研究課題/領域番号 |
19K01269
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
伊藤 知義 中央大学, 法務研究科, 教授 (00151522)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | セルビア / ボスニア / ハプスブルク / ハンガリー / 近代法継受 / 台湾 / 憲法裁判所 / 1844年民法典 / オーストリア一般民法典 / 東アジア / セルビア民法典 / オスマン帝国 / 東西ヨーロッパ / クロアチア / 民法典 / イスラム法 / ハプスブルク帝国 / 近代法経験 / 前近代法経験 / 旧ユーゴスラビア / 同性カップル法制化 / カトリック圏正教圏 / 1844年セルビア民法典 / 近代法受容 / 2006年セルビア民法典草案 |
研究開始時の研究の概要 |
1844年セルビア民法典は、オーストリア一般民法典ABGBをモデルにしているが、セルビア独自の規定も相当数含まれているとの再評価がなされつつある。400年以上にわたりオスマントルコ帝国の支配を受けつつも、西欧法中心地域にもっとも近い周辺に位置していたセルビアが、19世紀の近代化の過程で、どのように近代法を摂取したのか、制定された民法典が社会において実際にどれだけ適用されていたのかを検討する。そのような近代法の基礎の上に、社会主義法が継受された後、セルビアは新たな21世紀を迎えることとなった。2006年セルビア民法典草案が、1844年民法典から何を継承し、何を捨てたのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度においては、前半は、台湾でのサバティカルを継続した。セルビアと同じく近代法を継受した非西欧圏すなわち西欧周辺諸国の1つである台湾において、日本統治期にどのように近代法を導入したかを検討し、それをセルビアおよびボスニアの状況と比較するためである。 2022年度後半と同様、台湾大学図書館、國立臺灣図書館、高雄文献研究センターなどの各施設において、台湾統治期の日本語文献を中心に、統治開始から50年にわたる期間内に、台湾が近代法をどのように受け入れたか、統治以前の前近代的法制度をどのように近代法に適合させていったかを検討した。それが、前近代的法制度を有していたセルビアおよびボスニアの状況とどのような共通点・相違点を持っていたかを分析した。 2023年度後半は、セルビア、ボスニア両国に対して、近代法のモデルとして決定的な影響を与えたハプスブルク法、特にハンガリー法を比較対象として検討を進めた。その一貫として、社会主義崩壊後の現在のハンガリー憲法裁判所が下した、性別および名前の変更に関する4つ判決ならびにハンガリー憲法裁判所法の内容を分析し、ハンガリー憲法裁判所がEU本部の批判するような反近代的な法運用をしているのか、する構造になっているのかを明らかにした。西欧周辺の中でももっとも西欧に近い東欧地域の近代法継受とその現代的成果について考える材料とするためである。その成果は、2024年6月発行の中央ロー・ジャーナル21巻1号に発表される予定であり、すでに二校まで終えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査は着実に進んでおり、日本統治期における台湾の日本語図書や新聞を中心とした資料の収集、分析を行い、これを比較材料として、1844年セルビア民法典の構成や非近代的要素の残存具合、隣国ハンガリーの状況の検討を進めた。 2015年のセルビア民法典草案は、パブリックコメント募集を経て、すでに提案から10年近く経過したのに、なお法律としては成立していない。そのため、現在の進捗状況としては、1844年民法典との比較対象としての新民法典の内容は確定されていない状況である。だが、草案自体の検討は進めており、最終的に民法典が成立した曉には、さまざまな論点が一層明らかになることが想定される。
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今後の研究の推進方策 |
1844年民法典と近い将来に成立するであろうセルビア新民法典とを架橋する中間に位置する、社会主義時代のセルビア民法についても研究を広げる。具体的には、1978年の債務関係法および1980年所有関係基本法の内容を精査して、1844年民法典がどこまで影響を与えているか、同法典にない要素と社会主義法との関係を明らかにしたい。隣国ハンガリーでは、2013年に新民法典が採択された。ハンガリーについても、1959年の社会主義民法典とこの2013年民法典の関係を分析し、セルビアとハンガリーとで近代法継受の様相がどのように異なっており、どのように類似していたかというテーマにも取り組む。その成果の一部は、2024年6月の比較法学会で発表する予定である。
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