研究課題/領域番号 |
19K01388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 一橋大学 (2021-2023) 東北大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
石綿 はる美 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10547821)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 民法 / 民事法 / 性別 / 嫡出推定 / 家族 |
研究開始時の研究の概要 |
性同一性障害者の性別変更、性別欄への「男/女」とは異なる「性別」記載の可能性、同性カップルの権利保護、同性婚の容認等、近時の社会においては、「性別」に関する様々な動きがある。それらの問題について、個別に対処をしていくだけではなく、今後生じ得る問題に対応するためには、「性別」の意義について包括的に再検討をする必要がある。本研究においては、①「性別」は男女の2つに限られるのか、②「性別」の法律上の機能、③人が社会生活を営む中で「性別」を他者に公示する必要性の有無とその理由、④国家に個人の「性別」を登録する必要性の有無とその理由、という問いについて検討しながら、「性別」の意義について再検討をする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、令和4年民法改正における嫡出推定規定等の見直しも踏まえて、法における「性別」の意味、戸籍等で「性別」を把握する意味について検討を行った。それを通じて、現状において、性別は、子が生まれたときに、個々の事情を調査することなく、法律上の親を定める役割を担っていると考えられることを指摘した。それに加えて、婚姻が異性間の者であることが前提とされている中で、性別が把握されていることにより、婚姻の有効性を即時に判断できるという役割があるとも考えられる。同時に、同性間での婚姻が認められるようになった場合に、性別を把握する意味はあるのか、親子関係については、母や父を決定するのではなく、親を決めるということは考えられないのかという疑問も生じる。これらの点を整理したうえで、「性別いよる区別・格差に法学はどう向き合うか?」飯田高他編著『世の中を知る、考える、変えていく』(有斐閣、2023年)として公表した。 同時に、民事法において、性別の持つ意味、国家が個人の性別を把握する意義としては、婚姻制度・親子法制との関係が大きいと考えられることから、これらの問題について、現状について、さらに検討を深めた。具体的には、母子関係の成立についての法理の再検討、第三者提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の父子関係について令和4年民法改正の内容も含めた検討を行い、これらについて、「内密出産の取り扱いに関する通知をめぐって」法学セミナー69巻1号89頁、「第三者提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の父子関係に関する見直しをめぐって(上)(下)」法学セミナー68巻11号85頁、68巻12号71頁として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画としては、2023年度は、フランスにおける「性別」の法的意義の研究を予定していた。2023年度は、この点について検討を深めることができなかったという点では、当初の研究計画の通りの研究は実現していない。 他方、2023年度は上記のように、性別の意味を検討する論稿やそれと関連すると考えられる親子関係の成立について再検討をする論稿を複数公表した。これらの研究を通じて、日本法のおける「性別」の法的意義を一定程度明らかにするとともに、法において性別が大きな意味を持つ親子関係の成立についての検討を深めることにはつながった。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、研究の最終年度として、研究のまとめを行うことを目指す。本研究課題については、計画当初と異なり、最高裁令和5年10月25日決定判例タイムズ1517号67頁が出される等裁判例の流れを受け、性別と法的親子関係の関係性について検討をする必要性が高まっている。具体的には、法的には男性である者が子を出産した場合、法的には女性である者が自らの精子を用いて子をもうけた場合、それぞれ法的親子関係をどのように決定するのかという問題である。これらの問題について、何らかの検討のための視角を得ることを2024年度の研究の大きな目標としたい。 上記の問題について、比較法研究から一定の視座を得ることを目標として、フランス法についての研究も必要に応じて行うこととしたい。
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