研究課題/領域番号 |
19K01164
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
船引 彩子 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 講師 (30645487)
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研究分担者 |
久保 純子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90275967)
米澤 剛 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90402825)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ホイアン / チャーキュウ遺跡 / オケオ遺跡 / 河川堆積物 / インドシナ半島 / 完新世 / デルタ / チャ―キュウ遺跡 / 河川 / ベトナム / 遺跡 / 河川地形 |
研究開始時の研究の概要 |
インドシナ半島東部に位置するデルタ平野において、長期的な気候変動と河道変遷に対応した人々の居住空間の変遷を、ボーリング掘削や歴史資料によって明らかにする。特にこれまで詳細なボーリングコア分析が行われていないベトナム中部の河川地形や、遺跡立地と地形の関係が十分に議論されていない北部の紅河、南部のメコン川の形成する地形に注目し、古地図やボーリング調査、遺跡データや空中写真、衛星写真などから過去に巨大洪水が発生した時期や場所、河道変遷の形跡を探り、インドシナ半島の各地における長期的な環境変動に対する人間活動の応答について、地形学の視点から比較・検討する。
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研究実績の概要 |
令和6年度には現地調査を行い、関係諸機関と今後の研究について議論を進めた。その具体的内容、意義、重要性は以下の通りである。 (1)研究代表者・船引と分担者・久保はベトナム南部ニョンタイン遺跡の発掘調査に参加し、花粉・珪藻分析や年代測定用の試料を採取することができた。 これまで調査を行ってきたベトナム南部のオケオ遺跡は1世紀から7世紀にかけてメコンデルタ(現在のカンボジア、ベトナム南部)から東北タイ南部にかけて栄えた古代国家、扶南国の港市である。また、今年度調査に参加したニョンタイン遺跡はオケオ遺跡よりも北側のメコン川下流部に位置しており、運河跡も多く確認されている。当該地での調査は、オケオ周辺の堆積環境のみならず、メコンデルタの形成史に関する研究を大きく前進させる資料である。 (2)研究代表者・船引と分担者・久保はベトナム中部のミーソン遺跡等をサーフィン文化・チャンパ博物館と東京理科大学との共同研究として、トゥーボン川流域のチャーキュウ遺跡周辺、ホイアン周辺でボーリング調査を行った。チャーキュウ遺跡はミーソン遺跡の外港であった可能性があり、今回の調査によって、河道変遷と国家の衰亡の関係を明らかにできる可能性がある。 (3)研究分担者・米澤はベトナムの昨年度天然資源環境省(MONRE)が測量した標高点が含まれるサンプル地図をインターネット上の公式サイトCenter of Survey and Mapping Dataで購入し、分析を進めた。この成果は2023年11月にHa Noi University of Natural Resources and Environment(ベトナム・ハノイ市)で開催された国際シンポジウムGIS-IDEAS2023で発表をおこない、高い評価を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)研究代表者・船引はアンザン省オケオ遺跡での花粉、珪藻分析結果について、ベトナム考古学院のNguyen Thi Mai Huong博士、ハノイ国家大学のNguyen Thi Thu Cuc博士と論文を執筆中であり、令和6年度中のベトナム国内での国際誌への投稿を目指している。 (2)ベトナム南部Nhon Thanh遺跡の発掘調査では、メコンデルタの形成と遺跡立地の関係を明らかにするための花粉・珪藻分析や年代測定用の試料を採取することができた。帰国後、これらの試料の分析を進めており、年代測定の分析依頼も進めている。現地では、南部社会科学院のNguyen Bach Giang Linh研究員が遺物の整理を進めており、周辺の環境変化と人の居住の関係を今後明らかにできると考えられる。 (3)ベトナム中部クァンナム省ホイアン周辺およびチャーキュウ遺跡周辺はトゥーボン川の下流域にあたる。2地点でボーリング調査を行い、下流部のホイアン周辺地点ではデルタ性の堆積物が見られたが、既往研究で得られている沿岸部のコアよりも砂質の堆積物が多いことが分かった。 より上流部のチャーキュウ遺跡周辺では特に旧河道の地点を習って掘削を行った。これは、チャーキュウ遺跡がミーソン遺跡の外港であった可能性があり、その際の旧河道のチャネル堆積物と、その川底の年代測定を狙ったものであったが、淘汰の悪い粗粒砂が続き、予定していた深度までは到達しなかった。 (4)研究分担者・米澤はハノイ市中心部の1:2、000地形図(2017年発行)に掲載されている標高情報約26、000点を用いて、地形面の推定プログラムにより最適な地形面の推定をおこなった。そこからDEM(デジタル標高モデル)を作成し、GIS(地理情報システムデータ)として出力した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の方向性について、以下のように考えている。 (1)トゥーボン川流域のチャーキュウ遺跡周辺において、ボーリング掘削で得られた試料を分析し、その結果を学会発表や論文投稿の形で公表していく。 (2)上記の結果やオケオ遺跡での調査結果について、論文化を急ぐ。 (3)研究代表者・船引はベトナム中部のフエで砂丘地帯に位置するMy Khanh遺跡で昨年採取したサンプルを日本国内で年代測定を行い、有益なデータを得た。フエ科学大学のNguyen Van Quang博士と共同研究を進め、今後の研究につなげていきたい。 (4)研究分担者・米澤の開発する地形面の推定プログラム作成手法は、本研究課題が対象とする遺跡の分布地域でも応用可能であると考える。ベトナムの天然資源環境省(MONRE)の地図資料販売サイトでの資料購入を検討しており、地形面のより詳細な把握を検討する。
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