研究課題/領域番号 |
19K01431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
金子 敏哉 明治大学, 法学部, 専任教授 (20548250)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 損害賠償 / 商標権 / 著作権 / 実証分析 / データベース / 寄与度 / 寄与率 / 逸失利益 / 侵害者利益に基づく推定 / 推定の覆滅 / 2項と3項の併用 / TPP / 法定損害賠償 / 侵害者の利益 / 損害額 / TPP |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、著作権・商標権侵害に基づく損害額の算定について、①日本の裁判例を対象とする実証研究、②英米豪法との比較研究、③TPP協定とこれに伴う法改正の検討を行い、日本における損害額算定の実情を実証的に明らかにしたうえで、TPP協定後の損害額の算定のあり方について考察することを目的とする。裁判例の実証分析では、損害額に関する量的分析を行うためのデータベースを作成し、各要素と損害額の相関、請求額と認容額の差異とその要因、適用法条・法改正や解釈論の損害額算定への影響等について検討する。比較法研究では、制度の相違と議論状況の分析と、同種事案についての日本法との比較等につき考察する。
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研究実績の概要 |
特許法102条を巡る大合議判決後の展開と商標法分野への影響を中心に分析に検討を行った。特許法102条1項・2項を巡る分析の成果については、2023年8月の北大サマーセミナーでの報告において発表するとともに、セミナーの参加者に対して令和2年以降の特許・意匠・商標・著作権の各法の1項1号、2項を巡る裁判所の判断内容を整理したエクセルファイルを配布し、データベースの試験的な公開も行っている。 特許法102条1項(1号)については、美容器事件大合議(2020年)による1項1号の利益額に係る事実上の推定覆滅について、その後の裁判例の動向と学説の議論状況を踏まえつつ、議論の根本的な対立軸として、逸失販売数量分の権利者製品の利益額につき常にその全額を賠償範囲とすべきかを巡る理解の相違があり、また「侵害行為がなければ」との状況について仮想的な非侵害代替品の販売を想定するか否かの点も影響していることを明らかにした。また特許法102条1項2号、2項と3項の併用についてもその考察の成果を論文としてまとめている。。 商標法38条1項・2項については、2012年以降の裁判例の動向について、特許法102条に係る大合議判決の影響を中心に分析を行い、裁判例の一覧表とともにその成果を論文として公表した。論文では、寄与度減額からの決別、適用要件を巡る議論動向、覆滅率について特許法との大きな差異として90%以上か20%以下・覆滅なしに二極化しており、中間的な覆滅率によるものが少ないこととその要因等を明らかにしている。これらの動向を踏まえて、具体的な解釈論として、商標権の保護法益(及びこれに関連する登録商標の使用や出所混同の有無)を損害論についてどのように扱うかについての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ期間中の海外調査の遅延等の影響に加えて、特許法102条についての法改正(令和元年改正)、3件の大合議判決についてのその内容(とりわけいわゆる寄与度減額からの決別)を精査し、商標法・著作権法分野の裁判例についても新たな視点から整理をし直す必要が生じたため、当初の2021年度の終了予定から、2024年度までの延長・再延長を行った。 このように研究全体としては遅れているが、特許法102条についての検討の成果と商標法・著作権法への影響の分析等の点での研究の進展も大きいところであり、全体としてはやや遅れていると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年の著作権法・不正競争防止法の改正により、特許法102条と同様の改正がなされたことをも踏まえつつ、特許法102条の分析の成果を商標法・著作権法の分析に反映しつつ、従前の裁判例についてもこれらの変化を意識して分析しなおし、データベースの公開を目指す。
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