研究課題/領域番号 |
19K01066
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
西村 善矢 名城大学, 人間学部, 教授 (30402382)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | ナポリ / 領主制 / 農地契約文書 / 菜園 / 社会的紐帯 / アマルフィ / 商業 / 栗 / ランゴバルド期 / ノルマン期 / 文書利用 / モンテヴェルジネ修道院 / 中世ヨーロッパ / 史料論 / 文書実践 / 領主・農民関係 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、10・11世紀南イタリアはカンパニア地方の農地契約文書を主な素材に、文書形式や記載内容の検討を通して、契約当事者間の契約内容をめぐる交渉の痕跡をテクスト内外からあぶり出し、文書の生成プロセスをはじめ、領主・農民双方を担い手とする文書実践の諸側面を明らかにすることを目的とする。カンパニア地方にはビザンツ的伝統の強い地域とランゴバルド的伝統を有する地域が混在する。それゆえ、法的伝統や政治的枠組みが文書の生成・利用のあり方に生み出すであろう差異についても検証する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、イタリア南部カンパニア地方の農地契約文書を対象に、文書形式と契約内容の分析を通して、当事者双方の文書実践の諸側面を明らかにすることを目的としている。2023年度はビザンツ的伝統のもとにあるナポリ地方について、ナポリ公国時代(10世紀-1139年)の農地契約文書約130点を対象として、予備的考察を行った。そこから、ナポリ地方の独自性とともに、かつてナポリの管轄下にあったアマルフィ地方のみならず、ランゴバルド的伝統のもとにあるサレルノ地方との共通性が浮かび上がってきた。
まずナポリ地方に独自な点として、文書が伝来しはじめる10世紀の時点ですでに農村開発が相当程度進んでいたこと、葡萄収穫などの繁忙期に所有者と借地人が共同で賃労働者を雇用する例が頻出すること、そして11世紀半ばから領主が菜園に投資する例が増加する点が挙げられる。一方、政治的境界を超えて契約項目・内容の共通化が11世紀に進行した点も見逃せない。たとえば、葡萄の植樹完了後に契約解除を可能とする退去規定の増加、農民負担の厳密化や農民労働への所有者の介入強化などである。
なお、中世初期イタリアにおける菜園経営に関するカロリーヌ・グッドソンの著書「"Cultivating the City in Early Medieval Italy"(中世初期イタリアにおいて都市で耕作すること)」 について、書評(新刊紹介)を発表した。市壁内の菜園や果樹園が都市社会で果たした役割について検討したこの著書で、グッドソンは市内菜園に満ちたナポリなどの都市に関わる史料と考古資料を往還しつつ、菜園をめぐる生産関係や生産物の再分配が家をはじめとする社会的紐帯を創出・強化する役割を果たした点を論証しているが、これは筆者の研究テーマにとっても重要な点である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度はナポリ文書に関する分析を実施する予定であったが、予備的考察の段階にとどまった。この作業を行うには、中世初期ナポリの社会経済史に関わる研究史を整理する必要があったからである。 なお、2023年度にはコロナ禍も落ち着いたことから、イタリア人研究者を招聘することも可能な状況となったが、先方の事情もあり、講演会を次年度に持ち越した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度には、ナポリ公国を対象とする農地契約文書を読み込み、領主・農民双方の文書実践や領主制のあり方を解明するとともに、アマルフィ公国やサレルノ侯国など、カンパニア地方の他地域の事例と比較検討し、カンパニア地方における領主・農民による文書実践の諸側面を解明したい。
最終年度はイタリアから研究者を招聘して、講演会(研究会)を組織する予定である。
|