研究課題/領域番号 |
19K01534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 青山学院大学 (2020-2022) 国際大学 (2019) |
研究代表者 |
熊谷 奈緒子 青山学院大学, 地球社会共生学部, 教授 (10598668)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 和解 / 共感 / 謝罪 / 赦し / 記憶 / 花岡事件 / 中国人強制労働 / 広島安野 / バターン死の行進 / フィリピン / 学際的研究 / 政治的和解 / 寛容 / 国家補償 / 対話 / 戦後補償 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、第二次大戦後の戦後補償の和解過程で、謝罪と赦しの逆行 (加害側による謝罪の否定と被害側による被害の政治化)を引き起こしていると考えられる「共感(相手の立場を相手の視点で理解する姿勢)の欠如」を研究する。国際関係学の和解理論を、哲学、心理学、宗教学での「共感」概念に基づき精緻化し、共感に影響しうる4つの要素(被害者と加害者の社会的所属の同一性、加害側による被害性への認識、被害側による加害の政治的正当性の評価、記憶の抑圧)の理論的位置づけを明確にする。そして4つの事例(米軍捕虜強制労働、ナチスによる東欧強制労働、中国人強制労働、東京空爆被害)で、和解における共感の役割を実証的に研究する。
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研究成果の概要 |
本研究は、戦後補償において、謝罪や赦しが覆されない持続可能な和解の条件として「共感」の役割に注目した。「共感」に影響しうるの4つの要素、「被害者と加害者の同一社会所属性」、「加害者による被害性への理解」、「加害行為の政治的妥当性の認識」、そして「加害者被害者双方の記憶の抑圧」の動態を実証研究した。事例は、ナチスによる東欧強制労働、旧日本軍による米軍捕虜虐待と中国人強制労働、そして米軍による日本空襲である。前二者要素が共感を高める一方で、「加害の政治的妥当性」を被害者側が認めることはなく、「記憶の抑圧」は被害の「忘却」への被害者の抵抗となること、政治的経済的影響が存在することが明らかにされた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の成果は、内戦や政治的抑圧が終焉した後の移行期正義が問題となる国や社会においても活かされると考えられる。本研究は、持続的な和解には、「共感」が重要であり、政治的経済的な外的要因の影響も存在し、さらに被害者にとっての「記憶」も役割を果たすことを、理論的実証的に明らかにした。確かに和解過程は、事象や国・地域、さらには文化にも影響されるので、事例ごとに対応するきめ細かな和解策対応も重要である。しかし、持続可能な和解に共通する核心部分を明らかにすることによってこそ、世界各地の移行期正義、和解政策のための共通の軸となる視点を提供しうるものである。
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