研究課題/領域番号 |
19K01010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
Cryns Frederik 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90370139)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 日蘭関係 / 平戸オランダ商館 / オランダ東インド会社 / ウィリアム・アダムス / 三浦按針 / 徳川家康 / 日欧交渉史 / 日本人傭兵 / 松浦鎮信 / 日蘭関係史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は近世初期における日蘭関係史の成立過程に着目し、1609年~1633年の平戸オランダ商館関連文書における送受信書簡や決議録を研究対象とする。これらの書簡と決議録は近世初期における対外関係研究分野における情報の宝庫でありながら、難解な文書であるため、これまで学術的研究がほとんど行われてこなかった史料群である。研究方法として、平戸オランダ商館関連文書の膨大な量の史料を調査し、重要な部分を翻刻・和訳した上で、その内容を同時代の日本側・西洋側のほかの史料と比較分析し、初期の日蘭関係の構造を重層的に復元する。また、史料から得られた新たな知見を盛り込んだ、日欧双方向型歴史観を提示することを試みる。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、研究計画調書に掲げた3つの研究目的のうち、特に(1)「平戸オランダ商館はどのような国際環境の下でどのように成立したか」についての調査・研究を進めた。この調査・研究の一環として、研究協力者であるクレインス桂子氏は、査読論文「オランダ東インド会社のアジア進出と日本への視座」において、オランダ東インド会社の上層部のアジア戦略における日本の位置づけおよび日本と関係のある諸艦隊の行動を調査分析した。その結果、1609年に日本に船を派遣し、平戸に商館を設立した動きは、ヨーロッパにおける政治状況に影響されたものであり、この時点では、東インド会社のアジア戦略に日本はまだ組み込まれていない段階であったことを明らかにした。平戸商館設立後の最初の数年間はオランダ船が安定的に毎年日本に寄港しなかったが、それは、平戸商館がヨーロッパの情勢を受けて急遽設立されたという事情があり、オランダ東インド会社側の日本貿易の基盤がまだ整っていなかったことに起因しているというオランダ側の背景事情の解明に至った。 また、研究課題(2)「近世初期において日本とオランダとの間にどのような関係が構築され、どのように変化していったか」という問いに答えるために、前年度に続いて、家康の側近となったイギリス人ウィリアム・アダムスの動向・役割について、新出史料アダムス宛4通の書状を詳細に調査し、その結果を論文「オランダ商館のためにも尽力した「按針」―新出按針宛書状4通の分析を通じて」にまとめた。同論文において、イギリス船が日本に来航する1613年以前の時期にアダムスは日本国内においてオランダ商館の代理として活発な売買活動を行っていたことを明らかにした。さらに、アダムスがオランダ商館長スペックスとの密接な文通を通じて、禁教令、スペイン人、ポルトガル人の動向についての詳細な情報を伝えていた協力関係も浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、基礎的研究史料を関連学界に提供することを目的に、オランダ東インド会社文書の専門家をオランダより毎年招聘し、平戸オランダ商館関連文書のうちの重要な部分を選別し、その翻刻・英語訳1冊および日本語訳1冊を刊行したうえで、その研究史料を基に国内外の専門家を交えて国際研究集会を行う予定であった。しかし、パンデミックの影響を受け、また先方のスケジュールが合わず、打ち合わせと共同作業をオンラインのみで進めてきたため、研究史料の刊行スケジュールに遅れが出ている。 一方、研究計画調書に掲げた3つの研究目的のうち、(1)「平戸オランダ商館はどのような国際環境の下でどのように成立したか」のための研究調査作業は完了し、(2)「近世初期において日本とオランダとの間にどのような関係が構築され、どのように変化していったか」の調査作業もほぼ終了し、その成果を最終的に査読論文の形で公開する予定である。また、(3)「日蘭貿易において具体的にどのような商業活動が行われたか」についての調査研究は、令和3年度にすでに進めており、この課題についても達成する目途が立っている。 以上のように、研究計画調書に掲げた3つの研究目的については概ね順調に進んでいる一方、研究史料の刊行および国際研究集会の開催については遅れをとっているという進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、これまで主にオランダ東インド会社の上層部によるアジア戦略における日本の位置づけの研究分析を行った。令和5年度は、日本当局との交渉を行ったオランダ商務員たちが日本貿易をどのように捉え、具体的にどのように実施していったかについて研究を深める。さらに、平戸オランダ商館所属の商務員たちによる朱印船貿易制度の認識とその利用状況や初期の貿易実態について分析を継続する。また、オランダ人がなぜ平戸を商館建設の港として選んだのかという問いに答えるために、平戸を国際的貿易港として位置づける条件についての検討も進める。 なお、令和5年度も引き続き、オランダのライデン大学と協力して、平戸オランダ商館関連文書の解説および和訳作業を進め、基礎的研究史料を関連学界に提供することを目的に、同年度に平戸オランダ商館長ジャック・スペックスの受信書状綴帳(1614-1616)の翻刻・英訳1冊および和訳1冊の刊行を目指す。
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