研究課題/領域番号 |
19K00975
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
森 由紀恵 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (70397842)
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研究分担者 |
前川 佳代 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (70466415)
宍戸 香美 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (00637861)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 奈良町 / 大仏殿再建記 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近世前期における奈良町北部の実態を東大寺大仏再建事業との関連によってとらえなおすための基礎的研究である。具体的には奈良奉行所与力玉井定時が記した『大仏殿再建記』を中心とした諸資料の調査および地名・人名データベースの構築、『大仏殿再建記』成立の背景にある奈良奉行と東大寺の情報共有のあり方の解明、奈良奉行所の存在した奈良女子大学構内遺跡出土の遺物の再調査および同遺跡のGISを用いた分析を行う。本研究は、奈良町北部を国家事業や行政府との関係を加味しながら再評価するもので、奈良の都市史研究に新たな方向性を示すものといえる。
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研究実績の概要 |
本研究は、近世前期における奈良町北部の実態を東大寺大仏再建事業との関連でとらえなおすことで、現在の奈良の観光・行政の中心域である奈良町北部の成立過程を解明するための基礎資料を整備することを目的とする。令和4年度は以下の研究を行った。 (1)『大仏殿再建記』の調査および地名・人名データベースの構築:本研究の中心史料である『大仏殿再建記』から地名・人名データを抽出しつつ、写真帳による校正をすすめ、Excelへの入力作業を終了した。 (2)東大寺大仏殿大虹梁の調査:令和3年度に収集した大仏殿大虹梁に関する諸資料をもとに東大寺大仏殿の大虹梁の調査を行い、元禄時代に創建された大仏殿の大虹梁の実態を確認した。 (3)奈良町北部の水系の調査:天理図書館蔵旧保井文庫奈良町絵図などをもとに作成を開始した奈良町の水系・橋のトレース図をもとに、奈良町北部の水系の現地調査を行い、写真・位置情報等の資料を収集しつつ、トレース図の完成度を高めた。収集した資料類は、Google Earthで閲覧できるようデータ整理をすすめた。奈良町の行政の中心域であった奈良町奉行所周辺の水系については、関連遺跡の調査・研究をすすめつつ、奈良女子大学学術情報センターにて明治時代を中心とした奈良女子高等師範学校の図面類の調査を行い、実態解明をすすめた。また、『庁中漫録』に加えて『奈良晒』・『奈良坊目拙解』からも奈良町の橋に関する資料を収集して橋の管理のあり方や機能を確認した。 (4)研究成果の発表:東大寺瓦を含む奈良女子大学構内遺跡に関する再調査の成果を連続研究会で発表した。また、連続研究会や大仏殿再建記研究会において度々報告されていた、江戸期東大寺大仏殿再建事業と島津家に関する論考が『南都仏教』に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染拡大により遅れていた『大仏殿再建記』の地名・人名データベースは、テレワークやオンラインによる大仏殿再建記研究会の開催により進展し、Excelでの入力作業を終了することができ、データベース公開にむけての課題も明確になった。 オンラインでの研究環境の整備にともない、連続研究会を引き続き開催し、研究成果の確認と課題を明確にすることができた。令和4年度は、奈良女子大学構内遺跡の再調査の成果が報告され、近世前期までの奈良女子大学構内における遺跡・遺物の編年が整理されたことで、同水系上にある東大寺境内出土遺物などとの関連性を考察する基礎的条件が整った。 令和3年度から作成を開始した奈良町の水系・橋のトレース図については、現地調査を行うことで完成度を高めることができた。現地調査では、奈良町北部と春日神社周辺の水系の関連を考察する必要性などを明らかにすることができた。加えて、令和4年度から本格的に開始した『庁中漫録』・『奈良晒』・『奈良坊目拙解』にみる橋関連の情報を収集する中で、奈良町北部の水系・橋の実態を、物流のあり方などを含めて明らかにする目途がついた。 また、令和4年度には、新たに大仏殿大虹梁の調査を計画・実行した。令和3年度までの資料収集・調査をもとに行った今回の調査では、明治・昭和の修理を経た現在の大虹梁に今なお残る近世の創建当初の痕跡を確認することができ、大仏殿再建事業の基礎的資料をより充実させて提供する準備を整えることができた。 以上の理由により、本研究はおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)『大仏殿再建記』地名・人名データベースの完成:Excelで入力した『大仏殿再建記』地名・人名データを、項目ごとにまとめ索引の形式とする。その際、史料上の所見が異なるが同項目と思われるものがあるため、関連史料を用いた調査や、大仏殿再建記研究会での検討を行う。また、デジタルデータの公開も検討する。 (2)東大寺大仏殿再建事業に関する基礎資料の整理:大仏殿再建事業の基礎資料となる大虹梁の引揚げの実態について、『大仏殿再建記』や東京都立中央図書館木子文庫『東大寺大仏殿指図』などの諸資料をもとに、令和4年度における大虹梁の調査で明らかになった点を中心に整理し公表する。写真資料等の公表は、関係諸機関の許可をえつつすすめる。 (3)奈良町北部を中心とした水系の調査および研究成果の報告:奈良町の水系・橋のトレース図をもとに現地調査を行い、トレース図の精度を高めつつ、位置情報の確認や写真資料などを収集し、奈良町北部の基礎資料としての利便性を高め、水系の実態解明から明らかになる奈良町北部の特色について考察する。また、橋については『庁中漫録』・『奈良晒』・『奈良坊目拙解』から収集した史料とあわせてその実態を解明し、奈良町北部の特色を主に物流の面から考察する。諸資料の整理にはGoogle Earthを用いるなど、研究成果の活用の幅を広げることも考慮する。 (4)報告書の作成:以上の研究成果の一部を報告書にまとめて公表する。
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