研究課題/領域番号 |
19K01596
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07030:経済統計関連
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
小川 一夫 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (90160746)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 技術的非効率性 / 確率的フロンティア生産関数 / 真の確率効果モデル / 総要素生産性 / 正規雇用 / 非正規雇用 / 追い貸し / 設備投資 / 研究開発投資 / 生産の非効率性 / stochhastic frotier 生産関数 / 非製造業 / stochastic frontier 生産関数 |
研究開始時の研究の概要 |
非製造業の生産活動の非効率性については、これまで生産性という視点を中心に議論されることが多かった。もちろん生産性を視座に据えて、それが低い原因や上昇させるための方策を議論することは意義があるが、日々の生産活動がどのように営まれているのか、そこには非効率性は存在しないのか、短期的な視点からも分析を加えることは、長期的視点を補完する上でも極めて重要である。 本研究ではstochastic frontier生産関数の推定を通じて短期的視点から非製造業の生産活動における非効率性の源泉とその影響を実証的に分析することを目的としている。
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研究実績の概要 |
本年度は、中小企業庁が実施した『中小企業実態基本調査』のパネルデータ(2009年~2018年)を用いてわが国の中小非製造企業の技術的非効率性について実証的な分析を行った。特に、総要素生産性(TFP)水準が、生産関数フロンティアのシフトのみならず技術的非効率性の変化によって影響を受けるという点に着目して、企業のパネルデータを用いて技術的非効率性を加味したTFP水準の計測を行った。非製造業では、対象産業によって技術的非効率性が大きく異なることを考慮して、業種別に分析を進めた。対象産業は、建設、情報通信、運輸、卸売、小売、不動産、サービスの7業種である。 具体的には、正規雇用、非正規雇用、資本ストック、原材料の4つの生産要素を投入物とし、生産関数フロンティアのシフトを年ダミーで表したstochastic frontier 生産関数を推定することによって個別企業の技術的非効率性を求めた。推定方法は、企業の異質性と技術的非効率性を識別できるtrue random effects modelである。 主要な結果は以下の通りである。まず、業種を問わず技術的非効率を加味しない従来のTFP水準は、技術的非効率性を加味した真のTFP水準を過大推定していることがわかった。次に、TFPを上昇させるためには技術的非効率性を低下させることが有効であるが、そのための方策についても定量的分析を行った。非効率的な企業は設備投資を実施する割合が低いが、設備投資を実施していない企業が設備投資を実施した際に技術的非効率性が大きく改善することがわかった(設備投資のextensive marginの効果)。従って、技術的な非効率性を減少させてTFP水準を引き上げるためには、設備投資の収益性を高め、財務状況を改善することによって企業が設備投資を実行する環境を整えることが重要な課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中小企業庁が実施した『中小企業実態基本調査』のパネルデータ(2009年~2018年)を用いてわが国の中小企業の技術的非効率性(technical inefficiency)を加味した総要素生産性について実証的な分析を行っているが、分析作業自体は概ね順調といえる。技術的非効率性を計測するためのデータベースが完成し、そのデータベースを用いて昨年度は非製造業を対象にしてstochastic frontier production functionの計測に着手し、技術的非効率性が総要素生産性に与える影響について定量的な分析を行い、企業属性と技術的非効率性の関係について実証的検討を加えてきた。このようにモデルの構築と推定については概ね順調に推移している。 研究成果については未公開論文として纏めているものの、新型コロナ感染症蔓延のために、その研究成果を国内外で発表する機会がなく、他の研究者からのコメントに基づいたフィードバックが得られず論文を改善するというステップまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は『中小企業実態基本調査』のパネルデータ(2009年~2018年)から作成されたデータベースを用いて、非製造中小企業の技術的非効率性と総要素生産性について実証分析を行い、その研究成果を未公開論文として纏めた。次年度は、この論文を国内外で報告した上で、論文の改訂作業を行い国際的な査読誌に投稿する予定である。また、すでに製造業を対象にした技術的非効率性に関する研究が2023年1月の Social Sciences & Humanities Openに掲載されたが、製造業と非製造業の技術的非効率性を比較した上で、なぜ非製造業の総要素生産性が低いのかという問題についても技術的非効率性という視点から分析を加えていきたい。最後に、これまでに得た技術的非効率性の知見に基づいて、技術的効率性を改善して総要素生産性を高めていくために必要な施策についても政策的含意を導き出す予定である。
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