研究課題/領域番号 |
19K00889
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
|
研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
奥脇 奈津美 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (60363884)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 第二言語習得 / 語彙 / 句動詞 / 回避 / 定型言語 / 英語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ひと固まりとして記憶に蓄積される(される必要のある)定型言語の習得、認知、産出について、多角的にデータ収集し、第二言語における習得の難しさの原因を特定し,その体系的習得・教授の必要性と方法について提示する。特に句動詞に着目し、その統語的・意味的特徴についての言語的分析を行いながら定型言語の重要性を明確にし、言語教育の中でそれを体系的に指導して習得を促していくことが自然な言語運用のためには必要不可欠であることを提案する。
|
研究実績の概要 |
「言語に定型性がある」という認識は、言語自体の捉え方と深くかかわる問題であるという基本的な学術的問いに立ち返り、文献研究を中心に、言語の定型性とその第二言語習得に関する最近の知見をまとめることに専念した一年であった。本研究の目的は、コーパス研究が発展して実際の言語運用の多くの部分が「定型言語」と称される語の並びのパターンで構成される表現によって占められることが明らかになるなかで、第二言語学習者が、それを適切に認識し、使用することができるのか、どの程度可能なのか、どのような過程を経てできるのようになるのか(ならないのか)を確かめることであった。統語による構造の制約を受けながら語を組み合わせて文や句を構築するという言語一つの側面に対し、そのような過程をある程度省略して処理される固まりので存在する句の形を模索することも、もう一つの目的であった。 今年度は、メンタルレキシコンに、従来考えられてきた「語」ではない形で存在する固まりがあると想定すると、それが言語処理の負荷軽減につながり、効率的で流暢な言語使用 を生むという説明について、それを支持する研究がある一方で、それに対立する、もしくは部分的に支持しない立場の研究が、最近多くなっていることがわかった。また、固まりとして記憶に蓄積される定型言語の習得、認知、産出について、多角的にデータを収集・検証する方法を確認することができ、加えて、第二言語における使用の難しさの要因となっているであろうこともまとめられた。言語教育に関しても、データに基づいてその体系的教授が必要であるとする研究をさらに集めることができたことも大きな意義であった。具体的に着目している句動詞に関しては、その統語的・意味的特徴についての異なる言語的分析から、自身の見解を定めることができたことも大きかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍を経て、対面での紙面を使用しての調査や参加者と個別にコンピュータ画面に向かってデータ収集を行う従来の方法について、物理的難しさを感じていたところ、それ以外に、さまざまな調査をオンラインで行うプラットフォームがいくつか生まれいることを知った。そして、その方法のほうが、より効率的にある程度の質も保証されたデータ収集が可能かもしれないと考え、本研究でもその方法を活用できるか、するのならばどのように形でできそうであるのか、試行しているところである。そのため、実際の調査には遅れが生じてしまっているが、次年度は、そのような、オンラインでのデータ収集が利用できるよう、準備を整えている。また、言語的側面の研究に関しては、句動詞の compositionality について、従来考えていた分析とは異なる立場の研究に出会い、そちらの分析により高い妥当性を感じるようになり、そのために言語研究に多くの時間がかかっていることも研究が遅れている理由である。しかし、これは必要なプロセスでもあるので、より妥当な説明であると結論づけられるまで、必要な文献を読みんでいる。定型言語に関しては、現在多くの注目が集まっている研究とぴっくでもあるため、その処理モデルに関しては多くの新しい研究が発表されている。先行研究としてもらさぬよう、その文献を読みこむことも必要になっている。以上のことから、現在の進捗状況としてはやや遅れているが、次年度には予定を遂行できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、対面でコンピュータを使用したデータ収集ができず、参加者を集めてのペーパーを使用した調査も実施しにくかったことから、次年度は、オンラインでデータ収集を行うことのできる調査方法利用して、十分に進めていきたい。具体的には、日本人英語学習者の句動詞の処理と使用について、紙面やコンピュータを利用した方法も組み合わせて、判断テストや言語処理の反応時間の測定を行う。実験方法はひとつに限る必要もないと考えるため、集めようとするデータに合わせて、実施しやすく適切な方法を適宜とっていく。目安としては上半期中までに大方のデータの収集を終えるようにしたい。また、本研究で着目している句動詞の言語的分析については、一致した見解にまだ至っていないため、用例を集めることも含めて言語研究をさらに進め、もう少し広く文献を読み込んでいき、秋頃までには自身の見解をまとめたい。最後に、定型言語に関する研究については、本研究が仮定する言語処理モデルについての最新の知見を取り込み、メンタルレキシコンに句動詞がどのように格納され、第二言語学習者が処理をしているのか、そしてそれをどのように使用しているのか、秋までにはデータを整えてその解釈をまとめておく。最後に、これらの研究をまとめ、冬以降に学会発表を行い、論文報告へとつなげたい。
|