研究課題/領域番号 |
19K01087
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
古山 夕城 明治大学, 文学部, 専任准教授 (10339567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ギリシア / クレタ / 法 / 金石文 / アルカイック / ドレーロス / 社会化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はアルカイック期クレタのポリスにおける法の社会化を金石文の象徴性に注目して解明する試みである。金石文に刻まれた古代の法が、当時の歴史的環境の中でどのような形態と形式と形質を持って存在していたのかを、現存する実際の金石文の観察とそれらが置かれていた現場状況の復元によってアプローチする。 そして、金石文に文字化された法は聖所での奉納時に読み上げられることで初めて現象化するという本来的特質に注目し、その儀礼的行為の「身体性」が法を感覚的・体験的・集団的に内面化する重要な意味を持つという見通しのもと、アルカイック期クレタのポリスを研究フィールドに措定して、法存在の象徴性と実体化を歴史的に考察する。
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研究実績の概要 |
本研究の2022年度は、当初の計画では研究の最終段階として、アルカイック期クレタにおける諸ポリスの公的碑文である金石文史料を形態・形式・形質に着目した比較考察を踏まえて、クレタに特徴的な歴史状況を法の社会化の観点から解明し、それをギリシア古代史におけるポリスの多様性のなかに位置づける研究の綜合化へと進んでいくはずであった。 しかし、2020年度初から2022年度夏期までの新型コロナウィルスの感染拡大により、実地検分をともなう現地調査が事実上ほとんど実行不可能になった状況の下では、英国ロンドンの大英博物館における「スペンシティオス規定」記載の青銅製武具ミトラ碑文の実測調査については、ようやく2022年秋に実施を実現できたものの、その他のクレタ金石文史料については、今年度も引き続き刊行資料と公開データの利用のみにもとづく考察にとどめざるを得なかった。 しかしながら、クレタの小邑ポリスであるドレーロスに関し、同地出土のギリシア最古の法碑文のテキスト分析と、その地域の考古学的な領域調査の成果を対照させることによって、当該法碑文の出現状況と中心市街地を欠くポリスの存在状況を歴史的に再構成する論考を試みた。その試論を研究成果の一部として『駿台史学』第177号の誌上に発表し、この金石文の検討を通じて、本研究の主要な目標の一つである、クレタにおけるもう一つのポリス・モデルを提示することにまで、考察の射程を延ばすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大による過年の渡航規制は、2022年度途中より徐々に緩和されたが、十分な余裕をもって現地調査の計画を立てることは困難なままで、ロンドンの大英博物館での短期の実測調査は行えたものの、本研究のもっとも重要なアプローチ方法であったギリシアのクレタ島における現地調査・実地踏査については、断念せざるを得なかった。 そのため、本研究は「スペンシティオス規定」と「ドレーロス碑文」の考察と歴史状況の解析には大きな進展があったが、その他のポリスの法碑文について形態・形式・形質の実地検分を果たせない現状では、テキストのみに依存する従来の研究を批判的に再検討する作業に進むには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を大幅に変更・修正した結果、研究期間を1年間延長して、クレタ現地調査を2023年度に持ち越すことにした。そして研究の工程を見直し、無理に綜合化を急ぐことなく、現段階で可能な次年度の目標として、考察のフィールドをクレタ東部地域のいくつかポリス(リュクトス、ラト、アルカデスなど)に定め、その地域におけるポリス内部の多様な文化要素と法の社会化の関わりを検証し、クレタにおけるポリス形成の歴史的状況についても多様で具体的な知見を蓄積していくことにしたい。
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