研究課題/領域番号 |
19K01280
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仲野 武志 京都大学, 法学研究科, 教授 (50292818)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 行政法 / 行政組織 / 行政作用 / 行政法総論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、行政法と刑事法の交錯領域における三つの重要論点――①加算税、近時の課徴金など制裁の要素を含む行政処分と刑罰とは内容上どのように区別されるべきか、②過料の対象となる行為と刑罰の対象となる行為はどのように区別されるべきか、③犯罪の捜査、捜査の端緒を得るための行政調査とその他の行政調査はどのように区別され、統制されるべきか――につき、各論点ごとに行政法総論と矛盾・抵触することのない理論的立場をとることに加えて、各論点相互間でも整合性のある理論的立場をとることができるか、また、そのためにはどのような理論的視座が必要となるかという問題に取り組むものである。
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研究実績の概要 |
当該年度に実施した研究の成果としては、国及び公共団体の概念に関係するものと自衛隊、警察及び海上保安庁の組織及び作用に関係するものとがある。 まず、国及び公共団体の概念に関係するものとしては、国に属する統治権と地方公共団体、公共組合その他の公共団体に属する統治権類似の権能のうち、刑罰を科す権能とそれ以外の権能を区別した上、それらの相互関係を明治以降の沿革をたどりつつ考察したことが挙げられる。その結果、刑罰を科す権能は専ら国に属する統治権の一環として行使され、公共団体に属する統治権類似の権能の一環としては行使されないことが、その背景となる基礎理論と併せて示された。 次に、自衛隊、警察、海上保安庁の組織及び作用に関係するものは、極めて多岐にわたるため、その細目については、本研究の成果として公刊された書籍である仲野武志『防衛法』(有斐閣・2023年)において詳論したところに委ね、ここでは、その梗概のみを記述しておきたい。武力攻撃事態等又は存立危機事態における防衛出動時の武力行使と自己又は他人の正当防衛との関係は、政府見解等でも比喩的に語られてきたにすぎないが、本研究では、両者の関係を初めて包括的に研究した。両者は、おおむねパラレルであるが、本質的な部分で相違しており、正当防衛と同様の範囲にとどまっていることが、武力行使が行政法上問題がないとするための理由にはならない。また、いわゆる他国の武力行使との一体化の理論は、刑法でいう幇助犯でなく共同正犯に相当するものであるが、前者は現在又は将来の実力行使の方法を規制するものであるのに対し、後者は過去の違法行為の責任を追及するものであるため、前者では専ら客観的要素に着目して判断しなければならないのに対し、後者では主観的要素と客観的要素を総合して判断しなければならない。このほか、PKOへの自衛官への派遣についても、刑事法との比較が有益である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況は、当該年度には、おおむね順調に進展しているものと判断される。 当該年度は、いまだ新型コロナウイルス感染症のまん延の防止のための各種の措置がとられていたため、自由に海外渡航を行って外国の文献を蒐集すること等はできなかったが、それに代わって、オンライン会議等が活性化したため、そのような機会を利用することができた。また、研究期間全体において、当該年度は、いわばまとめの時期に当たるため、これまでに収集した資料の分析を進めることに多くの時間を費やしたため、この点でも、新型コロナウイルス感染症による悪影響を最小限に抑制することができたと考えている。 また、自衛隊、警察及び海上保安庁の組織及び作用に関係する研究を進めるに当たっては、関係者と熱心な討論を行ったが、これについても、関係者から当初期待していた以上に積極的な協力を得ることができた。これは、当該年度の開始直前に勃発したウクライナ紛争により、国民の安全保障に対する関心が一挙に高まったため、そのことに対応して、自衛隊、警察及び海上保安庁の関係者においても、学界との協働を重視する方針を打ち出すに至ったためでないかと推察される。 ともあれ、このような形で、新型コロナウイルス感染症による悪影響をできる限り回避するとともに、実務家との交流を推進することができたことが、当該年度における本研究課題の進捗状況がおおむね順調に進展していることに繋がったものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、本研究課題の最終年度に当たるため、今後の推進方策としては、これまで収集した資料の分析を進めるとともに、関係者との討論を行うことを通じて、行政法と刑事法の関係に関する基礎理論を更に展開することが重要であると考えている。もっとも、資料を分析する過程で、新たに関係する資料を収集しなければならないことが判明することは、これまでの経験から容易に予測されるところであり、取り分け本研究課題のような基礎理論を主とするものにあっては、そのような状況が生ずることは極めて頻繁である。ついては、最終年度の前半を中心に、精力的にこれらの資料を収集することに努めてゆきたい。 なお、これまでの研究成果を通じて、ヨーロッパ法からの示唆に基づいてわが国の実定法から遊離した結論を提示するのは避けるべきであると考えるに至っており、本研究課題をまとめるに当たっても、わが国の実定法はもとより、地方レベルに至る様々な行政実例にも目を配って、議論の前提を豊富なものとしてゆきたいと考えている。そのためには、これまであまり実定法学者の探索の対象とされていなかった地方の県立公文書館、県立図書館等にも積極的に足を運ぶことが重要であると考えられる。
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