研究課題/領域番号 |
19K00716
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
杉原 由美 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (00397069)
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研究分担者 |
OHRI RICHA 千葉大学, 国際未来教育基幹, 特別語学講師 (80770031)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 文化的差異に関するクリティカルリテラシー / 言語文化教育 / 異文化間教育 / クリティカルペダゴジー / 批判的異文化間コミュニケーション教育学 / 批判的応用言語学 / Critical engagement / 自己再帰性(Self-reflexivity) / critical engagement / クリティカルリテラシー / 文化的差異の知の構築 / アクティブ・ナレッジ / 自己再帰性(reflexivity) / 異文化間コミュニケーション / 文化的差異の知 / パッシブ・ナレッジ / レピティティブ・ナレッジ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日本語教育・英語教育・国際共修の授業において、学びの過程で文化的差異が生産・強化される問題に着目し、文化的差異に関するクリティカルリテラシー(批判的に考察できる能力)を促す新しい概念である「アクティブ・ナレッジ」の理論的・実践的枠組みを確立して、教育現場に示す。 質的研究の方法論にて、「国際共修授業を対象とし文化的差異のアクティブ・ナレッジ概念の明文化とモデル図式化を行う」研究、「アクティブ・ナレッジ概念を言語教育授業への応用可能な概念として検討する」研究を行い、「教育者はどのような理論的な概念のもとに、どのような実践方法で、学習者の文化的差異の知を活性化できるか」を探究する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、文化的差異に関するクリティカルリテラシーを促すための理論的枠組みと教育実践を、言語文化教育現場に向け、論文と学会発表にて発信することに力を入れた。加えて、文化的差異のクリティカルリテラシーを促す授業履修を経た学生たちが社会に発信する活動の展開、新たな教育実践の模索も行った。具体的には以下のとおり。 【論文】国際ジャーナルIntercultural Education 論文投稿(オーリ・杉原、条件付き採録のため現在修正作業中)、書籍『言語文化とコミュニケーション』論文掲載(杉原「第6章 日本語コミュニティの再想像 多言語多文化共生に向けて」)、書籍『共生社会のためのことばの教育』論文掲載(オーリ「第8章 人・ことば・社会のつながりを考える大学英語教育」)。 【学会発表】言語文化教育研究学会第九回年次大会にてフォーラム発表(オーリ・杉原「言語文化教育におけるクリティカルペダゴジーの示唆」)を行った。90分枠での議論からの特筆する点としては、本研究と同様の志向の教育実践を枠づけて議論する領域の必要性が聴衆から挙げられたことである。また、第2回批判的言語教育国際シンポジウムで口頭発表(杉原「クリティカルアプローチの多文化コミュニケーション授業の検討:学生の自問自答に注目して」)も行った。 【学生の社会発信活動支援】異文化間教育ウェブサイトNew Face of Japanプロジェクトにてインタビュー(体験談)をインスタグラムとNoteにて精力的に発信し、中高生向けのワークショップを2回行った(オーリ)。外国籍の人々の住居差別問題を社会に訴えるトイカケプロジェクトの発表が慶應SFC学会学術交流大会にて奨励賞を得た(杉原)。 【新たな教育実践の模索】日本語初中級学習者を主対象として、彼らの日本での経験に焦点化して言語と文化を批判的観点から検討する授業カリキュラムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1)英語論文の国際ジャーナルIntercultural Education投稿に想定以上の時間がかかったことが、遅れの理由である。論文タイトルは「Learner self-reflexivity in a Japanese intercultural communication classroom」であり、Critical Intercultural Communication Pedagogy(批判的異文化コミュニケーション教育学)領域の議論の中に当該研究を位置づけ、学習者の授業への批判的従事(Critical engagement)の中での自己再帰性(self-reflexivity)の詳細なあり様を分析して教育実践への示唆を示した。論文投稿プロセスで、言語と異文化コミュニケーションのクリティカルペダゴジーの領域で行なわれている議論を深く参照したことは、今後の研究推進のための大きな糧を得たといえる。詳しく述べると、これまで学習者の「クリティカルリテラシー」に注目して教育実践を検討する研究を行ってきたが、教育者側の課題に直接的に向き合う「クリティカルペダゴジー」領域における議論を参照することによって、日本の言語文化教育領域の教育的課題により広い視野で取り組む契機を得た。 2)上記の投稿論文は、2023年3月に「条件付き採録」という査読結果が帰ってきた。修正では、上記のクリティカルペダゴジー領域のより深い理解と日本の言語文化教育文脈の特徴の説明が求められ、かなりの時間を費やす必要がある。しかし、貴重な査読コメントを活かして、研究を磨く機会とするつもりだ。 3)上記の投稿論文のジャーナル採録が未定のため、本科研の成果を発信するためのハンドブック作成を延期した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として本科研の成果をまとめて教育現場への示唆を発信する。 【論文】Intercultural Education投稿論文の採録をめざして修正作業を行う。次に、本研究の理論枠組みをより洗練するべく異なる観点から異なる事例を分析考察した研究を、日本の学術雑誌「異文化間教育」に論文投稿する。 【新たな教育実践の展開と報告】日本の高等教育における言語教育と異文化間教育をつなぎ、クリティカルペダゴジーの観点からの示唆を示す。第一に、英語科目とIntercultural Communication関係科目のクリティカルペダゴジーの成果を報告する(オーリ)。第二に、日本語科目とIntercultural Communication関係科目をつなぐ授業実践(日本社会における日本語学習者としての経験に焦点化して言語と文化を批判的観点から検討する「多文化コミュニケーション」講義で、英語を媒介言語として学部学位を取得するコースの英語使用科目)を行って報告する(杉原)。 【学生の社会発信活動を支援】本研究は、文化的差異のクリティカルリテラシーを促す授業を履修した後に学生たちが社会に発信する活動を継続すること、その活動を支援することに意義を見出している。New Face of JapanプロジェクトにてインタビューをインスタグラムとNoteにて発信しながら中高生向けのワークショップを行うこと(オーリ)、外国籍の人々の住居差別問題を社会に訴えるトイカケプロジェクト(杉原)を、継続する。 【ハンドブック作成と発信】 以上の成果をハンドブックにまとめる。つまり、本研究で探究した文化的差異に関するクリティカルリテラシーを促すための理論的枠組みと実践枠組みを、日本の高等教育教育現場(英語教育・日本語教育・異文化間教育)が取り入れやすいよう、コンパクトにまとめたハンドブックにして発信する。
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