研究課題/領域番号 |
19K01558
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
下村 研一 神戸大学, 経済経営研究所, 名誉教授 (90252527)
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研究分担者 |
瀋 俊毅 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (10432460)
大和 毅彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (90246778)
高橋 広雅 広島市立大学, 国際学部, 教授 (80352540)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 交換経済 / 完全競争 / 均衡の一意性 / 均衡の安定性 / 公共財経済 / ゲーム / 標準形ゲーム / 混合戦略 / 提携形ゲーム / 提携構造 / 交渉集合 / 完全競争均衡 / パレート効率性 / 初期条件 / 製品差別 / 寡占 / 独占的競争 / 戦略的均衡 / 動学的安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
経済の初期条件である消費者の選好・資産分布と企業の競争形態が均衡の動学的安定性と効率性に与える影響を考察する.本研究では,まずなるべく単純な理論モデルを用いて一意性・複数性も含めた市場均衡の動学的安定性・不安定性の特徴づけを資産の初期分配と個人の効用関数の両面から行い,その結果を市場実験により検証したい.また,複数の寡占市場・独占的競争市場の理論モデルを用いて,動学的安定性・不安定性と総余剰の大小の特徴づけを,モデルを構成するパラメターから行い,他のすべての条件が不変な状態で,市場の競争形態あるいは企業数が変化したとき,価格,生産量,総余剰がどのように変化するかを理論分析により検証したい.
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研究実績の概要 |
第一の研究は,公共財経済の理論分析と実験分析である.複数の個人がそれぞれ所有する1種類の私的財を提供すればするほど,ある1種類の公共財の供給量が増加する経済のモデルを考察した.このモデルで私的財の初期保有分布の変化が公共財の総生産量に与える影響,いわゆる「中立性の有無」,を同時決定ゲームのナッシュ均衡と逐次決定ゲームのシュタッケルベルク均衡の内点解と端点解により理論的に特徴づけた.さらにこれらの2通りのゲームの被験者を用いた実験を,神戸大学と広島市立大学の研究者により,同時決定,逐次決定のそれぞれについて4回行ない,理論予測と実験データの比較検討を行なった.その結果,同時決定はほぼ理論通りであったが,逐次決定(二段階)では先手が理論値よりも多く私的財を提供する傾向が観察された. 第二の研究は,交換経済の理論分析である.今年度は,昨年度に引き続き,消費者がCES型効用関数を有する3つの財の交換経済のモデルを考察した.このモデルにおける価格ダイナミックスで安定な閉軌道が発生する超過需要関数の性質として,粗代替性と粗補完性が非対称的に現れることがわかった(3つの財X,Y,Zがあり,XはYの粗補完財でYはXの粗代替財,YはZの粗補完財でZはYの粗代替財,ZはXの粗補完財でXはZの粗代替財となる).だが,この性質は価格ダイナミックスで安定な閉軌道が発生する必要条件でも十分条件でもない.なお,十分条件はCES型効用関数のパラメターが満足する純粋に数学的な条件としては本研究で見つかっており,その条件を満たすモデルのシミュレーションによっても閉軌道の発生が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公共財経済の理論研究と実験研究については,神戸大学の研究者で理論予測を,神戸大学と広島市立大学の研究者との共同で自発的供給の実験を行ない,神戸大学の研究者がデータ分析を行なった.実験の方は,関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構の協力により,同機構の実験室および設備の使用許可を頂き3日間に渡って実験が行なわれた.採取したデータを統計分析した結果,理論予測とほぼ一致したセッションとそうでなかったセッションそれぞれの特性がほぼ明らかになったので,少なく見積もっても期待した水準の研究の進展はあったと言える. 交換経済の競争均衡の安定性の理論研究は,東京工業大学と神戸大学の共同研究者と下村とで継続中である.昨年度までは,CES型の効用関数を有する消費者の交換経済の価格ダイナミックスで安定的な閉軌道が発生することがわかったが,今年度はそのようなダイナミックスが起きるときに共通する効用関数のパラメターの条件と超過需要関数の性質の特徴づけを行なうことができた.
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今後の研究の推進方策 |
公共財経済の理論研究と実験研究については,これまで収集してきた両研究の先行研究の資料にこのプロジェクトで蓄積した結果を加えて時系列順かつ体系的に整理する.今年度は総まとめの年度であるので,公共財経済の研究については追加実験は行わない.交換経済の理論研究については,安定な閉軌道が存在するための初期条件が満たされない場合,価格ダイナミックスはどのように変化するかを考察する.また同経済の実験研究については,初期条件の変化が価格ダイナミックスに与える影響は理論予測されており,これまでの実験によりかなり頑強な傾向は観察されたが,追実験の必要性は残されているので,今年度実施する.
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