研究課題/領域番号 |
19K01488
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
|
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
山田 竜作 創価大学, 国際教養学部, 教授 (30285580)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | カール・マンハイム / 自由のための計画 / ムート / T. S. エリオット / クリストファー・ドーソン / 社会学的心理学 / 民主的パーソナリティ / レッセ・フェール / A. D. リンゼイ / 計画的思考 / 鍵となる位置 / 民主的コントロール / アーキタイプ |
研究開始時の研究の概要 |
ナチス・ドイツに追われたユダヤ系亡命知識人カール・マンハイムが、彼をイギリスで受け入れたキリスト教知識人グループ「ムート」の中で展開した、大衆社会再建の処方箋「自由のための計画」については、これまで十分に研究対象とされてこなかった。マンハイムの目指す「計画」は中央集権的な計画経済のようなものとは異なっていたが、その構想は「ムート」のメンバーとの議論の中でどのように展開されたのか。またそれが、イギリスという知的風土の中でどのように受け入れられたのか、あるいは拒否されたのか。それらについて思想史的に検討することで、社会学者としてでなく民主主義者としてのマンハイム像を浮き彫りにすることを試みる。
|
研究実績の概要 |
前年度の研究成果を基に、「大衆社会」と「計画」に関するマンハイムの主張と、「ムート」における主要メンバーたるエリオットとドーソンからの応答(重なり合う時代認識と、「計画」に対する批判)について学会報告を行った。 またそれと並行して、マンハイムの英国期の主要著作『再建期における人間と社会』のドイツ語版(1935年)と増補英語版(1940年)を再検討し、特に英語版で増補された個所がもともと刊行された諸文献にあたることで、この2つの版が出版される間の数年間がマンハイムによる社会学的心理学の深化の時期であったことを確認した。ここで言う社会学的心理学とは、人間の心理やパーソナリティを一般的な「人間性」や個々人の内面に還元するのでなく、その人間が置かれた具体的な社会状況(すなわちここでは大衆社会)との関係で理解することを目指すものであり、それを通じてマンハイムが、大衆社会における民主主義の再建をめぐって、政治制度よりもむしろ民主的なパーソナリティを育成する教育へと関心を向けていくプロセスが見えてきた。 さらには、前述のドイツ語版『人間と社会』ですでに展開されていた、「発見」の段階、「発明」の段階、「計画」の段階というマンハイムの段階論が、同書の英語版で増補された最終章で「自由と計画」をめぐって再論されている個所を再検討した。それを通じて、「計画」の段階たる大衆社会状況における自由がそれ以前の段階の自由とは異なるというマンハイムの発想を確認すると同時に、このような発想を受け入れようとしない英国の知識人や中産階級に対する彼の批判をも検討した。以上から、マンハイムがしばしば「レッセ・フェールから計画へ」という時代診断を語る場合の「レッセ・フェール」が、人為的な計画を嫌う英国人の「muddle through(どうにかこうにかやっていく)」という態度と重なるのではないかとの仮説を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英国におけるマンハイムの思想につき、これまでの研究をまとめて1冊の著書の執筆を開始しており、本来なら今頃には下書きが出来上がっているはずであった。しかし、健康上の不如意と、勤務校の新しいカリキュラムに対応した授業準備等のため、執筆は遅れ気味である。全体の構想と章立てはほぼできているが、おおよその執筆が済んでいるのは3つの章にとどまっている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である、マンハイムの「自由のための計画」論の展開過程は、これまで収集した資料の検討を通じてかなり明瞭になりつつある。特に、2022年度に勤務校から在外研究の機会を得て英国に滞在する中で、多くの知見を得た。それらを整理・集約しつつ、著書の原稿を書き進めていくことを最優先する。
|