研究課題/領域番号 |
19K01052
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
大月 康弘 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70223873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 皇帝 / ローマ / ビザンツ / フランク / イタリア / 教皇 / 帝国 / コンスタンティノープル / アーヘン / ヨーロッパ |
研究開始時の研究の概要 |
「キリスト教ローマ皇帝」理念と帝国経営の原理について研究する。長らくコンスタンティノープルにあって「世界」の平和に意を払う存在だった「皇帝」位は、8世紀末、西欧にカール大帝が登場したことで「分断」した。「世界の安寧」は事実上東西で分担的に担われたが、西方「皇帝」位の帰趨は極めてローカルな政治事情のなかに置かれた。本研究は、西方での政治権力分裂局面(840-962年) を観察の基本枠組として、東西世界間の政治・外交交渉を分析し、そこで議論された「ローマ皇帝」像を分析する。また、ビザンツ国内での皇帝存在のあり方を社会経済構造の中で再定位し、西欧皇帝との機能的・理念的異同を検討する。
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研究実績の概要 |
9ー10世紀のヨーロッパ・キリスト教世界における「皇帝」称号をめぐる東西交渉に関する情報の整理・分析を継続した。2022年度もコロナ禍のため現地調査を断念した。その結果、以下の項目における史料分析に特化した。(1)西欧世界、特にイタリアから南フランスにかけての地域事情。(2)同地域がフランク王国、ビザンツ帝国双方に与えたインパクト。この観察枠組みのもと、(3)南フランスから北イタリア地域の権力者たちが、ローマ皇帝権とどう切り結ぼうとしたか。以上の観点を中心に作業を進めた。ローカルな歴史展開を追跡しながら、コンスタンティノープル(ビザンツ帝国宮廷)とアーヘン(フランク王国宮廷)の外交交渉のなかに、同地域の動静を定位することを試みた。その結果、オットー1世のイタリア遠征は、南フランス事情を含んで複雑な政治構造のなかで理解されなければならないことを認識した。西欧での政治事情、及び残された記録の粒度に対し、ビザンツ帝国関係者の反応が希薄であるのが際立った。史料所言の分析とともに、記述の粒度の差異についての考察を進めた。 なお、(4)リウトプランド『オットー史』Historia Ottonis のラテン語テキストについては日本語訳を完了しているものの、上記のような複雑な政治関係を反映させた注記の作成に手間取っている。テキストそのものにもクセが強く、潜在する政治的バイアスの検討にも時間が必要と認識された。他方、関連する諸テキストに見られる「ローマ皇帝」称号、および「ローマ」という一般的呼称の含意に関する検討は深まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引き続き、史料テキストの分析に注力しながら、(1)リウトプランド『オットー史』Historia Ottonis のラテン語テキストの日本語訳に磨きをかけつつ、注記の充実化に努めたい。他方、(2)ギリシア語(ビザンツ側史料)とラテン語(フランク、ローマ教皇ほかイタリア諸勢力側の史料)での「皇帝」含意の比較考量を進め、「ローマ皇帝」理念、「ローマ」呼称の含意の抽出に努め、分析結果を取り纏める。
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今後の研究の推進方策 |
できれば現地調査を行い、地理情報をも加味した成果発信を行いたい。南フランス・北イタリア地域事情の事実紹介を含む論文、また刊本の出版に向けた努力をしていくが、上記(1)のリウトプランド『オットー史』の日本語訳と解説は、できるだけ早い時期に公表したい。可能であれば、ヨーロッパ(フランスor/andギリシア)に出張を行い、資料収集を兼ねて現地の同学者との交流を設定したいものの、現在の勤務先での学務との調整が難しいかもしれない。いずれにせよ、適切かつ柔軟に対処できるよう研究を進める。関連史料テキストの分析を取りまとめ、論文および刊本での成果発信準備を進める。
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