研究課題/領域番号 |
19K01216
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京都立大学 (2021-2023) 国立民族学博物館 (2019-2020) |
研究代表者 |
河合 洋尚 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30626312)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 華人 / 華僑 / オセアニア / 中国 / アイデンティティ / 環太平洋 / 広東省 / 客家 / 華僑社会 / 僑郷 / 華僑華人 / 移民 / 広東 / エスニシティ |
研究開始時の研究の概要 |
1978年12月に中国で改革開放政策が実施されて以降、中国と南太平洋島嶼国との交流が増加した。本研究は、こうした状況のもと、第一に、中国から南太平洋島嶼国への移住が現地社会にもたらしたインパクトについて調査する。そのうえで第二に、現地の華人が自身をオセアニア住民の一構成要素として位置づけ、「オセアニアン・チャイニーズ」としての自己像を提示してきた過程を明らかにする。具体的には、タヒチ、ヴァヌアツおよびその近隣諸国を対象とする。
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研究実績の概要 |
1978年12月に中国で改革開放政策が実施されて以降、中国と南太平洋島嶼国との交流が再開した。南太平洋島嶼国の華人は中国を訪問するようになり、逆に、21世紀に入ると中国から南太平洋島嶼国への新移民が急増した。そうした状況のもと、南太平洋島嶼部で生まれ育った華人は、大陸の中国人との言語・文化的な違いを実感し、「オセアニアン・チャイニーズ」としての自己像を提示するようになっている。本研究は華人が表出する「オセアニアン・チャイニーズ」について理解を深めることを目的としている。 2023年度は海外渡航が可能になったこともあり、タヒチ、バヌアツ、フィジー、ソロモン諸島において本研究課題に関係するフィールドワークを実施した。特にタヒチとバヌアツではコロナ後の変化を知ることができたとともに、旧移民と新移民の関係性に変化が生じたことを知ることができた。旧移民ではオセアニアに根を下ろしているがゆえに、コロナ後でも移動が少なく、オーストラリアなど他のオセアニア諸国との関係を築きながら「オセアニアン・チャイニーズ意識」を保持していた。他方で、中国とのつながりが強い新移民はコロナ時に帰国した者が少なくなく、特に新移民が多いバヌアツの都市景観には変化がみられていた。だが、コロナ後も現地に定着した新移民のなかには「オセアニアン・チャイニーズ」意識の萌芽がみられるなど、旧移民と新移民を二分することができない興味深いケースもみられた。 2023年度はこれまでの科研の研究成果をブックレット『南太平洋の中国人社会――客家、本地人と新移民』にまとめることができた。ブックレットでは、タヒチ、ニューカレドニア、バヌアツだけでなく比較の対象としてフィジーの事例も加えた。ソロモン諸島の華人の現状についてもニューズレターにエッセイとして掲載する準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナによる中断があったにもかかわらず、ブックレットとして成果をまとめることができた。このブックレットではオセアニアン・チャイニーズ意識をめぐる一端を描き出すことができただけでなく、オセアニア島嶼部の中国人社会をめぐる研究を前進させることができたと自負している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに本として1冊刊行することができたが、ブックレットであったため深い民族誌的描写やコロナ後の変化については書ききれないところが多かった。論文などの形でさらなる成果を出していきたいと考えている。また、本科研ではもともとの対象であったタヒチ、バヌアツだけでなく、これまでニューカレドニア、フィジー、サモア、ソロモン諸島と広域調査を進めることもできた。より広い範囲でオセアニア島嶼部における華僑華人を理解する視点や手法を模索していきたい。
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