研究課題/領域番号 |
19K00933
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山田 賢 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90230482)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 齋藤拙堂 / 皇国 / 革命 / 中国認識 / 支那 / 東アジア / 近世 / 近代 / 相互認識 |
研究開始時の研究の概要 |
近現代日本社会におけるアジア認識の原型を、近代以降の「文明化」の中から立ち上がった「脱亜」的発想のみに求めることに対して、申請者自身も含めて現在の研究動向は懐疑的である。すなわち、近現代日本のアジア観についても、近世後期から近代への歴史的連続性を前提にした上で、その近世的淵源にまで遡って探求する必要がある。本研究は近世後期における知識人の正統的「文言」であり、かつ東アジア共通の言語表記であった「漢文」文脈に現れるアジア認識を実証的に復元するとともに、かかる「漢文」文脈に盛り込まれた近世日本の自他認識と世界像が、中国・朝鮮においていかなる反応を惹起したのか、を検討する。
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研究実績の概要 |
幕末の儒者、齋藤拙堂の漢文著作である『拙堂文集』、ならびに『経世文編抄』批語を精読することで、とくに「革命」に関する認識を通して、拙堂の中国認識について検討した。拙堂にとって、易姓革命は「忠誠」というモラルの否定、ないし少なくとも「忠誠」を脅かす危機であると認識されていた。それに対して、一貫した揺るぎなき「忠誠」によって特徴付けられる「皇国」=日本の伝統の価値が称揚されることになる。このような観点から見るならば、王朝がたびたび革命によって交替した中国の歴史には、いわば反面教師としての学びしかないと考えられていた。幕末を生きた拙堂にとって、もはや中国は批判的な学びの対象としてしか意識されていなかったということになる。 ただし、だからと言って、拙堂が歴代中国王朝の聖王をすべて否定的に評価していたというわけでもない。たとえば殷周革命については、彼は以下のような論理によって周の文王・武王を擁護、ないし正統化しようとする。拙堂は、周の文王・武王がもともと殷王朝の「臣下」ではなかったという説を支持することで、殷周革命という歴史認識を否定する。はじめから「臣下」ではなかったとするならば、それは「主」である殷を弑逆した「革命」には当たらない。拙堂はこのような論理によって、中国古代の聖王の時代を「救済」するのである。 こうした結論から導かれる次の課題は、幕末の儒者による「革命」認識であり、そのフィルターを通して認識される「中国」なのであると言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間を通して収集した文献の精査と分析は順調に進展したものの、当該年度においては本来中国に渡航しての資料調査と、中国現地での研究交流を実施して最終成果を取りまとめる予定であった。しかしながら、予想よりも長引いたコロナの影響によって、上記のような中国での調査と研究交流を断念せざるを得なかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
中国への渡航による現地資料調査と研究交流を実施することで、研究成果の最終的な取りまとめを行う。ただし、中国の研究協力者、ならびにその所属する研究機関からの招聘とビザの取得が叶わないことも考慮しつつ、中国の研究協力者を日本に招聘してシンポジウムを開催することも視野に入れている。
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