研究課題/領域番号 |
19K01119
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
|
研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
上野 淳也 別府大学, 文学部, 教授 (10550494)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 青銅製後装砲(仏狼機砲) / 南蛮交易 / アユタヤ朝 / ポスト=アンコール期 / 仏教 / ドゥマク王国 / バンテン王国 / パジャジャラン王国 / 青銅製後装砲(佛朗機砲) / イスラム教 / ヒンドゥ教 / 蛍光X線分析 / 亜鉛 / 真鍮明銭 / 倭寇 / ポルトガル / 大砲伝来 / 佛朗機砲(仏狼機砲) / 倭寇貿易 / 蛍光X線分析(金属組成) / 鉛同位体比(金属材料の産地推定) / インドネシア共和国 / オスマン・トルコ / 大航海時代 / 東南アジア / 蛍光X線分析(金属組成) / 鉛同位体比分析(産地同定) / 大友宗麟 / 戦国時代 / 大砲 / イスラム文化 / 大航海時代 age of commerce / 軍事革命 military revolution |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は、戦国時代の日本への大砲伝来という出来事の研究を通して、大友宗麟に始まる青銅製大砲の国産化の技術が、豊臣・徳川両氏とそれらの家臣達へ流出した事を明らかにした。 しかし、これまでは大友宗麟がキリシタン大名であったことから、ポルトガル勢力からの大砲及び鋳造技術の伝播が語られてきたが、国産の大砲には、その伝来過程におけるイスラム文化の影響が色濃く見られることが指摘できるようになってきた。 本研究では大砲伝来という事件を、大砲の「紋様・形」を「型式学的方法」で、「金属組成」を「蛍光X線分析」で、「金属産地」を「鉛同位体比分析」で読み解き科学的根拠を持って歴史的脈絡の中に位置づけてゆく。
|
研究実績の概要 |
令和4年度は、コロナ禍が明け国外調査が可能となったため、タイとカンボジアへの調査を実施した。タイでは、8月上旬に調査を実施した。まずタイ中北部でミャンマーとの国境に繋がる城塞都市カムペンペットの国立博物館を訪問した。博物館へは、事前に連絡を取りベンジャワン・ジャンタラック学芸員に対応して頂き、青銅製後装砲1門の実測図作成及び写真撮影調査を実施した。担当学芸員とは、今後、タイ国立研究評議会(NRCT)を通して、金属サンプルの採取を模索することを話し合った。次にタイ南部パタヤ沖のラン島の寺院ワット=マイサムラーンが所蔵している青銅製後装砲一門の実測図作成及び写真撮影調査を僧侶の許可を得て実施した。カンボジアでは、9月にプノンペンの国立博物館で調査を実施した。館が所蔵する青銅製後装砲3門中2門の実測図作成及び写真撮影調査を実施した。 これらの調査において、タイ及びカンボジアの青銅製大砲に、大友宗麟が日本国内で鋳造させた大砲に見られる紋様が後装部で確認できた。この紋様は、タイで仏像や寺院の側柱のレリーフに類似するもので、半蓮華紋(Lotus half-petal)或いはガジュマル葉紋(banyan-leaf)とされるものである。一方で、日本では"更紗"と呼称される東南アジアの綿織物であるバティックに見られる筍(タンパル)紋・鋸歯紋(Tumpal /The Pucuk Rebung)が砲身部で確認できた。筍紋は、バティック研究において、マレーシアやインドネシア、そしてカンボジア及びベトナム南部のチャム人の織るバティック、即ちイスラム圏でおられるバティックに特徴的に見られることが分かっている。 これら紋様研究から判明しつつあるのは、日本に伝わった大砲のルーツとしては、「ヒンドゥー文化を基層とする仏教圏」と「ヒンドゥー文化を基層とするイスラム教圏」の2つが想定されるという事実である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の東南アジア島嶼部インドネシア東部での調査から、3年間のコロナ禍を経て今年度は東南アジア大陸部のタイとカンボジアの現地調査を実施することができた。予定していたインドネシア西部への調査は、航空燃料の高騰などで実施できなかった。しかし、インドネシア西部に関しては、若干の調査の積み上げができていたので、東南アジア島嶼部における16世紀から17世紀にかけての青銅製後装砲の導入・受容状況は大まかに把握することができた。 また、コロナ禍前の調査と今年度調査で、大友宗麟が日本国内で鋳造させた仏狼機砲の紋様と、東南アジア大陸部及び島嶼部に伝わる大砲の紋様に多くの共通点及び相違点を見出すことができた。 16世紀後半、ポルトガル勢力から、他の戦国大名に先駆けて大砲を入手したのは大友宗麟である。また、大友家家臣の渡辺宗覚という石火矢鋳物師は、外国へ渡り、その使用法と鋳造法を学んだ事が伝わっている。今年度の調査は、この宗覚が、何処へ渡り、何処で学んだのか、そして何処の大砲を持ち帰ったのかを考える際には、とても重要な成果が上がった。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題研究は、コロナ禍の影響で1年延長した。令和5年度は、報告書を作成して終了する予定である。 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などに伴う航空燃料費の高騰などで予定していたインドネシア西部への調査は断念せざるを得なかったが、次期応募の科研費につなげて行きたい。
|