研究課題/領域番号 |
19K01024
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
青木 敦 青山学院大学, 文学部, 教授 (90272492)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 宋代 / 法制 / 特別法 / 勅令格式 / 神宗 / 慶元条法事類 / 法制史 / 文書令 / 天聖令 / 唐令 / 北宋 / 南宋 / 敕令格式 |
研究開始時の研究の概要 |
中国前近代法典のうち、明清の律例、唐律、北宋『天聖令』などは現存するものの、他の王朝の基本法典は多く逸してまった。だが唐令に関しては、1930年代に仁井田陞氏によって『唐令拾遺』が編纂され、その後の中国法制史研究に決定的な影響をもたらした。ところが宋代には他時代と比して非常に多くの法典が編纂されたにもかかわらず、全面的復元作業は現在に至るまで行われてこなかった。本研究では慶元を基準として敕・令を可能な限り条文として復元し、『宋代敕令拾遺』編纂の礎とする。
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研究実績の概要 |
2020年度より本格的に推進している宋代特別法整理の作業を進めた。その結果、『宋会要輯稿』をはじめ、様々な文集類、『玉海』、『通典』などの書誌類から相当のデータを見つけることが出来た。そしてこれらを可能な限り発布年月日、編纂者、正式法典名、巻(冊)数、内容について整理した結果、北宋について計400以上を発見することが出来た。無論これらは現存するデータによるものであり、さらに法典と称し得る、勅令格式以外のものもあるから、法典数や巻数、条文数からすれば、宋代を通じれば数万巻(北宋は数巻から吏部関係の3600巻など数千巻のものがあり北宋の敕令格式だけでも1万巻はゆうにこえると思われ、両宋では1万から2万の間であろうと予測される)、条文数は数十万(一巻あたり30-50条文あたりが平均である)である。さらにこれに普通法が加わる。これは、ローマ法典、フランス民法典(ナポレオン法典を含む)を始め、古今東西の法典のなかでも抜きんでた規模であり、それは現行日本六法(約800)をはるかに上回る。このように、法典体系としては、すくなくとも前近代では宋代法は世界最大級であることが発見できた。また、比較は難しいのであるが、判例を主としたイングランドのコモンロー体系(判例数としては2000前後と考える)よりも法源的には規模が大きい。イスラーム法(ムハンマドの言葉、過去のイスラーム法学者の解釈などより考えるべきだろう)との比較は未検討である。この発見は「北宋特別法の収集と整理」『青山学院大学文学部紀要』(64,2023)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の推進過程において、これまで明確になっていなかった特別法の世界を相当程度解明できたとともに、これに関して従来誤解が少なくなかったことを見出した。例えば徳永洋介「宋代の御筆手詔」は「崇寧在京通用令」として、前後指揮以降をも同令に含めてしまっている。氏は御筆手詔などと法令との整合性を強調するが、通用令はこの部分を含めてしまってはその議論が成立せず、元豊6の「覆奏法」についても誤解があった。また元豊8/4辛未の重要記事にも字句の引用誤り(上記覆奏法中の「請宝」)、崇寧法の範囲の誤り、令(政和令)と敕の混乱などが見られ、議論全体の信頼性が揺らいでいることを明らかにした。川村康氏は、その宋代例の研究において、宋代の司法例と刑事例を各所で混同しており、これが全体の論旨にも関係してくることが発見された。こうした従来の誤りを訂正しつつ、今後の研究を進めていくことの重要性が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
これらの北宋特別法の成果をもとに、 1.南宋特別法、2.敕令格式以外の「条格」「法」などの他の形式の法律、3.「例」について、研究を進める。ことに、北宋特別法の研究過程において、王安石新法が決定的な変化に関する役割を果たしていたことが明らかになった。また、これまでの研究過程でこの新法法制改革が、勅令格式以外の法典形式についても見られること、また例の編纂が神宗時代に大きく展開することが予測されたが、これらを証明する予定である。また従来の日本の研究においては、さまざまな不備が見られるため、こうしたことも訂正してゆく予定である。さらに、中国のこの分野での第一人者である趙晶教授とは、23年度後半に学会を開催することとなっている。
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