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フランス法における相続と登記についての研究ー所有者不明土地問題の基礎的解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K01267
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分05010:基礎法学関連
研究機関獨協大学

研究代表者

小柳 春一郎  獨協大学, 法学部, 教授 (00153685)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード相続登記 / 土地情報 / フランス法 / 所有者不明土地 / 公証人 / 民事警察 / 地籍情報 / 不動産登記 / 専門家 / 地籍 / 相続登記未了
研究開始時の研究の概要

日本においては,相続財産中の不動産について相続登記がなされない「相続登記未了」がしばしばあり,これが主な原因となって所有者不明不動産が増加し,その解決が重要な政策的課題とされている。フランス法では,相続登記義務付け規定が登記法にあるだけでなく,相続処理全般について専門家の深い関与があり,実態においても相続登記未了が問題なのは一部地域(コルシカ)に限られている。本研究は,こうしたフランス法の姿を具体的に解明する。本研究は,実態解明のため,研究者及び登記実務家へのインタビューを含めた現地調査を行い,フランスの対策の日本への適用可能性を法理論的・具体的に明らかにする。

研究実績の概要

2023年度の研究実績として、第一に、資料収集の継続があり、第二に、論文執筆がある。
第一の資料収集であるが、フランス相続法、不動産登記法の研究論文等の資料収集を継続した。
昨年度に継続して、フランス・オートマルヌ県の県立公文書館において、登記関連資料の資料収集及び関連して、地籍関連資料の資料収集を行った。昨年度につづけて、一つの筆(水車用地)を選び、土地台帳・登記簿書類を調査した。
ここでの発見は、相続申告制度(delaration de succession)の充実である。これは、対象物件では、1834年8月10日死亡の届出の後、相続申告は、1835年1月13日になされているから、約5か月後になされている。相当に迅速と考えられる。なお、本件の前後のものを見ても、死亡時と相続申告時は、ほぼ6か月以内であり、これが、不動産物件の売却時にも、所有者の履歴を見つけるために有効であったこと、同時に、この調査は、簡単なものではない(筆者も資料館の専門職員からの助力が必要)であるから、当時においても専門家の助力が必要であったと考えられ、公証人の介入があったと考えられる。以上は、具体の資料を通じた調査であるが、これは、1週間をかけても、1つの土地についてしか、確認できない状況であり(相続申告について多数の書類から権利者の名前を探索することは容易でない)、相当に時間がかかることも判明した。
第二は、論文執筆である。本研究課題直接のものではないが、相続土地国庫帰属制度に関して、小柳春一郎「土地所有権放棄をめぐる議論と相続土地国庫帰属法 (特集 「土地を手放す」という選択)」月報司法書士625号 2024年3月を発表し、また、「専門家影響遺言の問題性」(成文堂より出版予定の論文集)の原稿を提出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度の調査を継続することで、フランスでは、相続登記制度導入の前に、地籍や相続登記を通じた所有者把握が行われていたこと、これが売買契約において、土地所有権の歴史をたどる場合に、有効な情報提供をしていたことが判明した。これは、昨年度の報告にもあることであるが、これを具体的な資料で明確化したことが今回の研究における重要な発見であり、これを単なる文献調査によらず、資料調査で明らかにした点で、本研究は、おおむね順調に進捗していると判断できる。これは、文献調査では、隔靴掻痒の感があったフランス相続制度について、ある程度明確なイメージを持つことができた点で有益である。
文献調査のレベルで言えば、相続申告は、税法上の制度であり、それ故、民事法的な所有権の存在と一致しない場合がありうる。それ故、真実の相続人ではない、表見相続人から善意で土地を取得した者が、真実の相続人からの返還請求を受ける場合がありえる。また、所有者の歴史をたどるには相当の調査が必要であるという理由から、相続登記制度が必要とされた。相続登記だけでは、相続移転の真実性は確保されない。このため、フランス法で初めて、相続登記を導入した1935年デクレが、相続登記されるものとして、公証人証書(attestation notariee)として、公証人の関与を要求した。それでも、なお、真実の相続人からの返還請求があり得る。この危険を防止するために、表見所有権(propriete apparente)の法理が発達したと考えられる。

今後の研究の推進方策

今後の研究方針は、2点である。
第一は、個別資料調査の継続である。これは、フランスの県文書館での、身分関係証明、地籍、相続申告、登記関連書類(公証人作成による登記書類)を一件の不動産について総合調査するものであり、フランス不動産を理解するための基礎作業であるが、従来の研究は、これを行っていなかった。これは、極めて時間がかかる調査であるが、2年の調査を通じて個別事例については、内容把握を終えることができた。登記制度を論ずる場合に、実際の不動産売買契約を見ないで論じてきたこれまでの研究に対して本研究は相当重要な進展をもたらすと考えられる。
第二は、概括的文献調査の再開である。前年調査における検討事項であった1935年デクレ・ロワによる相続登記制度導入と公証人証書との関係を明らかにする作業である。これは、文献調査であるから、一定の時間をかければ可能であると考える。

報告書

(5件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 2019 実施状況報告書
  • 研究成果

    (25件)

すべて 2024 2022 2021 2020 2019

すべて 雑誌論文 (10件) (うちオープンアクセス 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 土地所有権放棄をめぐる議論と相続土地国庫帰属法 (特集 「土地を手放す」という選択)2024

    • 著者名/発表者名
      小柳 春一郎
    • 雑誌名

      月報司法書士

      巻: 625 ページ: 16-25

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 民事基本法制の見直しと所有者不明土地問題2022

    • 著者名/発表者名
      今川 嘉典,大谷 太,小柳 春一郎,中川 雅之,吉田 修平,吉原 祥子,藤原 徹,松尾 弘
    • 雑誌名

      日本不動産学会誌

      巻: 36(2) ページ: 2-41

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ナポレオン地籍と『地籍法令体系総覧』(1811年):基本原理・組織・測量2021

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      獨協法学

      巻: 115

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「フランスの地籍修正とその訂正請求に関する裁判例[マルセイユ行政控訴院2013.6.25判決]」2021

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      獨協法学

      巻: 116

    • NAID

      40022804136

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「フランスの2018年所有者不明土地対策新法(海外領土遺産共有解消法):持分過半数発動による処分行為(共有不動産売却及び合意分割)の許容」2020

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      土地総合研究

      巻: 28(2) ページ: 86-118

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「フランスの2019年所有者不明土地対策新法:フランス領ポリネシア相続特例法」2020

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      獨協法学

      巻: 113 ページ: 272-300

    • NAID

      120006896415

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「土地所有権の放棄:法制審議会の承継取得制度提案」2020

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      土地総合研究

      巻: 28(4) ページ: 74-103

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「中間試案」における土地所有権の放棄:「最後の手段」としての認可制による国への帰属2020

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1543号 ページ: 34-39

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 地面師・成りすまし不動産詐欺と公証人認証―公証人の注意義務違反を否定しつつ司法書士の注意義務違反を肯定した東京地判平成29年12月4日判タ1454号205頁を中心に―2019

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      Evaluation

      巻: 69 ページ: 1-17

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 土地基本法見直し「中間とりまとめ」における土地所有者の「管理」の責務―――物理的管理と法的管理―2019

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 雑誌名

      土地総合研究

      巻: 28-1 ページ: 3-13

    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 民事基本法制の見直しと所有者不明土地問題2022

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      日本不動産学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 「近代地籍の源流としてのナポレオン地籍:国家による土地情報把握の意義と限界」2022

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      日本法制史学会東京部会283回
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 財産管理制度(民法不動産登記法等改正)2021

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      地籍問題研究会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 「近代地籍の源流としてのナポレオン地籍:基本原理・実施組織・測量・地籍修正」2021

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      地籍問題研究会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 講演「民法・不動産登記法等改正の動向に関する研修」2021

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      愛知県弁護士会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] コーディネーター「所有者不明土地問題」2020

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      日本相続学会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 「空き家問題に対応する土地家屋調査士の現状」(シンポジウム・コーディネーター)2020

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      地籍問題研究会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] Le probleme des proprietaires fonciers inconnus au Japon : publicite fonciere, indivision et experts juridiques2020

    • 著者名/発表者名
      Shunichiro Koyanagi
    • 学会等名
      Journees internationales de l’Institution nationale des formations notariales
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 所有者不明土地問題と民法についてコメント2019

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      日本私法学会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [学会発表] フランスの空き家対策:リール都市圏の場合 (エリアマネジメントと空き家対策――世界の空き家対策からみえるものーー)2019

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      日本不動産学会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [学会発表] Land registration system and unclaimed land in Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Shunichiro Koyanagi
    • 学会等名
      Law and Society Association, Annual meeting
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 不動産、特に土地所有と開発に関する諸問題コメント2019

    • 著者名/発表者名
      小柳春一郎
    • 学会等名
      日本台湾法律家協会学術研究総会
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書
  • [図書] 仏日不動産法の現代的展開2021

    • 著者名/発表者名
      小柳 春一郎
    • 総ページ数
      386
    • 出版者
      成文堂
    • ISBN
      9784792327682
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [図書] La ville inoccupee: Enjeux et defis des espaces urbains vacants2020

    • 著者名/発表者名
      Sophie Buhnik et Shunichiro KOYANAGI
    • 総ページ数
      230
    • 出版者
      Edition Ponts chaussees
    • ISBN
      9782859785314
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [図書] 土地住宅の法理論と展開(論文「目的物の利用不能・制限と賃料支払義務の関連:仏民法典・旧民法典・明治民法」)2020

    • 著者名/発表者名
      花房博文、宮﨑 淳、大野 武
    • 総ページ数
      884
    • 出版者
      成文堂
    • ISBN
      9784792327477
    • 関連する報告書
      2019 実施状況報告書

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公開日: 2019-04-18   更新日: 2024-12-25  

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