研究課題/領域番号 |
19K00857
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
原田 早苗 (井口早苗) 上智大学, 外国語学部, 教授 (30286752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 語用論 / 日仏バイリンガル / 異文化間語用論 / ターン・テイキング / emotion (感情) / フランス語 / 異文化間語用論能力 / フランス語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日仏バイリンガル話者である日本人が、日仏の異文化間コミュニケーションの場で、断り・謝罪・依頼等の発話行為の遂行をどのように臨機応変に切り替えているのか(あるいは切り替えていないか)を明らかにすることを目的としている。本研究では在仏歴が長く、就業経験のある社会人を調査対象としており、職場および家庭を含む多様な場面のデータが得られる。日仏バイリンガル話者にとって難しい側面を知るとともに、その理由が日仏両言語のどの語用論的特徴にあるのか(上限関係、親疎関係の相違等)を探る。本研究の知見はフランス語学習者およびフランス語圏で働き生活する日本人の語用論能力向上と教育に寄与する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日仏バイリンガル話者の異文化間語用論能力について調査し、実際のコミュニケーションの場で生じる問題を分析することである。長年フランスで生活し、職場および家庭を含む多様な場面で両言語を日常的に使う日本人を研究対象とし、半構造化インタビューを通してデータの収集を進めている。 今年度は日本語で行われたインタビューのなかでフランス語へのコードスイッチングが起こった場面に注目し分析を進めた。コードスイッチングが起こる理由や目的については様々な分類があるが、Gumperz (1982)のconversational code-switchingに基づき、回答者自身の意志によって起こるコードスイッチングを日仏の異なる語用論的側面によって生じる葛藤やemotionと関連付けて分析した。日本語からフランス語へのコードスイッチングは、職場の会議等の場面で生じるターン・テイキングの難しさや積極的に発言して自分をアピールすることの困難を説明する場面、また自分の心情を強調する場面で観察された。その考察内容をリヨン(フランス)で開催された20th AILA World Anniversary Congressにおいて"Analyse sociopragmatique des interactions interculturelles en contexte professionnel (Sociopragmatic analysis of intercultural interactions in the workplace)" のタイトルで口頭発表した。フランス語がL1ではない参加者も交えて、日本人がフランス人の語用論的規範だと認識している特徴について議論し、社会文化的な文脈や個人によって異なる規範の捉え方について有益な意見を得る機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、フランスで長年生活し、就業経験のある日本人を約30名インタビューする予定であったが、コロナ感染拡大の影響で海外渡航が実現せず、現在実施できたインタビューはその数を下回る。しかし、これまでのインタビューを通して得たデータから様々な示唆を得ている。上記の「研究実績の概要」で述べた通り、職場の会議等の場面で生じるターン・テイキングの難しさや積極的に発言して自分をアピールすることの困難、日本語で行われたインタビューのなかでフランス語へのコードスイッチングが示す心情などを分析してきた。また、「謝罪」「断り」「褒めとその返答」といった言語行為のうち、どのようなものがフランス語の語用論的規範に合わせやすい、あるいは逆に合わせにくいのかという観点からも分析を進めている。日本人としてのethos communicatifを変えることへの抵抗感、母語の規範と異なる側面に対してみせる resistance (Ishihara, 2019 ; Kecskes, 2015) についても考察を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、これまでのインタビューを通して得たデータの精査と考察を進める。来年度は、日本語とフランス語の語用論的規範を意識しすぎるあまり、どちらの言語においても自分の発話が不自然であると感じてしまう回答者の発言にも注目し、日仏の異文化間コミュニケーションの場で生じる葛藤についてさらに分析を深めていく予定である。その過程で、インタビュー対象者に確認や補足の質問を行なう必要がある場合は2024年度もフランスに渡航し調査をすることも検討している。
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