研究課題/領域番号 |
19K01203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
綾部 真雄 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40307111)
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研究分担者 |
白川 千尋 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (60319994)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | タイ / 先住民 / リス / セキュリティ / 文化振興 / ポリティクス / アクションリサーチ / 儀礼 / エスニシティ / 最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、特定のエスニック集団が、自らのセキュリティを能動的かつ創発的に確保していく上での文化的スキルおよびその反映としての社会的平衡にまつわり、文化人類学的観点からの現地調査と考察を行う。特に、タイ北部山地を割拠する先住民諸集団、なかでもリスの人々を対象とし、かれらの文化的スキルの多角的な析出を試みる。その際、村落=プラットフォーム論の立場から、自然村が行政的な型にはめ直されたような村落を調査地として選定し、天然資源利用をめぐる行政機関との軋轢や衝突、特定の疾病や感染症といったリスクや脅威に対応するための在地的・文化的なスキルが、いかなるプロセスを経て「最適化」していくかについて考察する。
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研究実績の概要 |
タイにおける現地調査に先立ち、研究分担者の白川千尋氏(大阪大学)とオンラインおよび対面で2度の打ち合わせ(6月および8月)を実施した。2022年8月29日から2022年9月9日までチェンマイ県およびメーホンソン県で研究分担者と共同で「エスニック・セキュリティの最適化」の観点からの多角的な調査を実施した。主調査地はメーホンソン県パーイ郡のSG村である。同村での調査に際しては、調査助手であり行政村(タンボン行政機構)の委員でもあるS氏および村長のN氏の全面的な協力を得た。9月3日には研究代表者が設立に関わったリス文化振興センターに村民を集めて文化振興にまつわる意見交換会を行うと同時に、並行して招魂儀礼(ツォハクワ)を主催者として実施し、村人を集めての饗宴の機会を持ち一部始終を記録した。 また、9月4日にはSG村と深い関係にある近隣のDP村の保健所(地域で唯一の保健所)を訪れ、職員から感染症等の現状や村民の疾病観についての聞き取りを行い、その後さらに山頂のNP村に移動して村民から各種儀礼の執行状況(=文化的セキュリティ)や感染症にまつわるインタビューを実施してもいる。 この他、タイ滞在中にタイ山地民研究所元所長のP氏(タイ人)、女性起業家S氏(リス)、著名な社会活動家であるK氏(リス)、先住民国会議員秘書のS氏(リス)、チェンマイ県プラーオ郡K村の文化振興センターの設立者夫妻(リス)にもそれぞれインタビューを行った。なかでも国会議員の秘書であるS氏からは、先住民議会の設立に向けた活動をめぐる文化的セキュリティの維持に関する話を聞くことができ非常に有用であった。村落次元のエスニック・セキュリティと先住民ネットワーク全体のセキュリティにまつわる双方の話を聞き取ることができ、情報の多層性を担保することができたと考える。 帰国後は、研究分担者と調査に関する振り返りを行った(10月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最大の理由は新型コロナ感染症の影響により、現地調査を予定通りに敢行できなかったことにある。初年度である2019年度には夏期に一度短期調査(研究代表者のみ)を実施したが、その後2020年の3月(当初の調査予定期間)から2022年の3月までの2年間は現地調査が完全に不可能な状況にあり、ようやく2022年の8月になって初めて研究分担者との共同調査が可能になった。 また、2019年度からは研究代表者が大学執行部の役職に就いたため(申請時は未就任)、現地調査が可能になった期間においても短期間の渡航しかできず、研究計画のスムーズな遂行に多大なる支障が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査に比重を置いた研究であるため、繰越が認められた2023年度以降は現地調査の頻度や期間を可能な範囲で増やして調査データのさらなる収集を進めて行く。4年間の研究期間のうち2年半に亘って新型コロナ感染症による影響を受けて現地渡航がかなわなかったため、可能であれば、2024年度も再度繰越がかなうことが研究遂行上は望ましい。 2023年度は研究代表者が2回(夏期および春期)の調査渡航を行い、そのうち夏期については研究分担者と共同調査を行う。データが不足する部分については、適宜現地関係者に対するオンラインインタビューを実施するなどして補うことを検討している。
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