研究課題/領域番号 |
19K00979
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
丸山 裕美子 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (00315863)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 日本古代史 / 移民 / 帰化人 / 律令制 / 木簡 / 正倉院文書 / 古文書学 / 本草学 / 唐代史 / 本草 / 墓誌 / 百済遺民 / 高句麗遺民 |
研究開始時の研究の概要 |
「移民」の問題は、現代社会が抱える世界共通の課題である。 日本古代の政権は積極的な移民政策を行い、制度や文化・技術を受容して、中央集権国家を形成した。本研究は、これまで「渡来人」「帰化人」と表現されてきた人々を、「移民」という概念で捉え直し、彼らが日本古代律令制国家の形成に果たした役割を明らかにするとともに、古代の日本社会がいかに「移民」を受容したのか、また「移民」がどのように日本社会に同化していったのかを解明する。 7世紀後半の百済・高句麗遺民(移民)の移住と定着を、正倉院文書や中国出土の墓誌を分析することによって具体的に明らかにし、東アジアの人の移動という視点で再検討することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、日本古代国家の制度や文化の形成に、いわゆる「渡来人」「帰化人」が果たした役割を考察するにあたって、「移民」という概念を用いて、捉え直しを行おうとするものである。ユーラシア大陸から海を隔てた島嶼で構成される日本列島は、常に外部からの移民の波を受けて、住人と文化が形成されてきた。古代律令制国家の成立期には、とりわけ戦乱のつづく東アジアからの人びとの移動・移住・定住が大きな影響を与えたことは、周知のところであろう。 2020年度は、正倉院文書の分析による8世紀の移民の実態を解明し、また唐「告身」と日本「位記」の比較研究を通じて、移民が主として担ってきた文字文化や文書行政が、どのように古代日本社会に受容されたのかを具体的に考察した。2021年度には、移民の子孫である深根氏が編纂した本草書を翻刻・出版し、2022度の実績としては、国際会議のシンポジウムを主催した。成果は2024年に英文雑誌『ACTA ASIATICA』127号に掲載される。2022年2月に招聘されていた韓国の国際会議には病気・手術のため参加できなかったが、代読で発表し、その成果は2023年度に韓国で出版された学術雑誌『東西人文(ハングル)』22号に掲載された。 2023年度には、コロナ禍のため実施できていなかった韓国・慶州での木簡調査や、中国・湖州での国際会議での発表を行うことができた。またこの研究成果をふまえた一般向けの著書(共著)『日本史の現在』2巻所収「帰化人―日本古代の移民ーの果たした役割」を仕上げた(近刊)。 延長をつづけた最終年度にあたる2024年度は、研究論文をまとめ、現代日本社会にも通じる移民の問題について、前近代社会における受け入れの実態を考察し、同化の過程を具体的に明らかにすることを目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により、国内外の活動が制限され、予定していた海外調査が行えなかったこと、また2022年度は体調不良もあり、研究に大幅な遅れが生じてしまった。2023年度はようやく体調も回復し、海外出張も可能になって、念願の韓国での木簡調査と中国での学会発表を行うことができた。その成果は一部公表もしているが、まだその全体をまとめるにいたっていないのが現状である。また中国で出土墓誌などの調査を行いたいのだが、いまだにビザの取得に困難があり、実施できていない。2024年度中には中国で2つの国際会議に招聘されているので、その機会に史料調査も実施できないか検討中である。 中国での史料調査ができなかったとしても、2024年度は研究の最終年度であるので、これまでの研究成果をまとめたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、近年中国において出土点数が増加した百済・高句麗遺民(移民)の墓誌を分析し、日本の正倉院文書にみえる百済・高句麗移民の子孫たちの動向と合わせ、前近代の東アジアの人の移動・定住の流れや、そうした移民が日本古代社会・国家・文化に果たした影響を考察しようとするものである。 正倉院文書の写経所文書のなかにみえる百済・高句麗移民の子孫たちの動向については、ほぼまとめることができたものの、墓誌の分析・考察が、上述にように中国での実見調査が行えない状況で、進められていない。2024年度も史料調査のための中国ビザの取得は困難が予想される。ただし、2022年にこの分野における優れた研究成果が日本で出版されているので、中国での実物の閲覧調査ができなかった場合でも、その成果を継承し、再検討するかたちで、研究を進めたいと考えている。もちろん、可能であれば、中国で出土した墓誌の実見調査を行いたい。
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