• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

言語変化を加速した言語接触の歴史社会言語学的研究:印刷揺籃期の翻訳英語を対象に

研究課題

研究課題/領域番号 19K00696
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02080:英語学関連
研究機関関西学院大学

研究代表者

内田 充美  関西学院大学, 社会学部, 教授 (70347475)

研究分担者 家入 葉子  京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
キーワード歴史社会言語学 / 言語接触 / 翻訳 / 言語変化 / 多言語 / 属格交替 / 語源的綴り字 / 借用語 / 綴り字
研究開始時の研究の概要

本研究が対象とする時期は印刷技術の揺籃期にあたる中英語後期,フランス語に代わって英語の使用が拡大してきた時代である.主たる分析対象はWilliam Caxtonと大陸の同業者たちである.Caxtonは,さまざまな言語に明るく,みずから英語に翻訳した作品を印刷した.印刷技術の拡大は綴り字の標準化だけでなく,統語面,構文面の変化にも影響を与えたと考えられる.翻訳を言語接触の場の一つと考え,翻訳行為と言語変化との関連を今日的な歴史社会言語学の視点から捉え直す.

研究実績の概要

本研究は、最初期の印刷本テキストのうち、言語接触による影響があると予測できる文献で、原典言語版と翻訳の対照的検討と分析が可能な資料を探し出すことから着手した。それら複数のテキストそのものと、相互関係についての先行研究を探索し情報の整理を行った。広義・狭義の時代・社会背景を踏まえたうえで、言語変化の大きな流れを意識しつつ、調査対象とした言語資料にみられる言語接触の影響を明らかにする作業を行ってきた。2022年度からは,William Caxtonが、フランス語から英語に翻訳したとされるテキスト Paris and Vienne について,すこし時代の下がる印刷者 Gerard Leeu (Antwerp) による別の英語版と,先行研究によって翻訳の原典,あるいは非常に近いとされてきたフランス語のテキスト (フランス国立図書館所蔵の写本とLyonsの印刷者による複数の刊本)に焦点を絞り,Caxtonの綴り字、文法構造が、原典のフランス語版に影響を受けているのか否かを検討してきた。2023年度には、このうち文法構造、特に所有関係を表す表現に焦点を絞り、2つの英語版と複数のフランス語版の対照分析の結果を英文論文としてまとめ,Kwansei Gakuin University School of Sociology Journal に共著論文として公刊した。考察対象とした所有表現のばらつき(属格交替)については、CaxtonとLeeuの英語の間に特筆すべき違いは見られなかった。いっぽう、英語版とフランス語版との対照分析からは、Caxton版、Leeu版とも、ほかの(フランス語の影響が想定されない)資料群と比較した場合、よりフランス語と共通の構造が選択されている傾向を示した。さらに、同一テキスト内においても、フランス語起源の語と共起する場合にその傾向が強くなっていることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2019年度には、予定通り海外での調査活動から課題を開始したが、同年度後半に研究代表者の学内業務負担が尋常でないレベルのものとなったため、当初予定したような課題の進行が不可能となった。続く2020ー2022年度は、疫病の蔓延のため、当初予定していた英国・欧州におけるワークショップやセミナー等への参加、および英国・フランスなどの図書館等での調査が実行できなかった。本課題の推進のために資料を入手した図書館(米国)の稀少書担当部署においても、リモート業務からの復帰にいまだに手間取っている状況にあるとのことで、入手した資料についての問題が一部まだ解決していない(該当の箇所以外の部分については、資料の比較対照分析をほぼ終えている)。以上のような事情のため、依然、研究全体の遅れを取り戻し得たとは言えない状況にある。

今後の研究の推進方策

本研究では、中英語後期に多数の翻訳文献を公刊したWilliam Caxtonの英語を手がかりに、言語接触のあり方、また言語接触がどのように言語の発達に影響を与える可能性があるかを、特に変化の速度感に注目しながら分析してきた。これまでに借用語、語源的綴り字、移動表現、所有表現等の分析を終え、変化の時期に特有の「揺れ」の状態が言語変化を捉える上での鍵になることを明らかにしてきた。また、Caxtonは複数の言語からの翻訳を行っているので、オランダ語からの翻訳、フランス語からの翻訳、ラテン語からの翻訳など、原典の英語の影響も考慮しながら分析を行う必要があることも明らかになってきた。延長年度となる2024年度は、2023年度から取り組んでいる文法上の「揺れ」に焦点をあてながら、動詞、名詞を核とするさまざまな構文(たとえば助動詞の選択や修飾構造等)を中心に、さらなる分析を進める予定である。その際にこれまで同様、原典の言語、特にフランス語版(写本と複数の印刷本)と英語版(複数の印刷本)の対照分析と考察を行う予定であり、収集した用例については文脈を確認しながら手作業で仕分けることになる。これは言語の影響関係を調査する際には必須の作業であり、画像の上での確認も含めると、相当の時間と手間を要するものと予測できる。研究期間内に調査・検討・分析を終えたものについては、速やかに英語論文にまとめ、成果を公表していく予定である。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Genitive Variation in Middle English Paris and Vienne2024

    • 著者名/発表者名
      Mitsumi Uchida and Yoko Iyeiri
    • 雑誌名

      Kwansei Gakuin University School of Sociology Journal

      巻: 142 ページ: 45-58

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Etymological and Non-etymological Spellings of FALCON and SOLDAN (SULTAN) in Caxton’s Paris and Vienne and Some Related French Versions2023

    • 著者名/発表者名
      Mitsumi Uchida and Yoko Iyeiri
    • 雑誌名

      Kwansei Gakuin University School of Sociology Journal

      巻: 140 ページ: 69-83

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Etymological Spellings in William Caxton's Translations2021

    • 著者名/発表者名
      Yoko Iyeiri, Mitsumi Uchida
    • 雑誌名

      English Studies

      巻: 102 号: 8 ページ: 991-1001

    • DOI

      10.1080/0013838x.2021.1952536

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Describing the Process of Lexical Borrowing: Intend and Other Related Words in Late Middle English2020

    • 著者名/発表者名
      Yoko Iyeiri, Mitsumi Uchida
    • 雑誌名

      Kwansei Gakuin University School of Sociology Journal

      巻: 135 ページ: 57-69

    • NAID

      120006898012

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A sociohistorical approach to language contact and change: The case of William Caxton as a translator and multilingual businessman2023

    • 著者名/発表者名
      Mitsumi Uchida
    • 学会等名
      LALS Seminar Series (Linguistics and Applied Language Studies, Victoria University of Wellington)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 語法と理論との接続をめざして2021

    • 著者名/発表者名
      金澤俊吾、柳朋宏、大谷直輝,家入葉子,石崎保明,植田正暢,内田充美,ほか18名
    • 総ページ数
      384
    • 出版者
      ひつじ書房
    • ISBN
      9784823410208
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi