研究課題/領域番号 |
19K01190
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
石井 久生 共立女子大学, 国際学部, 教授 (70272127)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | バスク地方 / バスク・ディアスポラ / バスク・ナショナリズム / 政治地理学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,ヨーロッパのバスク地方と新大陸のバスク・ディアスポラにおいて展開されるバスク・ナショナリズムに着目し,すべての地域で共有される共通項と,各地域における地理的差異を明らかにしたうえで,1980年代の移民収束とグローバル化進行という重大な転換と並行して故地バスク地方で進行した民族的ナショナリズムから静かなナショナリズムへのシフトの具体像を解明し,故地の変化に対応して新大陸各地のディアスポラのナショナリズムがどう対応したかを,政治地理学的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題は,当初計画した研究期間が昨年度までであったところ,コロナ禍の影響により開始初年度から海外現地調査が思うように進まなかったため,研究期間を延長した。延長1年目の今年度は,9月にスペイン・フランス国境のバスク地方,11月にアルゼンチンのブエノスアイレスにおいて現地調査を実施した。さらに,12月にスペイン・ドゥランゴ市において開催されたドゥランゴ・ブックフェアDurangoko Azokaにおいて,Durangoko Azoka geografo japoniar baten ikuspuntutik(日本人地理学者の視点からみたドゥランゴ・ブックフェア)のタイトルで,これまでの研究成果を発表した。その内容は現地のテレビや新聞等において報道された。ここまでで明らかになってきたことを簡潔にまとめると次のようになる。19世紀末のスペイン中央政府によるバスクの地方特権(フエロス)完全撤廃後,バスク地方では自治権の回復を求めるナショナリズム運動が活発化し,同じころに海外へ移住したバスク人の間にもその運動が伝播し,ブエノスアイレスなどのバスク・ディアスポラにおいて故地のナショナリズムを支援する運動が活発化した。その後ナショナリズム運動は過激化し,分離独立の主張も強まったが,1970年代のフランコ総統の没後,スペイン中央政府が地方自治に寛容な態度をとるようになったことで,バスクのナショナリズム運動は穏健な文化復興運動へと転換した。1960年代に始まったドゥランゴ・ブックフェアは,文化的活動を前面に出しながらも,バスク・ナショナリズム運動的性格を内に秘めていたが,後にバスク文化の再活性化運動的性格を強めていった。さらに同フェアの進める活動は,未来志向性や他者への寛容性などの性格を強め,バスク人が進める静かなナショナリズムの目指すところを代表するものへと進化していった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記概要で説明した通り,本研究課題はバスク地方のナショナリズム研究で一定の成果を上げているものの,ディアスポラにおけるナショナリズム研究は遅れている。その原因は,コロナ禍後の航空運賃の高騰による予算不足にある。11月にブエノスアイレスにおいて短期間の予備的調査を実施して,ブエノスアイレスにおけるバスク人コミュニティの代表的組織や中心となる人物,それらの活動の歴史などの基本的情報は入手することができた。そうした内容を受けて,2月にブエノスアイレスとモンテビデオ(ウルグアイ)でディアスポラ・ナショナリズムの本格的調査を実施する計画であったが,予算不足で実施できなかった。中南米便やヨーロッパ便の航空運賃はコロナ禍前の2倍以上に高騰しており,当初計画した予算では現地調査が半分程度しかできないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
こうした予算不足の状況を受けて,模索中の今後の方針は次の2点である。 まず1つめは,科研費以外の研究費と抱き合わせで研究計画を推進することである。本務校の教員研究費は,研究計画に取り込む第一候補である。それだけでは不足するため,他組織が提供する研究資金に現在応募中である。それらの資金をもとに,ディアスポラにおける本格的現地調査を実施する計画である。 2つめは,インターネットを活用しての情報収集である。コロナ禍を経験するなかで,日本国内のインターネットを介しての情報交換は格段に進歩したが,これはアルゼンチンやウルグアイも同様であり,かつてに比べ情報交換を格段にしやすくなっている。さらに現地の情報アーカイブの整備状況の改善も目覚ましく,従来は入手困難だった情報もネット経由で収集可能である。Zoomなどの普及はインタビュー調査の遠隔実施も可能にした。こうした情報源やツールを利用し,予備調査で確立した人脈を頼りに,研究遂行に必要な情報を蓄積して,研究成果を求める計画である。
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