研究課題/領域番号 |
19K01027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 公益財団法人古代学協会 (2020-2022) 龍谷大学 (2019) |
研究代表者 |
飯田 祥子 公益財団法人古代学協会, その他部局等, 客員研究員 (30769211)
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研究分担者 |
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
鷲尾 祐子 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (60642345)
高村 武幸 明治大学, 文学部, 専任教授 (90571547)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 中国古代史 / 五一広場東漢簡牘 / 出土文字資料 / 後漢 / 行政文書 / 文字知識 / 竹簡 / 地方統治 / 長沙 / 上行文書 / 移住 / 冊書 / 臨湘県 / 『後漢書』 / 豪族 |
研究開始時の研究の概要 |
2010年に中国長沙市で出土した木簡を読解する。この木簡は後2世紀初に作成された行政文書であり、事件処理を担当する役所の廃棄文書であったと推測されている。このためこの木簡には2世紀初のある地域のさまざまな事件の断片を垣間見ることができる。個別の木簡に書かれている事例自体は特殊なものごとであるが、役所で作成された記録であることから、事件の処理には法律や政策が反映されていると考えられる。つまりこの木簡から2世紀初めの国家と地域社会の関わりを知ることができると考えられる。
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研究実績の概要 |
五一簡の統計的な検討を体系的に行うため、既発表史料データベースの精度を高めるべく、再整理を行った。里耶秦簡等との比較の上、機能分類を導入し、文書・簿籍等の大分類以下、5層に細分した。また釈文の修正情報や、簡のサイズ・材質等についても一括して管理できるようデータベースのフォーマットを再構築した。 輪読会はオンラインで月2回、安定的に開催し、第2層出土簡および第3層出土簡の一部(③71番台)まで読解した。第2層出土簡については「長沙五一廣場東漢簡牘譯注稿(七)(八)暫定版」としてHP五一広場東漢簡牘研究会に公開した。また研究協力者の研究報告会を開催し、『参』九二四簡を標題とする冊書を通読した。 研究課題である「在地社会」のありかたに関わる流動人口に関する専論「五一廣場東漢簡牘にみる後漢中期の人の移動と管理」(『東洋史研究』81-1、2022年)を刊行した。この論文を通して中央の政策と「在地社会」に対する地方官府の働きかけの関係を検討する必要が明らかになったので、「後漢中期の地方統治姿勢―五一広場東漢簡牘を手がかりとして」を執筆し、現在校正中である。 中央の地方統治政策や政治動向との関連を再検討すべく、代表者自身の既発表論文の見なおしを行い、『漢新時代の地域統治と政権交替』(汲古書院、2022年)を刊行した。 五一簡の理解には、隣接する地域から出土した走馬楼呉簡の知識を欠くことができないが、呉簡に関する論文集の書評「伊藤敏雄・関尾史郎編『後漢・魏晋簡牘の世界』」(『日本秦漢史研究』23、2022)を執筆する機会に恵まれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料公開の遅れにより、計画通りには進められない面があったものの、既存史料の精査によって予想外の成果を得た。総合的に判断すると、順調に進展している。 『長沙五一廣場東漢簡牘』7・8の刊行を期待していたが、依然として刊行が遅れ、史料群の公開は点数としてまだ半分にも至っていない。早期に刊行されることを期待する。 一方で、里耶秦簡の分類の成果を援用して、データベースの精度を高めることができたのは、想定外の大きな成果であった。既発表史料は統計的に処理することが可能になった。竹簡が多くを占め、素材・形状・用途・書体の間には有機的な関係が存在する可能性が明らかになった。その成果の一部は論文として執筆し、現在投稿済みである。 代表者はこれまで、文献史料をもとに前漢後半期以降の中央集権的国家体制のあり方に関する研究にとりくんできたが、単著として刊行することができた。それゆえ五一簡の行政文書についても中央・王朝中枢の政治姿勢との関係から捉えることが可能になった。今後、後漢時代の国家観・皇帝権の見なおしを行う見通しができた。 五一簡の輪読においては、主に第2層出土簡と第3層③71番台を読解した。断簡や草書の簡が多く、読解は困難であったが、書写材料と筆跡の関係について考察することができたのは、輪読会ゆえの成果である。
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今後の研究の推進方策 |
『長沙五一廣場東漢簡牘』7・8が早々に刊行されることを期待する。また近日走馬楼呉簡の竹木牘が刊行されるようである。これらの史料が公開されれば、尚徳街東漢簡・東牌楼東漢簡とあわせ、簡牘の時代から紙の出現期にかけて行政行政史料がみられるようになる。官府における書写の、素材・形状・用途・書体の間の有機的な関係に関する理解を深めることができる。 輪読会は継続して開催してゆく。講読予定の箇所は情報量の多い両行木簡が多く、在地社会や官府の組織に関する議論が深まることが期待できる。走馬楼呉簡等との関連を意識して読解をすすめる。 訳注稿の「確定版」を公開する。解題を附し、第1層・第2層の確定版を刊行する。第3層については、引きつづきHPで「暫定版」を公開してゆく。 五一簡の関連簡の情報を研究分担者・研究協力者とともに集成した。その成果を共有できるよう整理する必要がある。 中央・郡県官府・在地社会の関係を検討する材料の一つとして、官府内の属吏の組織を整理する方針である。
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