「病院から地域へ」の掛け声の下、現在、地域精神医療が躍進している。認知症の早期発見により、当事者の救済が進む一方で、老いのスティグマ化への懸念もある中、認知症当事者を自律的存在として捉え直し、真に配慮的な医療を構築するためには何が必要なのか。近い将来誰もが認知症になるリスクを背負う超高齢社会において、当事者の意思を尊重する「自己参加型」医療の台頭を、①地域精神医療の歴史、②認知症を基盤とした地域精神医療の民族誌、③認知症当事者運動の先導者・英国との比較研究の三つの軸から考察する。その過程で、心や脳の健康がどのように人々の「自己のケア」の一部となり得るかを医療人類学的視点から分析する。
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