研究課題/領域番号 |
19K00753
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
|
研究機関 | 京都外国語大学 (2023) 大阪大学 (2020-2022) 関西学院大学 (2019) |
研究代表者 |
花井 理香 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (60745967)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 言語継承 / 国際結婚 / 多文化家族 / 多文化共生 / 日本語の継承 / 日本人母 / 母語保持 / バイリンガル教育 / 日本語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、少数派言語を母語に持つ親の子どもへの言語の継承に影響を与える要因を明らかにすることを目的としている。2006年から国際結婚により韓国に居住する日本人母の日本語の継承について継時的に調査しており、子どもの成長などの家族変化、政府の政策などの社会変化が、どのように家族内の言語選択・継承に影響を与えるかを、過去の調査に引き続き日本人母とその子どもの面接調査から明らかにしていく。本研究に取り組むことにより、今後の日本社会での言語教育・言語政策・多言語化に貢献でき、また、新たな教育・政策の支援や指針を発案する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、少数派言語を母語に持つ親の子どもへの言語継承という視点から、韓国人男性との婚姻により、韓国に居住している在韓日本人母を対象に、家庭内での言語選択・日本語の継承に影響を与える要因を、継時的調査による家族変化、政策などの社会的支援や社会変化から探ることが目的である。また、言語選択によって、家族内の価値観や子育て(教育)がどのように変化してくるのかということを、在韓日本人母の面接調査と、その子どもたちの面接調査から明らかにしていく。 2023年から、在韓日本人母の経時的面接調査対象者の成人した子どもたちの面接調査を実施している。母親の日本語継承促進要因を参考に、家族での言語使用と日本語使用、日本語習得への思い、将来についてなどを半構造化インタビューにより、現在まで3名に実施した。調査の結果から、母親の言語である日本語の習得については、自然(当たり前)のことであるという3名共通の語りがあり、それには、誕生前後からの夫婦での言語使用に関する方針を話し合うなど、子どもの2言語習得に対する親の積極的な姿勢、家族の理解や支援が影響を及ぼしていると考えられた。また、日本語(外国語)ができることへの周りからの称賛などの言語の威信性、日本語を使用する仕事に就くなど、親の日本語習得への期待からの継続した日本語学習などが影響を及ぼしていると考えられた。3名とも韓国語・日本語を大学での学習や就職にも問題ない程度習得しており、それについては親への感謝を述べていた。この調査結果をまとめ、2024年度後半に発表する予定である。 また、2007年度から経時的に調査している韓国の日本人母コミュニティの活動調査についても継続している。コミュニティについては、『異文化間教育』60号で、コミュニティと異文化間教育ということで論じた。今後も、継続して調査している所存である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年1月から約2年半、新型新型コロナウィルスの影響により海外への渡航が難しく、韓国での面接・フィールド調査が実施不可能であったが、2022年8月から在韓日本人母の経時的面接接調査を開始した。しかしながら、停滞していた期間が長く、研究調査は遅れている。現在は、2020年に予定していた、子どもや在韓日本人母への面接調査を2022年8月に7名の母親へ実施し、子どもへの調査は2023年3月から実施している。その他に、家庭内言語が韓国語の4名の在韓日本人母への面接調査はまだ実施できておらず、2024年度に実施できればと考えている。昨年度と同様であるが、新型コロナウィルスの影響による、家庭内の価値観・子育て(教育)の変化、政府の支援による社会的変化が、日本語の継承、言語継承に影響を与えると考えられるため、その要因も含め、調査していくことが必要であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの影響による渡航制限のため、約2年半、研究が停滞していたが、2022年8月に再開し、2023年には2022年度に実施した在韓日本人母7名の面接調査の結果を豪州日本研究学会研究大会/国際繁生語大会で発表することができた。現在は、2023年3月から在韓日本人母の面接対象者の子どもたちの面接調査を実施している。現在まで3名の成人した子どもたちの調査を実施したが、それぞれ日本と韓国の両アイデンティティを持ち、両言語を使用することは自然なことだと考えている点が新たな研究結果であり、今後、それらを含め、引き続き調査を実施していく予定である。この結果をまとめ、2024年度後半に発表する予定である。 また、2007年度から調査している韓国の日本人母コミュニティの活動調査については、子どもたちの日本語塾は閉鎖しているが、母親たちのコミュニティとして継続して活動している。これについては、継続して海外で活動する日本人母コミュニティとして今後も観察を続ける予定である。コミュニティの日本人母、その子ども、コミュニティ活動の視点から経時的に、面接・質問紙調査を実施し、海外での日本人コミュニティと日本語の継承について、コミュニティは言語・生活にどのような影響を及ぼすのかということを解明していく予定である。また、2010~2011年に調査を開始した日本語を使用していなかった在韓日本人母4名の3回目の面接調査も実施する予定である。コロナ禍で調査や連絡が一時的に中断してしまったため、その関係の再構築が懸念されるが、引き続き調査することは成長途中から言語継承を始めた子どもたちの重要なデータになり得る。 これらは、今後、海外での日本語を継承するための教育や施設の開設などにおいて重要な意義ある研究になると考える。2024年度は研究の最終年度になるため、可能な限り多くの調査を実施する予定である。
|