研究課題/領域番号 |
19K01034
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
畑守 泰子 愛媛大学, アジア古代産業考古学研究センター, 研究員 (40202402)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | エジプト古王国 / 墓壁画 / 家族像 / 女性の役割 / ジェンダー / 古代エジプト / 古王国時代 / 図像解釈 / 女性の地位 / 古王国 / 図像研究 / 家族制度 / 私人墓 / 女性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、エジプト古王国時代の私人墓(王族や官僚の墓)の壁画に登場する女性、特に墓主の妻たちに焦点を当て、彼女たちに期待された役割と社会的地位、およびそれらの変化について、図像と銘文の分析を通じて明らかにしようとするものである。墓壁画の女性像は現実そのままではなく、墓主である支配層男性の女性観や願望が顕在化したものと考えられる。本研究ではその特徴や変化を検証することにより、古王国時代の支配秩序の中で女性たちがどのように位置づけられていたのか明らかにするとともに、支配層の家族観や世界観、古王国社会の変化との関連について考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は、私人墓の壁画の図像と銘文の分析を通じて、エジプト古王国時代の女性たちに期待された役割とその変化について、古王国時代の社会や来世観の変化との関連の中で探ろうとするものである。 2023年度は9月に現地調査を実施し、主に中部エジプト地域とサッカラ地区の私人墓の調査を行った。この調査で得られた資料と、これまでの調査で得られた資料の分析を進め、墓主の所属する階層や時代、墓域によって、家族の図像描写に差異や変化が見られることや、首都近郊から地方へと家族図が波及する様子などを確認した。 11月には、エジプト考古学者、建築・古代家具研究者、および古代ギリシア史研究者を招聘し、公開学術シンポジウム「資料から見たジェンダー史研究の可能性」を開催した。このシンポジウムは、古代エジプトと古代地中海世界におけるジェンダー史研究の現状と多様な史料を用いた研究の可能性を提示したものである。申請者は「墓壁画に見る古代エジプトの家族と女性像」と題した報告で、墓壁画に登場する女性家族の種類や図像描写の特徴、およびその変化を示し、女性は専ら男性墓主に寄り添い、墓主の死後の復活に有用な理想的家族像の一部として表現されていること、その一方で男性家族は葬祭の担い手として活動的な姿で描写されたことを明らかにした。 また、収集した墓壁画資料の一部を用いて、論考「エジプト古王国時代の金属工房図」(愛媛大学「資料学」研究会『資料学の方法を探る』第23号)を発表した。本論文は墓壁画の職人たちの図像とそこに付加された銘文に焦点を当て、その描写の意味や目的を探ったものである。 23年度も、エジプト史やメソポタミア史、ギリシア・ローマ史、考古学などさまざまな分野の研究者とともに「古代ジェンダー史研究会」を定期的に開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度まで海外調査ができず研究に遅れが出ていたが、2023年度は9月に現地調査を行い、不足していた資料を入手することができた。これまで入手したものと併せて資料の分析・研究を進め、その研究成果の一部を11月の公開学術シンポジウムにて報告した。シンポジウムでの議論などを踏まえ、古王国時代の官僚層の家族や家庭の中で女性に期待された役割について総括を進めている。さらに、女性以外の男性家族や親族の図像と銘文についても資料の収集と分析を進めている。これにより、家族の中で男女に期待された役割の違いを明らかにし、古王国時代の家族像・家族観を解明するという今後の目標についても、一定の展望を得た。 また、研究の過程で得られた資料を基に、墓壁画の工房図に関する論文を発表したことで、墓主(官僚層/エリート層)とその家族だけではなく、職人など庶民層の生活や、支配層の来世観と庶民の役割ないし関係について、新たな研究の視点や研究の手がかりも得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の現地調査にて新たに得られた資料も含め、引き続き墓壁画・墓碑資料の分析を進め、墓壁画における女性家族の図像と銘文の特徴や変化などの全体像を把握する。古王国時代の社会の変化との照らし合わせも行っていく。その上で、今後の研究課題となる古王国時代の家族像・家族観の変遷、および家族像と来世観との関連の解明に向け、女性以外の男性家族や男性親族、家族以外の人物について、資料の収集・分析を進める。 研究成果の一部は学会での口頭報告、もしくは学会誌などへの投稿の形で発表する予定である。また、ジェンダー史研究会の定期的開催を続ける予定であり、引き続き本研究課題にとって有用かつ広範な情報を取り入れるとともに、方法論の精査等を進めていきたいと考えている。
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