研究課題/領域番号 |
19K01360
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 清治 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20212772)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 無償契約 / 贈与 / 契約交渉段階 / 契約の成立 / 死因贈与 / 信頼利益 / 履行利益 / 契約の拘束力 / 性質決定 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、これまで学問的な研究が乏しかった無償契約について、特にその代表例である贈与契約を素材としつつ、①無償であることが契約の拘束力にいかなる影響を与えるのか、②契約内容を解釈する際、無償であることがどのように機能するのか、という2つの観点から、外国法に関する検討を交えつつ研究し、③無償契約の拘束力と効力の背景原理を究明し、これに基づく解釈論的及び立法論的提言をすることを目的とするものです。 また、検討の際には、これまで等閑視されていた「契約の性質決定」という問題と、重要性は指摘されつつも、研究が手薄であった「契約の解釈」という問題に焦点を当てて研究を進める予定です。
|
研究実績の概要 |
従前研究が乏しかった無償契約について、特にその代表例である贈与契約を素材としつつ、①無償性が贈与契約の拘束力にいかなる影響を及ぼすのか、②契約内容を解釈する際、無償であることがどのように機能するのか、という2つの観点から、比較法的検討を交えつつ考究し、それを踏まえた上で、③無償契約の拘束力及び効力の背景原理を究明し、これに基づく解釈論的及び立法論的提言をすることを目的とする本研究プロジェクトにあっては、令和4年度、基礎的・文献的研究に注力し、次の成果と知見を得た。 第1は、令和3年度に得た比較法的知見、すなわち、客観的に見れば、対価のないように見える契約であっても、「無償性の合意」という主観的概念を用いて「贈与ではない」との性質決定により、当該合意の無方式での拘束力を認めるという志向性からすれば、日本では「書面」ないし「履行」概念の拡張によって対応しているのではないかと予想されたところ、令和4年度は、日本の裁判例を詳細に分析し、実際にそのような傾向が見られること、そして、合意の効力を認める背景事情を究明した。この成果は『新注釈民法12巻』において、549条及び550条の注釈として公表される予定である。 第2は、無償契約における契約不適合責任のあり方、とりわけ損害賠償の要件と効果について、比較法的検討を進めたことである。たとえば贈与物の瑕疵により損害を被った場合、それが危険物であったのか、それとも用法の説明に不十分なところがあったのかによって、責任の根拠や強度は異なるのではないか、という知見を得た。これは551条の解釈に直接関わるものである。 なお、後記業績2も損害賠償の範囲に関わるものであり、今回バージョンアップした内容にしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の計画は、新注釈民法の執筆に注力することであった。そして、549条と550条という贈与法における中核部分に関する執筆をほぼ終えることができた。これまでの最上級審判決を網羅したもので、かつ、分析視角も従前の研究では見られなかったものである。 次に、551条の執筆を進めるべく、比較法的考察を行い、見通しを立てることができた。また、贈与に関するものではないにしても、履行利益と信頼利益に関して、その実用性の観点からする分析をすることもできた。後記業績2はこれに関わるものである。 以上から、研究の進捗状況は「おおむね順調」ということができる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度については、新注釈民法の完成を目指したい。上記のとおり、令和3年度の研究成果に基づき、549条と550条という贈与法の骨格をなす条文については、ほぼ完成稿を仕上げることができた。令和5年度は、これに引き続き、551条以降の条文に関する注釈を脱稿したい。これが令和5年度の第1の目標である。 また、第1の目標が達成した後、延び延びになっている海外出張も実現したい。もっとも、残された研究費に限りがあり、また時間的余裕の問題もあるので、状況を見定めた上、判断することにする。
|