たとえば中絶や避妊を含む家族計画に関する公共サービスが利用可能であることを患者に告知するよう医師に義務づけることは許されるのだろうか。医師が中絶に反対の立場であれば,かかる告知義務は,自己の信念に反する表現の強制だと考えるだろう。では義務づけは許されないのか。医者と患者,カウンセラーと相談者といった専門家と顧客の関係は,専門家の専門性を基礎にした信頼関係のうえになりたっている。専門家と顧客との間のコミュニケーションを,プロフェッショナル・スピーチ領域として析出し,類型化し,独自の規制の正当化,規制手段の適正化を,伝統的表現規制と異なるものとして検討しなければならない。
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