研究課題/領域番号 |
19K01126
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田端 正明 佐賀大学, 理工学部, 客員研究員 (40039285)
|
研究分担者 |
西本 潤 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (80253582)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 磁器 / 産地推定 / 三重津海軍所跡 / 有田 / 波佐見 / 志田 / 水簸 / 出土磁器 / 胎土組成 / 元素移動 / シンクロトロン / 蛍光X線分析 / 有田焼 / 古陶磁器 |
研究開始時の研究の概要 |
遺跡から出土した磁器の胎土組成をシンクロトロン光施設で非破壊・局所分析により求め磁器の製造工程で欠かせない水簸(すいひ)における元素移動に着目して解析し、磁器の生産地を推定する。水簸は陶石から陶土を作るための多段階の分離・精製工程であり、陶石に含まれる元素は溶解度差によって分離される。従って、磁器の胎土中の難溶性元素と可溶性元素濃度比は生産地特有の値となるので、生産地不明の磁器の組成比と生産地が明かな磁器と比較して、生産地不明の磁器の生産地を決定する。本法を世界文化遺産の三重津海軍所跡(佐賀市)から出土した磁器に適用し産地を推定する。更に、肥前地域の出土磁器の詳細な産地を推定する。
|
研究実績の概要 |
三重津海軍所跡(佐賀県佐賀市、世界遺産登録2015年)から300点以上の磁器が出土した。しかし、磁器の生産地は不明であるので、生産地を推定するために磁器の胎土組成をシンクロトロン光蛍光X線分析法で決定した。そして、分析結果を磁器の製造工程で欠かせない水簸工程での元素移動の違いに着目して、磁器の生産地を推定した。水簸工程では、水に溶けやすいアルカリ元素は水とともに流れ、水に溶けにくい元素はコロイド状の泥漿(陶土)とともに移動し、磁器の胎土中に混入する。従って、水に最難溶性の元素(Nb)を基準に難溶生元素(Zr)と可溶性元素(Rb)の濃度比から、生産地を推定した。三重津海軍所跡から出土した磁器は3つのグループに分かれた。それらの生産地は有田(佐賀県西松浦郡)および有田から5~20 kmの近郊の志田(佐賀県嬉野市)と波佐見(長崎県))であった。産地不明の磁器を磁器の製造工程における水簸工程での元素移動にもとづいて解析・分析した例は本研究が最初である。今まで、推定される原料(陶石)の組成と磁器の胎土組成の比較から磁器の生産地が推定されていたが、その手法では不十分であることが判明した。我々の手法を有田焼きが始まった1600年代初期に出土した磁器に応用した。その結果、幕末期(1800年代)に有田で生産された磁器の胎土組成比のプロットとほぼ同じであった。即ち、本法は出土時期が200年も違う磁器についても同一地域の磁器の生産地を推定できることが明らかになった。また、生産地以外(佐賀市)の武士の居住地から出土したオランダ東インド会社(VOC)の銘がある磁器の産地を本法で推定したところ、全て有田で生産されたことが明らかになった。このように本手法による産地推定は広く適用できるようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・本手法を用いて、三重津海軍所跡から出土した磁器の産地を推定することができた。有田から5~20kmしか離れていない生産地の磁器を区別できた。さらに、三重津海軍所跡の磁器よりも200年前に生産された有田近郊の窯元の生産地を本法で確認できた。 ・生産地以外の武士の居住地跡や民家で出土したオランダ東インド会社(VOC)の銘がある磁器は全て有田で生産されたことを明らかした。 ・中国の景徳鎮陶磁大学で300人以上の学生・研究者の前で本研究の成果について招待講演 を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
・2024年度は有田町近郊の磁器生産地(例え ば佐世保市三川内町)の幕末期の磁器の胎土組成を求め、本法の適用性を確認する。 ・現在の水簸工程における元素移動を調べるために、陶石から陶土を製作し近郊の窯元に 販売している陶土生産工場で、各工程で試料を採取し、工程ごとの元素移動を調べる。 ・コロナ禍で海外渡航が制限されていたので、2024年度は海外での国際会議で発表する。
|