研究課題/領域番号 |
19K00760
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩坂 泰子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (80636449)
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研究分担者 |
吉田 達弘 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (10240293)
竹内 晋平 奈良教育大学, 美術教育講座, 教授 (10552804)
藤井 康子 大分大学, 教育学部, 准教授 (10608376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 外国語活動 / 図画工作科 / アート活動(絵画) / 教科連携 / 初等外国語活動 / 初等外国語 / 社会文化理論 / マルティモダリティ / 図画工作 / 小学校外国語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は, Vygotskyの発達理論を源流とする社会的文化理論(Sociocultural Theory, SCT)に依拠し, 発達を「媒介」する「心的道具」である「言語」と共に, 特に感情を表象させる「芸術」活動に注目しながら児童の外国語学習・発達過程を分析することを目的とする。創造性, 論理的思考, 共感的な他者との関係構築といった側面の重要性が指摘される外国語教育にとって, 外国語科と図画工作科の教科横断的な取り組みから得られる教育的示唆は意義深い。
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研究実績の概要 |
最終年度となる2022年度の当初の計画は、2021年度までの研究を総括し、今後の研究の方向性を示した上で新たな実践の受け皿を開拓することであった。具体的には、(1)3年間の研究をまとめた岩坂の博士論文を凝縮し外国語習得研究領域のジャーナルに投稿する、(2)連携活動の質的向上を担保するコンテンツの開拓、および(3)研究実践の受け入れ校の開拓を目標としていた。以下、それぞれについて報告する。 (1)については、岩坂が分担者と協働し海外雑誌の投稿を目指したが、字数制限の中で理論と実践をバランスよく配置することが困難で、投稿に至らなかった。(2)一方で、外国語学習とアートの活動を融合させたコンテンツの質的向上を求める中で出会った「英語でアート」という活動チームとの交流をきっかけに本研究の理論的支柱である英語(外国語)とアートの相乗的な教育効果を得る発展的研究を開始した。アート活動の教育的意義についての論考を関係性の教育学会に投稿したが、言語学習への効果部分に対する疑問が残るとして掲載には至らなかった。(3)そこで、この団体と協働した連携活動の効果検証を目指した実践を計画し、実践受け入れ校として外国ルーツの児童生徒が多く在籍している愛知県保見地区の小・中学校での実践を試みた。2022年3月には保見中学校での英語の授業で詩づくり活動の実践を実施、同年12月にはこの中学校の学校行事である「豊かな人生を育む会」にて「英語でアート」チームが生徒らを対象にアート活動を実践した。https://www.city.toyota.aichi.jp/pressrelease/1052093/1052277.html 以上、3つの活動を試みた結果、2022年度は、コンテンツの改良と実践校の開拓に尽力した。しかし、コロナ禍の影響もあり引き続きの実践校開拓が必要であることから研究期間の延長を申請することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は当初、これまでの3年間に構築した理論を学会誌にて発信し、構築した理論に基づく実践の場を広げることを目標としていた。構築した理論の意義を検討する中で、これまで行った実践を発展させたさらなる実践授業を計画することの必要性が大きくなった。 その最大の理由は、以下のようなことである。本研究の支柱である社会文化理論とマルチモダリティ理論の統合では、言語による表現と絵画による表現の間に主従関係を認めず、同等の価値を見出すことが重要である。しかし、これまで実践した授業は、最終的には言語活動とアート活動の両方を行なって評価しているものの、いずれも言語活動とアート活動を別々に行なっている。つまり、アート活動が言語活動の学習効果を高めるための活動となっていた可能性が否定できないということになる。本研究が求めるものはそうではなく、学習者の表現方法はその時最善の表現である言語や絵画などが自発的に選択されてこそ意味がある。 その理論に基づく実践内容計画の模索の中で「英語でアート」チームとの出会いは意義深いものであった。本研究はこの団体が積み重ねてきた実践を発展させ、新たな事例によって理論検証を試みたいとの希望を持った。しかし、実際に小学校で実践授業を受け入れてもらうことは、学校側の限られた予算やタイトなカリキュラムなどに阻まれ、困難を極めた。 結果として、外国語とアートのコラボ授業をすぐさま行うことはできなかったが、外国ルーツの児童生徒が多く在籍する地区の小中学校との交流の末、年末になんとかこの地区の中学校にてアート活動を実践することができ、今後の授業内容の開発のための経験を積むことが可能となった。年度の後半は、この地区の小学校での実践ほか、実践可能な他の地域の小学校関係者へのコンタクトや交流を積極的に行い、授業内容の開発とともに実践校の開拓に労力が割かれ、計画は大幅に遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1年の延長を申請した最終年度の研究計画は以下の通りである。 (1)本研究の理論的枠組みである社会文化理論とマルチモダリティ理論の統合理論に基づく授業実践を行う。実践授業の場として、奈良市内の公立小学校の1年生から6年生までの全ての学年での授業実践の受け入れが決定している。現在、各学年の実践実施日の調整を学校側と行うとともに、実践内容についての検討会を開催し計画を練っている。 (2)本研究の理論と実践の往還の報告及び実践授業案等を教育現場に還元する。具体的には、以下の3つを考えている。 ①教育学部の大学生(「総合的な学習の時間」の指導法の授業)を対象とした実践授業のワークショップと振り返りを通して教科連携の意義を検討してもらい、教育実習および将来教員となった後のための示唆を得る機会を提供すること。②これまでの「英語とアート」チームの実践事例および今回の小学校1年から6年生までの各学年の実践授業案と記録をデータとして取りまとめ、現場の教員が参考としやすい媒体での印刷版及びウェブ版を作成することを通して本研究の意義を発信すること。③小学校での1年から6年の各学年の実践授業のデータを整理・分析し次年度の学会発表及び論文執筆の準備を整えること。 以上。
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