研究課題/領域番号 |
19K01296
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷川 佳彦 大阪大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40454590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 行政訴訟 / 訴訟類型 / ドイツ法 / 歴史研究 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国の行政事件訴訟法は、個人の権利利益の保護を目的とする主観訴訟について、抗告訴訟と当事者訴訟の2つの類型を定めている。この抗告訴訟と当事者訴訟の概念は、美濃部達吉以降の学説がドイツの行政訴訟法を頻繁に参照しながら形成してきたものである。しかし、1960年に制定された現行のドイツ行政裁判所法は、それまでの行政訴訟に関する法令で見られた抗告訴訟と当事者訴訟の区別を放棄するに至っている。そこで本研究は、関連する資料を広く収集・分析しつつ、ドイツにおける抗告訴訟と当事者訴訟の概念及び両者の関係の変遷を、行政訴訟制度が形成された19世紀後半に遡って歴史的に分析するものである。
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研究実績の概要 |
2022年度も、新型コロナウィルスの感染拡大の影響でドイツに出張できなかった。そのため、ドイツにおける抗告訴訟と当事者訴訟の概念および両者の関係について、これまでの研究を論文として取りまとめるに至ることも難しくなったので、前年度の「今後の研究の推進方策」で記した通り、抗告訴訟と当事者訴訟に関するわが国の議論の分析・考察を行った。特に、わが国において抗告訴訟の概念が形成された状況について、これまでの研究で得られたドイツ法に関する知見を踏まえて分析・考察を進めた結果、例えば次のようなことが明らかになった。 すなわち、わが国の行政訴訟法理論に、抗告訴訟と当事者訴訟の概念を採り入れたのは美濃部達吉であったが、それに先立って美濃部は、ドイツ法の状況を紹介する論文を発表していた。その論文において美濃部は、プロイセンでは行政処分が訴訟で争われる場合も、原告と被告が訴訟の当事者として対峙し、裁判所が判断を下すという当事者訴訟と同様の三面構造が採られていたため、プロイセンでは抗告訴訟と当事者訴訟の区別がされていない旨を紹介していた。しかし、わが国の当時の行政裁判法もプロイセンと同じく、行政処分が訴訟で争われる場合には原告と被告が訴訟の当事者として対峙する構造を採っていたにもかかわらず、美濃部は行政処分が争われる訴訟を抗告訴訟と定義していた。その背景としては、国家や行政庁には行政処分を発する「権利」なるものは認められず、当事者訴訟や民事訴訟の場合と異なり、原告の権利と被告の権利の対立を観念することができないという理解があったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、抗告訴訟と当事者訴訟に関するわが国の議論の分析・考察を進めた結果、「研究実績の概要」に記したような知見を得ることができた。その一方で、ドイツにおける抗告訴訟と当事者訴訟の概念および両者の関係については、第2次世界大戦後の状況からこれまでの研究の取りまとめに取りかかった。その過程で、ドイツの大学や図書館にしか所蔵されていない資料を補充する必要が生じたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、ドイツへの出張ができなかったため、それらの資料を収集することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、抗告訴訟と当事者訴訟について、主にわが国の議論の分析・考察を進めたが、2023年度もさしあたりそれを継続する。特に、第2次世界大戦前の議論状況に関して、2022年度に主に分析の対象とした美濃部達吉の見解のみならず、それ以外の行政法学者の見解も含めて、当時のドイツ法の状況とも比較しながら分析・考察を進める。その後、ドイツにおける抗告訴訟と当事者訴訟の概念および両者の関係について、第2次世界大戦後の状況に関する研究の取りまとめに取り組む。それらの作業を行うに当たり、国内の関西圏以外の大学、さらにはドイツにも出張して、補充すべき資料を収集する。
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