研究課題/領域番号 |
19K00647
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
浅川 哲也 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (50433173)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | です / 人情本 / ですの語源 / 形容詞〈い足す言葉〉 / ら抜き言葉 / れれる言葉 / ら入れ言葉 / れ足す言葉 / 春色連理の梅 / 国会会議録データベース / 日本語の変化 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語母語話者の誤用例の「ら抜き言葉」は多くの言語研究者たちによって合理的な言語変化であると擁護されてきた。しかし、近年のインターネット上の言説や刊行物の書き言葉の中に「ら抜き言葉」の進行した形態の〈れれる言葉〉や〈ら入れ言葉〉など、現代日本語の先端的な動向を示す例が観察されるようになった。また、「ら抜き言葉」には可能の意味以外に受身・尊敬の用法が発生している。過去の言語研究者たちが「ら抜き言葉」を可能表現専用であると擁護した根拠は消滅したのである。 本研究は、現代日本語の先端的な動向を捉え、現代日本語にいま起きている母語話者の誤用を体系化し、日本語の言語史の中に位置づけるものである。
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研究実績の概要 |
現代日本語の先端的な変化の動向を分析するために、江戸時代末期の江戸語を比較対象として、丁寧語の助動詞「です」を採りあげ、独自に開発した江戸時代末期人情本の本文データベースを用いて調査と分析を行った。 (a)中世室町期の「で候」を語源とする「です」は、活用語の終止連体形に直接接続する指定辞としての性格を有し、(b)江戸中期では、武家のほか、幇間医者、漢語をむやみに多用する似非教養人など、人物造形において重々しさ、古めかしさなどを強調しようとするときに役割語のように使用されたものと考えられる。(c)江戸時代末期に遊里語などの女性語から発生して一般に使用が拡大した、現代語に繋がる「です」は体言相当語に接続することが原則であり、活用語に直接接続する例は極めて稀であった。(a)「で候」の「です」と、(c)遊里語の「です」は語源を異にしていても語形が一致したため一部で使用の混淆があったものと思われる。しかし、(d)明治期になると、地方出身の官員や、東京で成功した地方出身者を頼って住み込みとなる地方出身の学生(書生)など、多くの地方人が東京に流入し、各方言において保持されていた活用語の終止連体形に直接接続する指定辞の用法が江戸語・東京語の「です」と結びつき、いわゆる「書生ことば」が発生した。東京語に流入した活用語に直接接続する「です」の方言的使用のうち、「するです・なるです」のような動詞承接の「です」は東京語からは次第に排斥されていったが、形容詞に直接接続する「ないです・良いです」と、助動詞承接の「―たです」は「なかったです」など形容詞過去形の語形で、(e)東京語に定着して現在に至ったものと考えられる。発生の時期と語源とを異にする二種の「です」は、現代語の「です」において、用法の一部が合流したことを明らかにした。
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