研究課題/領域番号 |
19K01011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
高橋 裕次 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 客員研究員 (00356271)
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研究分担者 |
中村 玲 実践女子大学, 文学部, 助教 (80745175)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 古文書 / 典籍 / 和紙 / 手漉き紙 / 漉き返し / リサイクル / 繊維 / 紙屋院 / 漉返紙 / 文書 / 料紙 / 再生紙 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、料紙の研究が急速に進展し、文書料紙の分類や変遷に関する研究者間の共通認識が成立しつつある。しかし今後の研究の進展が望まれる料紙に、使用した紙を再び繊維の状態に戻して漉く「漉返紙(すきかえしがみ)」がある。 平安時代11世紀中頃に官営製紙所の図書寮紙屋院が、色紙を漉き返した繊維を用いた日本独自の技術である「漉きかけ」の料紙を創出したことに注目し、紙屋院の実態に迫る。これまでの紙屋院に関する研究をふまえ、繊維の再利用という観点から、文書・典籍料紙における漉返紙のあり方、製造技術および機能と変遷を明らかにする。こうした基礎的研究の蓄積により、料紙研究の方法論を確立することを目標とする。
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研究実績の概要 |
近年、料紙の研究が急速に進展し、文書料紙の分類や変遷に関する研究者間の共通認識が成立しつつある。しかし今後の研究の進展が望まれる料紙に、使用した紙を再び繊維の状態に戻して漉く「漉返紙(すきかえしがみ)」がある。 平安時代11世紀中頃に官営製紙所の図書寮紙屋院が、色紙を漉き返した繊維を用いた日本独自の技術である「漉きかけ」の料紙を創出したことに注目し、紙屋院の実態に迫る。これまでの紙屋院に関する研究をふまえ、繊維の再利用という観点から、文書・典籍料紙における漉返紙のあり方、製造技術および機能と変遷を明らかにする。こうした基礎的研究の蓄積により、料紙研究の方法論を確立することを目標とする。 本年度の前半は、神戸市立博物館所蔵の典籍、経典類を対象に調査を行い、紙漉き技術の変遷における中央と地方の関係に注目するにいたった。そこで紙屋院の変遷をふまえながら、いくつかの事例をもとに、着色繊維を用いた料紙装飾の技法の変化をとりあげた「紙屋院と料紙装飾」を学術雑誌『紫明』に発表した。年度の後半では、各時代の写経切(経典断簡)250点を収録した「大日本古写経」のすべての料紙について、材質、添加物、染色技法および繊維の再利用の有無を明らかにする調査を実施した。これらの写経切は台紙貼りで8つの箱にほぼ時代順に整理して収納されている。いずれも大蔵経データベースにて経名を明らかにし、800倍の顕微鏡画像をもとに詳細な情報を収集した。その成果は、令和5年度中に発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではこれまでの紙屋院に関する研究をふまえつつ、繊維の再利用という観点から、料紙の添加物としての米粉・白土や非繊維細胞の有無、繊維の状態などを確認し、その情報を共有化する。文書・典籍料紙における漉返紙のあり方、製作技術および機能と変遷を明らかにするという個別テーマの基礎的な研究の蓄積によって方法論を確立し、料紙研究の発展に寄与する。 令和4年度は、神戸市立博物館所蔵の典籍、経典類および、奈良、平安時代を中心に江戸時代におよぶ「大日本古写経」の写経切を対象にした。まとまった各時代の経典の料紙が、制作者や地域によって、どのような変遷をたどるかを、繊維のレベルで検討した成果を、今後の研究に生かしていくつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
平安時代11世紀中頃には、紙屋院において着色した繊維を漉きかける加飾料紙の発展をみたが、宿紙は薄墨色の漉返紙に変貌した。京都・醍醐寺で、紙屋紙の基準作にして最古の綸旨の正文とされる「後冷泉天皇綸旨」の紙質の分析などを通して料紙の情報の収集に努める。また、令和4年度に実施できなかった平安時代後期の色紙経で、様々な色の着色繊維を「漉きかけ」した2層漉きの色紙経である愛知・満性寺の「色紙阿弥陀経」、福岡・英彦山神宮の「仁王般若経」など、繊維を再利用した写経を対象に調査を行う。 中国では漉返紙を「還魂紙」と呼んでいるが、その技術や歴史に関する研究はみられない。これまでに中国との交流を示す墨蹟・漢籍の料紙や、韓国に由来する作品などを対象に調査を実施する。また、台北故宮博物院で新たに発見された宋時代の唐紙の調査を行い、中国における漉返紙の実態を明らかにする。なお、文書・典籍の料紙について、各種の料紙の関連性を考えながら調査を進める。
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