研究課題/領域番号 |
19K00964
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伊川 健二 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70567859)
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研究分担者 |
岡本 真 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (50634036)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ルイス・フロイス / 南蛮史料 / 天正遣欧使節 / イエズス会 / 織豊期 / ポルトガル / 南蛮 / 安土・桃山時代 |
研究開始時の研究の概要 |
ルイス・フロイスは16世紀後半の日本に滞在し、戦国時代から織豊期にかけての貴重かつ膨大な情報を書き留めたイエズス会士として一般にもよく知られている。ところが、彼が残した膨大な史料群が、本格的な研究を遂行するための適切な環境下におかれているとはいいがたい。たとえば、手稿本の閲覧が容易ではないことは、既存の刊本を批判的に検討する機会を奪う結果となり、一連の史料群はその知名度とは裏腹に、本格的研究を停滞させる要因となっている。本研究は、フロイスの著作の全体像を可能な限り明確にし、南欧における稿本の所蔵、原文の刊行、邦訳の刊行を整理し、その成果を刊行物として共有することをめざす。
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研究実績の概要 |
本年度の実績は、コロナ禍の影響が完全に克服されない状況ではありつつも、海外史料調査をおこなったことに求められる。 8月16日(火)より28日(日)までのポルトガルにおける海外文献調査を研究分担者の岡本真氏とともに実施した。昨年度の実施状況報告書「今後の研究の推進方策」欄にも記載したとおり、当初は本研究を総括する調査として、ローマ、マドリード、リスボンの3都市にまたがる調査を実施する予定であったが、コロナ禍による出入国制限が依然として各国により条件を異にしていたため、対象をリスボンのみに限定しておこなった。 調査対象は、トーレ・ド・トンボ国立文書館(Arquivo Nacional Torre do Tombo)、ポルトガル国立図書館(Biblioteca Nacional de Portugal)、歴史・外交文書館(Arquivo Historico-Diplomatico)である。後者はかつて外務省文庫とよばれ、関連研究では「コインブラ,イエズス会学院の蔵本」などと書簡集の存在が簡単に紹介され、少なくとも1点の日本関係史料の所在が知られていた。また、東京大学史料編纂所編『日本関係海外史料 イエズス会日本書翰集』の校訂作業でも当該史料が用いられており、国内未紹介の情報とはいえないものの、史料の全貌は既存の文献からは必ずしも明らかではなかった。このたびの調査では、その全点撮影に成功した。以上のほか、伊川単独では海事博物館(Museu de Marinha)の調査もおこなったほか、書店において大航海時代に関連する書籍の購入をおこなった。 フロイス『日本史』の注釈作業は、これまでの作業を集約したものの、研究会を再開し、体裁を整えるには至らなかった。 フロイス関係書籍データベースは、昨年度にひきつづき、大学院生の雇用をおこなうことができなかったため進展がなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、当初研究期間2年目(平成32年度=令和2年度)に予定されていた海外史料調査は、延期を余儀なくされ、調査を前提としていた最終年度の計画の実施も、当初の計画とおりの形では困難とせざるを得ない状況が発生している。 幸いにして、令和4年度は、出入国制限が残るなかとはいえ、海外調査を実行に移すことが可能となった。前項記載のとおり、それは当初の計画を縮小し、対象をリスボンのみに限定せざるを得ず、高騰した航空券、宿泊代金と、円安傾向の継続は残額を圧迫する結果を招いた。 その一方で、ようやくにして海外調査が実施にこぎつけ、リスボンに限定されながらも、諸機関を訪問し、とりわけ歴史・外交文書館において史料撮影がおこなえたことは大きな成果として強調するに値しよう。日本国内未紹介の情報とはいえないまでも、全文はおろか目次すらも明らかではなく、本格的な調査が入った形跡がない史料の全貌を入手したことで、その内容の解明と、他の史料との関係を解き明かす糸口を得たことになる。 本年度は、このように、当初の計画を縮小した規模でありながらも、海外調査を実行し、一定の成果を得たものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
前項記載のとおり、コロナ禍により研究計画を全体見直さざるを得なくなったことにより、また本来の終了年次を超えた期間となることもあり、次年度の計画も当初の計画に修正を加えて実施することになる見込みである。 フロイス『日本史』の研究会については、代表者の所属先あるいは学会の用務繁多もあり、いまだ継続的な再開にいたっていないものの、コロナ禍が解消されつつある状況に鑑みて、ひきつづき再開の方途を検討していきたい。フロイス関係書籍データベースは、今後の大学院生の雇用の困難が見込まれるため、中断を余儀なくされる可能性がある。 最終年度には報告書を作成することを、計画の柱のひとつとして掲げていたのだが、研究会およびデータベースの進捗に鑑みると、報告書の作成が必ずしも充実した情報発信の方途として適さない状況が生じうる。また、昨年度までの予算消化状況からは、かりに報告書を作成した場合には、残額の大半を費やすことが予測される。 そこで、本研究の成果を将来につなげるために、令和5年度は代表者によるイタリア史料調査を検討したい。イタリアは、当初の計画においても調査地としていた上に、令和6年度には特別研究期間によりヴェネツィア滞在を予定している。本研究の成果を今後の研究につなげる意味でも、令和5年度の研究は上記の方向性で考えたい。
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