研究課題/領域番号 |
19K00969
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 新潟県立歴史博物館 |
研究代表者 |
渡部 浩二 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20373475)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 近世産業 / 産業絵巻 / 佐渡金銀山 / 鉱山絵巻 / 農耕絵巻 / 製茶絵巻 / 捕鯨絵巻 / 製紙絵巻 / 近世 / 産業 / 絵巻 |
研究開始時の研究の概要 |
近世産業絵巻史料の集積と分析を行い、全国に散在する個々の産業絵巻が、18世紀頃から幕末期までの100年以上にわたって制作された産業絵巻群全体のなかで、どのような年代、分類、位置付けになるのか検討する。そして、近世社会では、産業の発達を反映した産業絵巻が新たな題材として制作・受容されたことを豊富な絵巻史料や関連史料から解き明かし、日本の絵巻文化が江戸時代以降にも社会の変化を反映しながら継続してきたことを日本絵巻史上に位置づける。
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研究実績の概要 |
農耕、製茶、捕鯨、製紙、織物、鉱山など近世産業絵巻関係史料の調査を引き続き実施した。それらの制作背景や目的は、狩野派など職業絵師の画題として、生業を継承するための記録として、幕府や藩の殖産興業との関わり、など多様であった。制作年代は、狩野派など職業絵師が17世紀には画題としていた農耕や製茶の絵巻を除けば、18世紀以降が大半を占める。 これらの絵巻の制作は、当然ながら産業の発展が契機とはなったが、幕府や藩の殖産興業との関わりという視点で見れば、必ずしもその盛期を描いたものではなかった。幕府領鉱山である佐渡金銀山の絵巻を例に見ると、金銀産出量が激減していた1730年代頃に制作が開始されており、その現状を記録・報告する目的が推察される。肥前国唐津藩における20余の産業の様子を唐津藩水野家の家臣・木崎盛標が安永2年(1773)~天明6年(1786)にかけて描いた「肥前州産物図考」も藩財政の危機と殖産興業への関心が背景にあったと考えられている。また、越後小千谷縮は、江戸中期頃に最盛期を迎えたとされるが、その製造工程を描いた「縮布製造之真図」は明治18年(1885)の制作であり、近代化の波にさらされるなかで、伝統的な織物産業の様子を記録として残そうとする制作意図も推察された。 また、鉱山絵巻では、最盛期を過ぎた江戸後期に絵巻の制作や写本化が顕著となる傾向がうかがわれた。この背景には、地域産業や博物学などに対する関心の高まりとともに、絵巻の制作を担う層や、それを受容する層の拡大といった文化の大衆化、地方文化の発展とも密接に関わると推察された。 以上の成果の一部は、新潟県立歴史博物館の令和4年度秋季企画展「生業絵巻尽」において還元した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和4年度は、これまで新型コロナウィルス流行の影響で制限されていた調査・撮影を大きく進めることができた。しかし、完了には至らず、研究期間を再延長することとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで集積した近世産業絵巻関係史料のデータを整理し、まとめの作業を行う。具体的には、個々の絵巻の作者、制作時期、制作目的、所蔵者(旧蔵者)などの整理を進め、近世の産業絵巻群全体のなかに位置づけ、近世産業絵巻群の構造を総合的に検討する。データの整理にあたっては、絵巻化されなかった(されにくかった)産業についてや、絵巻と屏風・和本・扇面といった形態の史料との関連などについても検討し、近世産業の史料化や絵画的展開についても見通しを立てたい。
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