研究課題/領域番号 |
19K00774
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
原田 哲男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60208676)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 日英語双方向イマージョンプログラム / 音声習得 / 外国語としての日本語学習 / 日本語継承言語教育 / 単音と促音 / Voice onset time (VOT) / One-way immersion / Two-way immersion / 外国語としての日本語(JWL)学習者 / 日本語継承言語(JHL)話者 / Maximal Opportunity: WMO / 第二言語習得 / 双方向イマージョンプログラム / 話す能力 / 外国語としての日本語(JFL)学習者 / Speech Learning Model / バイリンガル教育 / イマージョン教育 / 発音 / 書く能力 |
研究開始時の研究の概要 |
高い外国語能力を持った高度グローバル人材の育成に不可欠であるバイリンガル教育で養成される日本語と英語の「話す能力」と「書く能力」を評価することを目的としている。話す能力は、「発音とインタビュー」、「スピーチの理解しやすさ(comprehensibility)」から評価し、さらに学習言語としての「書く」能力を測定するため、適切な作文のプロンプトと評価用ルーブリックを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は米国におけるイマージョン教育(カリキュラムの少なくとの半分以上を外国語で教科内容を指導する教育形態)で養成される外国語の「話す」能力を評価することを目的とする。多数派言語話者のみに外国語学習と教科学習を提供するOne-way Immersion(OWI:外国語イマージョン教育)よりも、生徒同士のインプット、アウトプット、インタラクションが多いとされるTwo-way immersion (TWI:多数派言語話者と少数派言語話者をそれぞれ約半分ずつでクラスを構成し、お互いの言語で教科学習を行うバイリンガルプログラム)を研究対象とした。日本語と英語で教科学習を行う米国の公立小学校のTWI(日英語双方向イマージョン・プログラム)に在籍している小学校の「日本語継承語話者」と英語を母語とする「日本語学習者」の話す能力と発音能力を測定した。話す力の測定には、アメリカ外国語教育協議会(ACTFL) の初級者、中級者を対象としたAssessment of Performance toward Proficiency in Languages (AAPPL)に従い、インタビューを実施した。さらに、児童の発音能力を明らかにするために、次の二つの側面から音響分析を行った。英語では音韻的な意味の区別がないが、日本語では区別がある子音の促音と単音の対立の習得、また英語にも日本語にも音韻論的区別がないが、音声的に異なる破裂子音のvoice onset time (VOT)の習得を調べた。さらに、この音響分析の結果については、OWIとTWIとも比較し、どちらの形態のイマージョン教育が音声習得に有利かを検討した。 データー収集、測定、分析が既に終了しているので、TWIの話す能力と音声能力(VOT)について論文にまとめる作業が中心となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学術誌に投稿するための執筆準備を進めている。話す能力の測定方法を整理するため、児童を対象とした最近の評価方法を検討した。最も重要なものとして、米国の応用言語学センターが開発したEarly Language Listening and Oral Proficiency Assessment (ELLOPA)とStudent Oral Proficiency Assessment (SOPA)が挙げられ、前者は未就園児から2年生までを、後者は幼稚園から8年生までを対象としている。この二つのテストでは、子供にペアーを組ませて、大人がインタビューを行う形式である。また、5年生から8年生向きにCAL Oral Proficiency Exam (COPE)というテストでは、ペアーの生徒が試験官とロールプレーを行う。いずれも、評価スケールは、全米外国語教育協会(ACTFL)の言語運用能力基準を採用している。話す能力を4つのカテゴリ(流暢性、文法、語彙、聴解)に分けて、3つのジュニアレベル(初級、中級、上級)を設定している。 さらに、スタンフォード大学で開発されたStanford Foreign Language Oral Skills Evaluation Matrix (FLOSEM)が挙げられ、教師が教室で子供の話す能力を測定することを目標としている。また、オレゴン大学(CASLS)は、4技能の評価を目的として、オンライン上でのコンピュータ適応型テストStandards-based Measurement of Proficiency (STAMP)を開発した。これらのテストと本研究で採用したACTFLのAssessment of Performance toward Proficiency in Languages (AAPPL)を比較し、利点や課題を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、米国の公立小学校で実施されている日英語双方向イマージョン教育(TWI)に在籍している児童の話す能力の測定を、インタビュー評価と音響分析によって行った。執筆の段階で、過去のOWIのデータを統合し、OWIとTWIの児童のVOT習得を比較した。その結果、より豊かな言語環境であるはずのTWIの児童の音声が、必ずしもOWIの児童と比較して日本語的なVOTではなかったのは注目に値する。今後は、この原因を考察していくことを予定しているが、そのためのいくつかの研究方法を検討している。両者のカリキュラムをより綿密に比較対象を行い、教室での言語使用を多角的に捉える必要性がある。教科学習を行う際、どのように教員から児童への情報の提示があり、児童がどのようにその情報を受け取り、理解を促進するために教室内でどんなオーラル・アクティビティが行われているかを観察することは必須である。そのために、クラス内のやり取りを詳細に分析するために、インタラクション分析などが不可欠であろう。とくに、多数派言語話者と少数派言語話者間の音声によるやり取りの頻度やその内容を明確にし、意味交渉の有無がどのように音声習得に影響を及ぼすかを考察する必要もある。教室内での教師やピアーからの発話の訂正の頻度、その性質などから、児童の音声への意識なども考察に値すると思われる。 また、比較対象となったOWIは幼稚園や低学年でほぼ日本語のみで教科学習を行なっていたTotal Immersionであり、一方TWIは各学年で50/50のモデル(Partial Immersion)を採用し、低学年から高学年まで日本語と英語で半分ずつ授業を行なっていたため、Total ImmersionのOWI の児童が有利になったとも考えられるが、さらなる研究が必要である。
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