研究課題/領域番号 |
19K01574
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 東京大学 (2021-2022) 東京都立大学 (2019-2020) |
研究代表者 |
高見 典和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60708494)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | クープマンス / 現代史 / 数理経済学 / シカゴ学派経済学 / 経済学の歴史 / スティグラー / シカゴ学派 / 経済学史 / 経済学方法論 |
研究開始時の研究の概要 |
経済学は20世紀半ば以降,数学を本格的に利用するようになったが,そのきっかけは,コウルズ委員会という民間の研究所に集まった少数の経済学者の研究であった。この時期に同委員会の所長を務めたのが,オランダ出身のチャリング・クープマンスであった。本研究は,このクープマンスがどのような学問を望ましいと考えたかを考察することによって,経済学の数理化に新たな視点を投げかけることを目的とする。 さらに加えて,その直後の期間(1950-60年代)に,クープマンスやその周辺の経済学者に注目することで数理経済学がどのように変化していったかを分析する。
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研究実績の概要 |
20世紀半ばの数理経済学の変遷における重要な一形態として,シカゴ学派のミルトン・フリードマンやジョージ・スティグラーの研究が挙げられる。前者の消費関数研究や,後者の産業規制研究には,比較的単純ではあるが有効な数理的手法の活用が見られ,その後の経済学に大きな影響を与えた。さらに,1970年代からのアメリカ社会全体の保守化にともなって,政策への影響力も増した。このようなシカゴ学派の展開を跡付けるため,2022年度では,関連する先行研究を調査し,アメリカ社会の保守化と関連した著作についても調査した。例えば,Jude WanniskiのThe Way the World Worksは,1978年に出版された著作で,経済学の考え方を一般読者に広め,その後の自由主義的な経済政策の普及を後押しした。著作自体は平易な内容なもので決して学術的ではないが,当時の反応を見ればその影響力の大きさが指摘できる。シカゴ学派や,保守的ジャーナリストや政治家とのネットワークを明らかにすることで,20世紀半ばから後半にかけての自由市場活用の高まりが起こった背景を明らかにすることができる。 加えて,Peter ErdiのRepairという著作を翻訳した。この著作は,様々な科学分野の知見を用いて現代の社会的諸課題を論じるもので,20世紀半ば以降の経済学についても多くのページが割かれている。現代の問題に高い関連性を持った議論をする本書を翻訳することによって,本研究にも重要な示唆が得られた。 また,『社会経済史学』誌上で,ロバート・スキデルスキーの『経済学のどこが問題なのか』の書評を執筆した。本書は,ケインズの伝記著者として著名な著者が,経済学の異端派や社会学などの隣接分野の知見を参考にしながら,経済学の視野の狭さを批判する著作であり,このような著作を書評することによって本研究にも重要な示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会状況の理由から海外への資料調査が困難であったが,先行研究の調査や,データベースの活用によって,研究を進めることができた。先行研究では,Johan van OvertveldtのThe Chicago School,Angus BurginのThe Great Persuasion,Kim Phyllis-FeinのInvisible Hands,Jeffrey HartのThe Making of American Conservative Mind,Robert CollinsのMoreなどを読み進めた。また,ProQuest Historical Newspapersのデータベースを用いて,同時代の新聞記事の調査も行った。以上から,経済学者,保守的ジャーナリスト,政治家,実業家らから構成される,議論や財政支援を行うネットワークが形成されていたことが明らかになった。今後はさらに,それぞれのネットワークの構成要素や具体的な関係性について,考察を深めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,さらに先行研究や,ProQuest Historical Newspapersの新聞記事データベースを用いた資料調査を進めると同時に,海外の大学図書館などでの資料調査を行う必要がある。新聞記事に関しては特に,スティグラーが参加した1969年の議会調査に関して,より詳細な調査を行う予定である。他にも,上記のWanniski周辺のネオコンと呼ばれたジャーナリストらの活動についても調査を行う。初期のネオコン論者たちは,2000年代のネオコンとは異なり,国内政策に関して積極的な発言をしており,シカゴ学派などの市場を重視する考えを一般の人々に広める上で大きな貢献をした。さらに,海外の大学図書館に関しては,シカゴ大学やデューク大学や,スタンフォード大学フーバー研究所などに,シカゴ学派と関連のある経済学者の資料が所蔵されている。これら3つの図書館については,過去に調査を行った経験があり,スムーズに調査を開始できる。
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