研究課題/領域番号 |
19K01434
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
小林 真紀 愛知大学, 法学部, 教授 (60350930)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 終末期医療 / 安楽死 / 治療中止 / 死への積極的介助 / 患者の権利 / ガイドライン / 精神的苦痛 / フランス法 / 鎮静を受ける権利 / 精神疾患 / 認知症 / 事前指示 / 意思決定 / 事前指示書 / ベルギー法 / 未成年者 / 終末期関連法 / ルクセンブルク / ベルギー / フランス |
研究開始時の研究の概要 |
まず、意思表示できない患者の治療の中止について、ルクセンブルク、ベルギー、フランスの終末期関連法の制定過程と実施状況から、これらの国における立法化により新たに顕在化した問題を検討する。次に、患者が苦痛から解放されるための手段を保障できる枠組みを上記3か国の法の比較から具体的に考察する。最後に、ヨーロッパ基準、とりわけヨーロッパ事件裁判所の判例との比較を行う。最終的にはこれらの考察結果を総合し、患者が苦痛から解放されたなかで意思決定でき、意思表示できない患者の治療中止が適切に行われるために必要な法原理を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、フランスの終末期医療法の枠組みをもとに、日本の現状から課題を抽出するための研究をおこなった。具体的には、日本の終末期医療、とりわけ、治療の中止・差し控えに関して具体的に生じている問題を抽出し、それに対する解決策をフランスのレオネッティ法(2005年)およびクレス・レオネッティ法(2016年)などを手掛かりとして考察した。たしかに、厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン」や日本救急医学会・日本集中治療医学会・日本循環器学会による「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン ~3学会からの提言~」など、複数のガイドラインが定められ、医療者側がそれらを遵守する環境が整っているという点では、日本の制度設計も評価できなくはないといえる。しかしながら、日本でのガイドラインの策定は基本的には厚労省のような行政や、専門職団体あるいは学会が担っているため、内容的にとくに患者の側からは理解しにくい構造になっている点は否めない。フランスでは、2002年のクシュネール法により、一般的に患者の権利が保障されており、そのうえで、レオネッティ法やクレス・レオネッティ法が終末期患者を対象とした枠組みを設定している。こうした重層化された制度設計により、患者は、明文の規定にもとづき、治療中止に関わる意思決定をおこなったり、事前に意思表示をしたりすることが可能となっている。他方で、フランスの場合、意思表示できない患者の治療中止に関しては、医師を中心とした医療者による合議における判断が重視される構造になっており、こうした手法が日本の医療現場に適合するかという点は改めて検討する必要があろう。なお、これらの問題点については概略を第14日仏公法セミナーにて報告し、さらに詳細を掘り下げた分析を愛知大学法経論集に投稿した(2023年7月刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度までのコロナ禍では、海外出張等が実現できず、フランス語圏の研究者との意見交換も限られていたが、2022年度には、感染対策を施した上であれば、対面での会合が可能となったことで、複数のフランス人研究者と直接に意見交換をする機会を得た。昨年度に引き続き、インターネットや各種データベースを駆使した情報収集とその分析にも注力した結果、一定程度の研究成果は上げることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
折しも、2022年9月に、フランスでは、マクロン大統領が終末期に関する市民会議を開催することを発表し、2023年1月より実際に市民会議が組織され、議論が開始された。その後、4月には報告書が公表されており、今年度中に法律の採択が実現されるのではないかという専門家による指摘もある。こうした状況を踏まえて、今年度は、フランスにおける安楽死・自死介助を含めた、死への積極的介助(AIDE ACTIVE A MOURIR)の法制化の動向について詳細に分析・検討する予定である。同時に、フランスでの議論は、ベルギーおよびルクセンブルクの安楽死法に関わる研究から多くの示唆を得ていることかから、両国の法制度を改めて分析し直し、ここ数年のあいだに出された報告書をもとに両国が現実に抱えている課題を抽出する。 ルクセンブルクでは、2020年以降、安楽死の要請および実施数が増加し、ベルギーでも2020年に(新型コロナウィルス感染拡大によるロックダウンで)一度減少したものの、その後は増加傾向にある。それと共に、法律の制定当初とは異なる問題(精神疾患のみにり患している患者の安楽死、安楽死した患者からの臓器提供など)が生じていることが指摘されており、こうした新たな問題に法がどこまで対応できるかを検討する必要がある。 そのうえで、これらの課題が、フランスでの安楽死立法化の議論とどのようにかかわりうるかを考察し、最終的に、明文の規定で終末期医療法の枠組みを整備する意義を明らかにできるよう、これまでの研究を総括する予定である。
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