研究課題/領域番号 |
19K01573
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
伊藤 正哉 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (80610964)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ハイエク / 『価格と生産』 / ハイエクの三角形 / 経済成長理論史 / ハイエクの経済学史的意義 / 『価格と生産』モデルの再構築 / ハイエクとハロッド / 1939年 / ハロッド / 資本の異質性と時間性 / 貯蓄と投資の時間整合性 / ケインズ / 資本理論 / 貨幣理論 / 近代経済成長理論史 / ミード / ケインズ・ハイエク / フェビアン協会 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近代経済成長理論の創始者としてハロッドを位置づけ、彼の理論形成に直接的に寄与した要因として、ケインズ『貨幣論』、ハイエク『価格と生産』、ミードとの往復書簡、フェビアン協会に着目する。本研究は、フェビアン協会から「経済成長」という着想をハロッドが得たこと、彼の成長理論は『貨幣論』の長期動学化であること、超克すべき『価格と生産』が彼の理論形成において補完的要素となったこと、さらにミードとの議論も補完的要素となったことを論証する。『貨幣論』、『価格と生産』、ミードそしてフェビアン協会を近代経済成長理論生誕の契機として位置づけることは、経済学史研究に新しい視点をもたらすだろう。
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研究実績の概要 |
本研究は、ロイ・ハロッドの経済成長理論の形成過程に影響を及ぼした要因の解明を目的とするものである。2022年度においては、その大きな要因の一つとして、ハイエクの『価格と生産』に注目し、その理論構造を明確化することに専念した。ハロッドの理論がハイエクに関係していることは、先行研究においてはほとんど言及されないのであるが、ハイエクがハロッドの理論形成にとって重要な理由として、次のことが挙げられる。すなわち、ハロッドは、景気変動や経済成長のメカニズム解明のためには、静学均衡ではなく動学均衡の概念が必要であるという着想を持ち、この着想に基づいて自らの理論体系を構築した。この動学均衡、言い換えれば定常成長経済の発想のきっかけが、ハイエクの議論に対する彼の違和感であったと考えられる。この解釈の妥当性は、ハロッド自身が、彼の定常成長概念を明示した1933年論文はハイエク批判から生まれたものであると言及していることから、裏付けられるだろう。そこで2022年度は、ハロッドが批判対象としたハイエクの理論を明確化することをねらいとして研究を進めた。結果として、「ハイエクの三角形における移行過程の再検討」と題した論文を公表することができた。 同論文では、ハイエク理論の基礎構造を示すものとして彼の三角形図に着目した。ハイエクの『価格と生産』を研究対象に据える研究は数多くあるが、三角形図自体、そして複数枚の三角形図の関係性に着目し、解明しようとする研究は、ほとんどなく、さらにハイエクの数値例に対して、ハイエクに忠実な解釈を加え、その理論構造を解明しようとする研究は見当たらなかった。そこで、2022年度では、ハロッドの論敵となったハイエクの基礎的理論構造をまず解明する必要があるという問題意識の下で、『価格と生産』の三角形図を研究対象とし、三角形図の基礎となる理論構造を解明することができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ロイ・ハロッドの経済成長理論の形成過程に影響を及ぼした要因の解明を目的とするものである。2022年度においては、その大きな要因の一つとして、ハイエクの『価格と生産』に注目し、その理論構造を明確化することができたと考える。ハロッドの理論形成過程を検討する上での準備段階はおおむね順調に終わったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては、ハイエク『価格と生産』をめぐるハロッドの1933年論文を検討していく。この論文は、ハロッドによれば、彼の最初の経済動学に関係する論文であり、ハイエク批判をきっかけとして執筆されたものである。ハロッドとハイエクの理論的関係は、先行研究では、ほとんど触れられなかったことから、経済学説研究として有意義な研究であると考えられる。 本年度では、さらにミードのハイエク『価格と生産』解釈についても検討していく。ミードの1933年の著作は、ハロッドと同様に、ハイエクに刺激されて執筆されたものである。また同書では、ミードも定常成長経路に言及していた。さらにいえば、ハロッドとミードは、オックスフォード大学の同僚として近しい関係にあり、彼らの往復書簡は公刊されている。そこで、本年度はハイエクを軸として、ハロッドとミードの理論的比較も行っていく。この彼らの関係性もまた、先行研究ではほとんど触れられておらず、経済学説研究として意義があると考えられる。
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