研究課題/領域番号 |
19K01058
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
田中 佳 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (70586312)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | ルーヴル美術館 / 美術政策 / フランス革命 / 地方 / 地方美術館 / パリと地方 / 文化財 / 文化政策 / ヴェルサイユ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、パリのルーヴル美術館の整備と革命戦争による美術品接収に伴って実施された、パリと地方間の美術品の移動の諸相を把握する。具体的には、パリに集められた美術品とルーヴル美術館の展示品、1797年にヴェルサイユ創設されるフランス派専門美術館とパリの関係、および1801年のシャプタル令により創設が決定された15の地方美術館への美術品の送付と現地での受け入れに注目する。フランス国立古文書館等が所蔵するパリ側の一次史料と、各地の美術館が所蔵する作品、作品資料、各地の文書館が所蔵する史料を調査し、文書史料と作品の両面から、パリと地方間の美術品の分配・寄託・供出の実態を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本年度も夏季休業中に予定していたフランス等の文書館や図書館、美術館での調査旅行は実施できなかった。しかし年度末に短期間ではあったがようやく渡仏することが叶い、パリの国立美術史研究所図書館、国立文書館、ルーヴル美術館資料室における文献調査を行うことができた。これにより手持ちの先行研究の中で明らかになった一次史料の確認や、新たな作品の同定作業のための各美術館の所蔵品カタログを中心とする作品資料調査、およびルーヴル美術館所蔵作品の実見調査と写真撮影を行った。 この中で1793年8月10日以降のパリとその他の美術館との美術品のやり取りの諸相の概要が明らかになるとともに、ヴェルサイユとパリの主従関係や、ルアンやブリュッセル、トゥルーズのような中央からの送付作品に対して不満を表した都市の例を具体的に把握することができた。 本来であれば、共和国中央美術館とヴェルサイユのフランス派専門美術館の展示作品、そして地方に送付された絵画と、すべての絵画を同定したうえでの調査を行いたいところであったが、それぞれのカタログやリストにおける記載が十分ではないため確定できないものがあまりに多く、中断している。これまでの研究から作品の同定により得られる作品情報から明らかになる問題点も多くあることが分かっているため、この点をどう解決していくか考えていきたい。 とはいえ、部分的な作品情報を整理しただけでも中央に最良の作品、名声の高い巨匠の作品を収蔵し、その他の場所には中央には不要な作品(superflu)を分配するという構図は明らかであり、革命の成果としての戦利品を含む美術品への平等なアクセスを地方に保証しつつ、その内容や質は不平等としか言いようのないものとなっていることが解明された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の主眼は1801年のシャプタル令をきっかけに設立されたフランスおよび占領地域の地方美術館と地方文書館において、中央から送付された美術品の資料および実見調査を行うことにあるが、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、本年度も本格的な調査旅行を組み込むことができなかった。しかし年度末に何とかパリでの調査は行うことができたため、一部の史料や作品に関する二次文献の調査により、必要な情報を部分的に補完することができた。その中でより調査を深めるべき対象を絞ることもできたため、来年度の研究につながる成果を得ることができた。来年度は調査旅行を実施できると思われるが、残りの研究期間で当初予定していた15都市すべての調査を実現することはきわめて難しい状況にある。どの都市を優先的に調査するかを見極めつつ、可能な限り研究課題の解明につなげていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の文献調査等により、当初計画していた研究対象15都市のうちでより調査を深めるべき場所や興味深い史料がある場所の見当をつけることができた。このため、当初計画したすべての都市の調査は難しい状況だが、中央との関係がよりはっきりと表れているいくつかの都市に絞って調査旅行を組み込むことで、研究課題の解明につなげていきたい。現在のところ、ヴェルサイユ、トゥルーズ、ブリュッセル、リヨン等が対象候補となっているが、物価高騰等の影響もあり、実際に訪問可能な期間と場所の選定は慎重に検討していく。 これらの都市につき、まずは中央からの送付および中央への供出となった作品の情報をまとめたうえで現地に赴き、作品の実見調査と写真撮影を行う。また現在の美術館における当該作品の扱われ方にも注目したい。さらに各地の地方文書館に残る当時の中央とのやり取りに係る文書の調査を進める。 複数の都市についての調査をまとめ、最終的に共和国美術館設立以降の中央と地方の美術品の移動のイメージをまとめていきたい。移動の方法や数、時期等、モノとしての移動の実態について明らかにしたうえで、これに伴う中央と地方の文書のやり取りとその内容を分析していく。 また来年度にはすでに学会での研究発表の依頼があるため、これまでの研究成果を公開し、他の研究者からの意見を聞くことによって分析を洗練させ、学術論文執筆を進めていきたい。
|