内容のものであるため、彼らが本当に言いたいことが表された産出を集めることができるのではとの期待がある (2)そのような必要性の高い産出物における日本語を分析することで、個別の日本語学習者へのフィードバックにとどまらず、同様の課題を抱える学習者にも役立つ研究に直結するデータが得られるのではないかと考えている というものである。将来的に日本語教育の教材作成などにも役立てることができれば、この研究の目的の一部である「研究成果を日本語教育に応用することも視野に入れる」にもつながる。

報告書

(2件)
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書

研究成果

(5件)

すべて 2021 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 授受動詞の使用実態と教え方2021

    • 著者名/発表者名
      前田直子
    • 雑誌名

      新世紀人文学論究

      巻: 5号 ページ: 23-36

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「てほしい」はどのように用いられているか2020

    • 著者名/発表者名
      高梨信乃
    • 雑誌名

      関西大学外国語学部紀要

      巻: 23号 ページ: 43-58

    • NAID

      120006897509

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 条件表現4形式使い分けルールの簡略化-日本語教育のための日本語研究をめざして2020

    • 著者名/発表者名
      前田直子
    • 雑誌名

      日本語文法

      巻: 20-2 ページ: 40-56

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 〈宣言・アナウンス〉の意志表現-書き言葉における「しよう」を中心に2019

    • 著者名/発表者名
      高梨信乃
    • 雑誌名

      『日本語/日本語教育研究』日本語/日本語教育研究会

      巻: 10号 ページ: 101-116

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 多文化社会における表現リテラシーを考える-学習者の日本語をどこまで許容するか-2019

    • 著者名/発表者名
      高梨信乃、前田直子、高橋美奈子
    • 学会等名
      CAJLE2019年年次大会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2021-12-27  

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