研究課題/領域番号 |
19K00876
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久保田 章 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (30205132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 対話的学び / 言語モード / 協働的ライティング / 協働対話 / ライティング / 事前活動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「英語のライティングの事前活動における学習者間のやりとり」、言い換えると、「ライティング課題を解決するための対話的学び」に用いる言語の違い(英語か日本語か)が、学習者が協働で行うライティング課題の遂行過程とその結果である英作文にどのような影響を与えるかについて、(1)学習者の特性、(2) ライティング課題の複雑度、(3) 対話(やりとり)の機能と内容、(4) 英作文の評価、の4つの観点から調査する。これにより、(a) 英語によるやりとりの難しさの要因と(b) 母語である日本語を活用する可能性について考察し、(c) 英語 (だけ)によるやりとりを実現するための指導のあり方を提言する。
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研究実績の概要 |
中学・高校の学習指導要領では「英語の授業は英語で行う」という基本方針が示されているが、学習者の英語によるコミュニケーション活動のあり方やその指導方法に関する議論は定まっていない。そこで本研究では、英語のライティングの事前活動をペアで協働して行う際に、(1)英語か日本語かという使用言語のモードの違いによって、活動中のコミュニケーションの質や量は異なるか、 (2)コミュニケーションの質的・量的な異同は、最終的に英語のライティング(英作文)の質や量に影響を与えるか、の2点の検証を主な目的としている。 2023年度は勤務校の対面授業が再開されたので、コロナ禍で中断していたデータ収集をコンピュータ教室内で行うことを予定していたが、教室の学習管理システム(LMS)に通話機能が無く、企図していた様式で対話データを収集することができなかった。そのため、次善の策として、オンライン・コミュニケーション・ツール(Microsoft Teams)を用い、リモートで対話活動を実施することにした。 この調査の参加者は、大学1年生約50名で、全部で25組のペアを構成した。ライティング課題としては、英語か日本語のいずれか指定された言語を用いて対話し、最終的に英語で(1)グラフの内容を記述する活動と、(2)4コマの絵を見ながら一連の絵のストーリーを完成する活動を2種類ずつ実施した。言語モードの違いについては、グループ別に使用言語を入れ替えて順序効果が出ないように配慮した。 このデータ収集方法は、コロナ禍中に試行的に採用したものと同様であるが、データの真正性について少なからず問題があることが確認されており、今回もそれに該当する例が多く見られた。そのため、対話自体が比較的協働的と判断され、実際に分析可能な対象を8例ほどに絞ることにし、現在、発話機能の観点から英語モードと日本語モードの異同について分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究開始時には、CALL教室において学習管理システム(LMS)の通話録音機能を用いて対話データを収集する予定であったが、2019年度は校舎の耐震工事のためにCALL教室が使用できず、さらに2020年度から2022年度のコロナ禍中は、外国語の授業は全面的にオンライン実施となったため、ライティングの事前活動を当初に予定した様式で行うことができず、結果的に関連するデータを収集することが叶わなかった。 そのような状況下において、2022年度までは、研究開始前に実施してあった予備的な調査によって得られたデータを、「言語モードの違いによる対話活動の様相の比較」という観点で分析してきた。その結果、ある程度の傾向は示唆されたものの、いずれにしても分析結果を敷衍できるだけの適切な量のデータを確保することはできなかった。 2023年度は、ようやく対面授業が再開されたが、コロナ禍中にCALL教室が廃止となり、移行後のコンピュータ教室では設備不足やLMSの機能的制約から、結局のところ、期待していたようなデータ収集の方法を採用できなかった。そのため、Web上のコミュニケーション・ツールを利用してリモートによるデータ収集を試みたが、生成系AIの影響をはじめ、様々な要因により、多くのデータの真正性に関して疑問が残る結果となった。そのため、最終的に、分析対象となり得るデータ自体の量を十分確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
CALL教室に代わって、2023年度にコンピュータ教室が新たに設置されたが、従来のCALL教室のような学習管理機能を有していないことが判明したので、データの真正性を担保できるようなデータ収集の方法について再検討する。基本的には、教室にヘッドフォンなどの必要な装備を配置し、多人数下での通話環境を可能とした上で、Web上のオンライン・コミュニケーション・ツールを用いた対話活動をコンピュータ室内に限って実施する。そのような調査環境を整えることで、学習者の活動を直接モニターすることができるので、リモートによる実施時に比べて良質のデータを確保することができ、結果的に、量的にも十分なデータを得ることができると期待される。 質的、量的により適切なデータを収集した後には、言語モードの違いによる対話活動の様相とライティング課題の結果を比較分析する。対話活動については、予備的調査のデータ分析から得られた知見も活用し、これまでと同様、特に発話の言語機能の観点から分析する。ライティング課題については、英作文の一般的評価基準であるCEFR等のルーブリックに基づいて分析する予定である。 また、コロナ禍で海外渡航が制限されていたため、英国の研究者との交流はオンラインに限られていたが、時差などの制約もあって十分な議論ができなかった。 事情が許せば、オックスフォード大学を訪問し、研究成果について研究者との意見・情報交換を予定している。
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