研究課題/領域番号 |
19K01389
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小野寺 倫子 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10601320)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 契約 / 環境保護 / フランス法 / 環境法 / 民事法 / 合意的手法 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国をはじめ先進諸国では、行政部門の財政的・人的リソースの不足、環境リスクの不確実性、アクターの多様化などを背景として、従来の公法上の規制―制裁を中心とする環境保護法制の限界が指摘されている。そこで、公法上の環境保護制度を補完するものとして近年諸外国において注目されているのが、私人と環境保護団体との環境保全に関する契約など、合意ないし契約という民事的手法を活用した環境保護である。 本研究は、近時のフランスにおける「環境法の契約化」に関する一連の議論を参照することにより、生物多様性、生態系、地球環境など環境それ自体の保護における合意的手法、特に、契約の有用性・重要性を明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、従来の行政規制型の環境保護法制に親しまない現代的な環境課題(私有財産上での環境保全や個人の消費活動における環境負荷の低減など)への法的対応手段としての契約の有用性と、環境法の契約化における法的課題とそれに対する対処の方策を明らかにすることにある。 これまでの研究では、フランス法の研究文献等の分析を通じて、環境法の契約化における法的課題について、一つには、契約内容にかかわる環境情報を当事者がどのようにコミュニケートするのかということ、もう一つには、契約が当事者の合意を基礎とし、契約を手段とする環境保護の実施が当事者のイニシアティブに基づくものであっても、環境が当事者の利益を越える公益としての性格を持つことを理由として、契約における環境保護の在り方をすべて当事者に委ねるのではなく、環境保護の観点から客観的にコントロールすることが要請されるということの2点に大きく集約できるのではないかという見通しを得たことから、2023年度においても、これまでの研究を発展させる形で、フランスで最近公刊された博士論文等の分析を継続した。その成果として、環境法の契約化について議論する際の基本的な枠組みとして、前者に関する環境情報提供義務と、後者に関する環境ないしエコロジー公序という2元的な構造がほぼ確立されつつあることが明らかになってきた。また、前者の論点に関して、環境情報は、契約当事者の個別的利益ではない、客観的な情報である点で、従来の消費者保護のための情報提供義務とは異なる性格を有するものであるところ、これについてもフランスの研究者の論稿の翻訳・公刊作業等を通じて前年度からの研究を発展させ、環境の法的保護においてデジタルプラットフォームのような当事者間に閉鎖的でないコミュニケーション手段による情報補完の必要性、有用性等について検討をさらにすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究開始2年目に当たる2020年からの新型コロナ感染症の流行の影響により下記のような事情が継続したことの累積的結果として遅延である。 まず、感染症の流行により、研究の手法が文献調査の方法に限定される時期が長期化したこと、感染症の流行が始まった時期においては世界的に物流が制約を受け海外からの文献の入手自体が困難であったこと、ワクチンの開発等の医学的対応等の進展により物流が回復した時期以降も研究対象国であるフランスでの研究スピードの回復までには一定のタイムラグがあり、すぐにはコロナ禍前のような議論の進展状況には戻らず研究文献の公刊自体が減少したことなどが研究の遅延の原因となった。また、このような状況にあったため、文献調査についても、検討予定であった図書の公刊中止などもあり、入手できたものからランダムに分析を行うことにならざるを得ず、研究成果としてのとりまとめについても想定以上に時間を要している。本研究は、フランスにおいて現在進行形で展開されている議論を研究対象としているため、フランスでの研究の展開が研究開始当初の予想に反して停滞した時期が続いたことが、本研究自体の遅延に直結したものである。 また、所属研究機関における授業が2020年度から2022年度までほぼ遠隔実施されていたこと等、コロナ禍対応による教育業務の比重の増加が増加し、コロナ禍前の研究開始時と比較して相対的に研究業務を圧迫した時期が続いたことも研究の遂行に影響を及ぼしている。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、本研究については、新型コロナ感染症の流行による影響で進捗に遅れがみられる。しかし、研究の主要部分については前年度までにほぼ遂行しており、本年度は研究のとりまとめ段階にある。 コロナ禍の期間において、入手できた文献からランダムに文献分析作業をおこなったことの結果、研究対象や分析の視角等がやや散漫な傾向となったことは否めず、そのために成果のとりまとめに当初の想定以上に時間を要していることが、本研究について予定よりも研究が遅延し、今年度までの期間延長となったおもな理由である。しかし、本研究の総括の方針自体は、昨年度までの研究でほぼ固めることができている。本研究の最終年度となる2024年度においては、補足的な情報収集、分析の補完は行うものの、おもにこれまでの研究成果のまとめ作業を行っていく予定である。
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