研究課題/領域番号 |
19K01569
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
近郷 匠 福岡大学, 経済学部, 教授 (70579664)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | ナルプレイヤー / 提携型ゲーム / 公理的特徴付け / シャプレー値 / 均等分配値 / 余剰均等分配値 / 貢献の均衡 / 第1価格オークション / 加重分配値 / 余剰加重分配値 / 経済理論 |
研究開始時の研究の概要 |
複数の参加者の活動がそれぞれ様々な数字のデータで表され、また、その参加者の活動が全体としてなんらかの経済的利益を発生させる状況を考察対象とする。そういった状況で、それぞれの参加者の活動を評価・比較し参加者を適切に順位付ける方法と、参加者全体の活動の結果発生した経済的利益を参加者間で適切に分配する方法を理論的に考察する。理論的な考察としてはゲーム理論を主としたアプローチをとる。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、複数の意思決定主体が協力によって得た経済的余剰をその間で分配する状況を考察対象としている。この時に、それぞれの主体は自身への分配量をより多くすることに関心があるため、主体間で利害が対立するという側面がある。その一方で、分配する余剰の全体量については主体間の協力によって定まるため、利害が一致するという側面もある。両側面を踏まえて、こういった状況における主体間の協力とその評価および配分ルールを、特に公平性という観点に注目しつつ、理論的に分析している。令和4年度に主に取り組んだ研究のうち、すでに一定の形でまとめられたものとして、次の研究を挙げる。提携型ゲーム理論において、余剰を追加的に一切生み出さない主体であるナルプレイヤーに注目する。そのような主体が状況からいなくなったとしても、他の主体の配分には影響しないという性質が既存文献で定式化され、分析されている。この性質はある状況の変化に関して、残された主体を同様に扱うという意味で、一種の公平性とも解釈できる。また、この解釈に基づき、より弱い性質が既存文献で定式化され、一定の分析がされている。このナルプレイヤーに関するより弱い性質と、提携型ゲーム理論において広く知られた基本的な3つの性質である効率性、線形性、対称性によって特徴づけられる配分ルールの全体像を新たに明らかにした。ナルプレイヤーに関するもともとの性質は良く知られたシャプレー値と呼ばれる配分ルールに深く関連する。それを上記の様に公平性の観点を保持しつつ要求として弱めることで、許容される配分ルールがシャプレー値からどのように広がるかを明確にしたという点が、既存研究に照らした上記の結果の重要性である。これは公平な配分ルールの多様性の理解に、ひいては集団・社会において受け入れられる公平性の吟味に役立ち得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記(研究実績の概要)で述べた研究は、まず、2022年7月11日から13日にかけてオンライン開催されたThe European Meeting on Game Theory (SING17), さらに8月8日から10日におけて対面開催された2022 Asian Meeting of the Econometric Society in East and South-East Asia (AMES2022)といった国際学会において口頭報告した。また、他の国際的な研究集会や、2022年10月から2023年4月まで日本に滞在していた、この分野を専門とする在外研究者との議論の機会においても報告した。これらの機会を通じていただいた、関連分野の国内外の研究者からの様々なコメントによって論文としての完成度が深まった。さらに、論文として国際的な査読雑誌に投稿し、編集者及び匿名の査読者の審査を受け、いくつかの査読コメントを踏まえた改訂と再投稿を要求されている。現在は改訂を進め、国際的な査読雑誌での最終的な公刊を目指している段階にある。 また、上記以外にも様々な学会、研究集会に参加することで、関連分野の最新の情報収集に努めた。それらの結果として、令和4年度末段階では完成段階とは言えないものの、今後研究として一定の形にまとまることが予想される研究アイデアもいくつか見つけている。 新型コロナウイルスの社会への影響、ひいては研究活動への影響も以前と比べて落ち着きつつあり、令和4年度には研究集会への対面参加のための海外出張も再開できた。これらの状況を踏まえると、研究は当初の目的に沿って、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本申請研究の最終年度にあたる令和5年度も、当初の研究計画に基づき、公平な評価、配分ルールの考察を続ける。これまでの進捗に照らすと、その中心となるのは提携型ゲーム理論の解を公平性として解釈できる公理に基づいて理論的に特徴付けるという手法である。しかしながら、この状況およびこの手法のみに限定することなく、関連する状況や手法も射程に含めることで、既に知られている状況や手法に新たな視点を与えることも検討する。より具体的に、前者については、ナルプレイヤーに関する弱い性質を令和4年度に考察を深めた性質以外と組み合わせるという方向が考えられる。これは申請者自身の過去の研究とも深くかかわり、特に集団における公平性という視点が色濃く表れる結果が予想されている。後者については、公平性を定式化したある性質と、様々な状況において変化が繰り返された結果である安定的な状態との間の関係を明らかにすることなどが挙げられる。 令和4年度末時点では、令和5年度中の国際学会などでの報告予定は未定である。多くの国際学会がオンライン開催から対面開催に戻りつつある中、航空運賃の高騰や所属機関の業務との両立といった面で、特に海外で開催される国際学会への参加に関する障壁が増している。このことは研究を遂行する上で新たに浮上しつつある課題として挙げられる。その対応策としては、国内で所属機関の授業期間外に開催される国際学会、国内学会、他研究集会に参加するといったことが考えられる。こういった形で成果を対外的に発信する機会を定期的に確保し、着実に研究を完成させてゆく。
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