研究課題/領域番号 |
19K01212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
張 玉玲 南山大学, 外国語学部, 教授 (60511110)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 血縁・地縁紐帯 / 僑郷アイデンティティ / 文化的社会的制度としての「故郷」 / 宗族 / 「ルーツ」への希求 / コミットメント / 複数の「故郷」 / シノロジー / 中華人性 / ポストコロニアル / 脱構築 / 混淆性 / 「他者」としての多元的日本 / 近代日本 / 農村の都市化 / ルーツとしての故郷 / 二つの「故郷」 / 「新華人」 / 華人と故郷の関係性 / 理念としての「故郷」 / 実体としての故郷 / 儒家思想 / 「福清人意識」 / 社会的文化的制度としての「故郷」 / 華僑華人 / ネットワーク / 移住の連続性 / 文化継承 |
研究開始時の研究の概要 |
1980年代以降、日本や欧米などにおける華人社会は、新たな中国人移民の流入によって、その規模が急速に拡大し、コミュニティの内部構造もより重層的で複雑化した。 本研究では、中国人の移住・定住に関する諸問題が、彼らの血縁、地縁紐帯の原点である故郷への帰属意識と関与、いわゆる「僑郷アイデンティティ」と密接な関係にあるという視点に立ち、中国系移民の主要送出地の一つ、福建省福清地域と彼らの移住先であるインドネシア、日本などでの実地調査を通して、華人の移住・定住との社会的、文化的バックグラウンドとしての故郷との「関係」が形成・再生産されるプロセスと社会的に機能するメカニズムを理論的に究明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、福建省福清出身華人の盛んな越境活動に伴い、歴史的、文化的背景が益々多様化する華人社会の構造及び関連の諸問題を華人の故郷、「僑郷」に視座を置き、捉えなおすことを目的とする。具体的には、①華人の故郷への帰属意識と関与(commitment)、つまり「僑郷アイデンティティ」の形成過程と世代間の違い、②華人の移住と村(一族)の相互作用、とりわけ文化的、社会的概念としての故郷が華人の移住前と後の行動に機能するメカニズムについて実証研究を行うことを課題とする。また、華人の居住国(地域)の経済、社会、文化的動きとの連動も視野に入れつつ、華人と故郷との関係を多角的にとらえたうえ、「一族」(村)の移住・定住のストーリーと同郷団体の活動の両方から分析することによって、国境を跨ぐ華人の移住、定住の経緯と故郷を基点とするネットワークの構造原理を究明することに本研究の意義があると考えている。 以上に基づき、令和五年(2023年)度では、華人の移住国(地域)での同族、同郷者間の連携及び文化継承、経済活動などに現れる「故郷」についての表象と語りについて、地域間、世代間の異同について考察することを課題とし、引き続き日本の各都市に在住する福清出身老華僑(戦前から来日した福清出身者の子孫)と新華僑(1980年代以降来日した、老華僑と地縁、血縁的つながりを持つ福清出身者)への聞き取り調査を行いつつ、これまで行った家族(一族)誌を整理し分析を行った。その成果をまとめて学会報告または論文の形で公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が対象とする福建省福清地域は、明末(17世紀)に河南省、山東省などの中原地域から移住してきた人々による単姓村(同じ姓を持つ)が集中しており、宗族が比較的に発達した地域であり、19世紀より継続的にインドネシア、シンガポールおよび日本へと移住者を送り続けてきた有数の僑郷の一つであり、近年欧米諸国やアフリカへの移住も目立っている。この特徴に基づき、本研究では、福清地域の複数の村(宗族)に焦点を当て、数世代にわたる家族の移住史についての通時的分析と、出身地の社会的、文化的変動への華人の関与および国境を跨いだ「福清人」ネットワークについての共時的分析に重きを置いてきた。令和5年(2023年度)含めてこうした作業を重ねてきた結果、福清出身者の移住・定住及び居住国における文化継承、コミュニティの在り方と「故郷」との関係性は少しずつ明らかになってきた。本研究は現時点では、おおむね順調に進展しているとした所以である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通りに、本研究課題の最終年度として、令和6年度はこれまでの調査データをまとめ、理論的に考察を行う予定である。 具体的にいえば、華人が故郷に対する帰属意識やコミットメントによって具現された僑郷アイデンティティと華人の移住・定住の協働関係、移住社会との相互作用および国や地域を超えた華人ネットワークの再構築について理論化していくことである。必要に応じて、福清地域や福清出身華人の居住地域で補足調査を行うことを考えている。
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