研究課題/領域番号 |
19K01541
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大和 毅彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (90246778)
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研究分担者 |
瀋 俊毅 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (10432460)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | メカニズム・デザイン / 実験経済学 / ミクロ経済学 / ゲーム理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ある一定の規模の公共財を供給するか否かを決める公共プロジェクトの実施問題について、理論的に性能が良いとされているメカニズムと自発的支払メカニズムのパフォーマンスを同じ経済環境の下で、経済実験を行い比較する。配分の効率性、公共プロジェクト実施に関する決定の妥当性、メカニズムへの参加インセンティブ等の観点からどちらが優れているかを分析する。これにより、メカニズム・デザインの分野で提唱されてきた理論的に優れたメカニズムが現実に用いられる可能性はあるのかという疑問に対して答え、実験結果を踏まえて、公共プロジェクトの制度設計の理論を再構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
非排除性と非競合性を満たす純粋公共財を供給するメカニズムに、各主体が参加するか否かを決定できる状況において、自発的支払メカニズムとパレート効率な配分を実現する任意のメカニズムの比較を行った。特に、期待参加人数、すなわち、「均衡におけるメカニズムへの参加確率」×「プレイヤーの人数」に関する分析を行った。プレイヤーの人数が増加した時に、均衡におけるメカニズムへの参加確率は減少してしまうために、これらの積である期待参加人数が増加するのか、減少するのは自明ではない。 期待参加人数を分析したHeijnen (2009)のモデルとは異なり、このモデルでは期待効用関数が複雑であるため、期待参加率を明示的に求めることはできないため、数値シミュレーション分析を行った。期待参加人数は選好のパラメータα(αの値が小さいほど、私的財に対して公共財を重視する、0<α<1)に依存して変わることを明らかにした。パレート効率なメカニズムについては、αが十分に大きい時(α = 0.9)の時には、期待参加確率はプレイヤー人数が増加するにつれて増加するが、他のケースでは、減少する。他方、自発的支払メカニズムでは、多くのケースで、期待参加確率はプレイヤー人数が増加するにつれて増加するものの、α = 0.2の場合には、期待参加確率はプレイヤー人数について非単調な関数となる。 また、プレイヤー人数が与えられた下で、自発的支払メカニズムの期待参加人数は、パレート効率なメカニズムの期待参加人数よりも大きくなる傾向がある。この結果は、全員が参加がする場合には自発的支払メカニズムはパレート効率な配分を達成できないが、メカニズムへの自発的な参加が可能な場合には、自発的支払メカニズムの方がパレート効率なメカニズムよりうまく機能する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公共財供給メカニズムについて、各経済主体がメカニズムへ参加するか否かが自発的に選択できる場合において、自発的支払メカニズムとパレート効率なメカニズムのパフォーマンスを比較し、自発的メカニズムの方がパレート効率な任意のメカニズムよりうまく機能する可能性があるという結果をまとめた論文が、査読付き国際学術雑誌へ掲載されることが決まった。
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今後の研究の推進方策 |
メカニズムへ参加するか否かについて、各個人が自由に決定できる場合において、パレート効率なメカニズムと自発的支払メカニズムのパフォーマンスの比較実験を行いたい。また、公共プロジェクトの実施問題において、ピボタル・メカニズム以外の理論的に性能が良いとされるメカニズムと自発的支払メカニズムのパフォーマンスの比較も行いたい。さらに、均衡の安定性を考慮して、メカニズムのパフォーマンスを比較する理論・実験研究も実施する必要があり、今後の研究の課題としたい。
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